- 2026.10.18
高齢化社会で増える運動器疾患とは?代表的な疾患や予防法を解説
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高齢化が進むなかで自立した生活を続けるには、骨や筋肉、関節などの運動器の健康を維持することが重要です。運動器疾患について理解し、適度な運動や早期発見・治療につなげることで、移動機能の維持を目指せます。
しかし、運動器の健康が気になっても、
「高齢になるとなぜ運動器疾患が増える?」
「運動器疾患を予防するには具体的に何をすればよい?」
と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
神戸大学医学部整形外科では、株式会社マリンコアと共同で、足底インソールが足アーチ構造や歩行時の下肢アライメントに与える影響について研究を進めています。
そこで本記事では、こうした運動器に関する研究の知見も踏まえながら、高齢化に伴って運動器疾患が増える理由や高齢者に多い代表的な疾患を解説します。
日常生活で取り入れられる対策も紹介するので、年齢を重ねても自立した生活を続けるための参考にしてください。目次
- 高齢化社会で課題となる「運動器疾患」とは
- 高齢化に伴って運動器疾患が増える理由
- 高齢者に多くみられる代表的な運動器疾患
- 運動器疾患とロコモティブシンドロームの関係
- 高齢化社会で運動器の健康を守るためにできること
- 高齢化社会における運動器疾患に関するよくある質問
- 高齢化社会では運動器疾患への理解と対策が重要
高齢化社会で課題となる「運動器疾患」とは
運動器疾患は、立つ・歩くなどの基本的な動作に影響し、高齢者の自立した生活を妨げる要因となる疾患です。
「運動器」とは、骨や筋肉、関節、神経など、身体を支えたり動かしたりする組織や器官の総称です。これらに生じる疾患や外傷を運動器疾患と呼びます。
運動器に問題が生じると、痛みや関節の動かしにくさなどによって、歩行や立ち座りなどの日常生活に必要な動作が難しくなる場合があります。特に高齢者の場合は加齢に伴う筋力の低下なども重なるため、移動する能力が低下し、外出や身の回りの動作に支障をきたす可能性があります。
厚生労働省の「2025(令和7)年 国民生活基礎調査」によると、要支援者の介護が必要となった主な原因は「高齢による衰弱」が17.7%で最も多く、次いで「関節疾患」が14.8%、「骨折・転倒」が14.7%でした。
このように、運動器に関わる疾患やけがは、高齢者の生活機能や自立に深く関係しています。高齢化が進む社会では、運動器疾患への理解を深め、身体機能を維持するための対策につなげることが重要です。出典: 厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査」
高齢化に伴って運動器疾患が増える理由

高齢になると、骨や筋肉、関節などの運動器に加齢による変化が生じるため、運動器疾患を発症するリスクが高まります。
年齢を重ねるにつれて筋力や骨密度が低下するほか、関節を構成する軟骨や背骨の間にある椎間板などにも変化が生じます。また、関節の動かしやすさやバランス能力が低下すると、歩行や立ち座りなどの日常的な動作にも影響を及ぼします。
さらに、膝や腰などに痛みや違和感があると外出や運動を控えるようになり、身体を動かす機会が減少する場合があるため注意が必要です。
このように、高齢者では加齢による運動器の変化に加えて、身体活動量の減少などが重なることで、運動器の機能低下が進む可能性があります。膝や腰の痛み、歩きにくさなどの変化を年齢だけの問題と考えず、運動器の異変に早めに気づくことが大切です。高齢者に多くみられる代表的な運動器疾患
高齢者にみられる運動器疾患には、骨や関節、脊椎などに生じるさまざまな疾患があります。
次は、高齢者に多くみられる代表的な運動器疾患を紹介します。骨粗しょう症
骨粗しょう症は、骨の量が減少して骨が弱くなり、転倒などのわずかな衝撃でも骨折しやすくなる疾患です。
骨では、新しい骨をつくる「骨形成」と古い骨を壊す「骨吸収」が繰り返されています。このバランスが崩れると骨の強度が低下し、骨粗しょう症につながります。
骨粗しょう症は加齢との関係が深く、特に閉経後の女性に多くみられます。初期には自覚症状がない場合もありますが、進行すると背骨や手首、太もものつけ根などを骨折しやすくなります。
高齢者では、骨折によって歩行や立ち座りが難しくなると、身体を動かす機会が減り、筋力の低下につながる可能性があります。変形性関節症
変形性関節症は、関節の軟骨がすり減るなどの変化によって痛みや腫れ、動かしにくさなどが生じる疾患です。加齢のほか、関節への繰り返しの負担や外傷などが発症や進行に関係し、体重がかかる膝関節や股関節で多くみられます。
膝に生じると、歩行や階段の昇り降り、立ち座りなどで痛みを感じやすくなります。股関節では、立ったり歩いたりする際の痛みに加えて、脚を動かせる範囲が狭くなる場合があります。
高齢者の場合、関節の痛みから外出や運動を控えるようになると身体活動量が減少し、下肢の筋力低下につながる可能性があります。
変形性関節症では痛みへの治療だけでなく、運動療法などを通じて関節の機能を維持することも重要です。膝への負担を軽減する方法のひとつとして、足元から歩行を支えるインソールが用いられる場合もあります。変形性脊椎症
変形性脊椎症は、加齢などによって背骨や椎間板、椎間関節などに変化が生じる疾患です。特に首や腰の背骨にみられやすく、椎間板が変性したり、骨の一部がとげのように突出する「骨棘(こつきょく)」が形成されたりします。
変形があっても症状が現れない場合があり、画像検査で変化が確認されても、必ずしも治療が必要になるわけではありません。一方、変形が進むと首や腰の痛み、動かしにくさなどが生じる場合があります。
さらに、神経が通る脊柱管が狭くなって神経が圧迫されると、手足の痛みやしびれ、筋力の低下などにつながることがあります。症状が進むと歩行にも支障をきたす可能性があるため、痛みやしびれなどの変化に早めに気づくことが大切です。運動器疾患とロコモティブシンドロームの関係
運動器疾患によって骨や関節、筋肉などの機能が低下すると、立つ・歩くといった移動するための能力にも影響が及ぶ場合があります。こうした運動器の障害によって移動機能が低下した状態と深く関係しているのが「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」です。
ここでは、ロコモの特徴や運動器疾患との関係、ロコモに気づくためのチェック方法を解説します。ロコモティブシンドロームとは
ロコモティブシンドローム(ロコモ)とは、運動器の障害によって、立つ・歩くといった移動するための身体能力が低下した状態を指します。運動器の疾患だけでなく、加齢に伴う筋力やバランス能力の低下なども関係します。
ロコモになると歩く速度が遅くなったり、階段の昇り降りが難しくなったりするなど、日常生活のさまざまな場面に影響が現れます。さらに移動機能の低下が進むと、自分の力だけで生活することが難しくなり、将来的に介護が必要になるリスクも高まります。
また、日常生活に大きな支障を感じていなくても、すでに移動機能が低下している場合があります。ロコモの進行を防ぐには、自分の移動機能の状態を早い段階で把握し、運動器の機能を維持していくことが大切です。ロコモに気づくためのチェック方法
ロコモは徐々に進行するため、自分では移動機能の低下に気づきにくい場合があります。日常生活を振り返り、以下のような変化がないか確認してみましょう。

当てはまる項目がある場合は、筋力やバランス能力などの移動機能が低下している可能性があります。気になる変化が続く場合や、痛みやしびれなどの症状がある場合は、医療機関への相談を検討しましょう。
高齢化社会で運動器の健康を守るためにできること
年齢を重ねても自立した生活を続けるためには、骨や筋肉、関節などの運動器の機能をできるだけ維持することが大切です。
ここでは、高齢化社会で運動器の健康を守るために意識したいポイントを解説します。適度な運動で筋力やバランス能力を維持する
運動器の健康を維持するには、年齢や体力に合わせて身体を動かす習慣をつくることが大切です。身体を動かす機会が減ると、筋力やバランス能力が低下し、立ち上がる、歩くなどの日常生活に必要な動作にも影響を及ぼす可能性があります。
運動習慣がない場合は、ウォーキングなど取り入れやすい運動から始めるとよいでしょう。運動を続ける際は、無理に回数や時間を増やさず、自分の体力に合った強度で取り組むことも重要です。
また、運動とあわせて食生活にも目を向けましょう。筋肉の材料となるたんぱく質や、骨の健康に関わるカルシウム、ビタミンDなどを含む食品をバランスよく摂ることが大切です。
運動と食事の両面から身体の状態を整え、筋力やバランス能力を維持する習慣を続けることが、運動器の健康維持につながります。運動器の異変に早めに気づき適切な治療を受ける
運動器の健康を守るには、痛みや動かしにくさなどの変化を見逃さず、必要に応じて早めに医療機関を受診することが大切です。運動器疾患のなかには、初期には自覚症状がほとんどなく、症状が現れてから疾患に気づく場合もあります。
運動器疾患は種類や進行度によって治療方法が異なるため、自己判断で様子を見続けず、整形外科などで適切な診断を受けましょう。運動器の異変を早期に発見して適切な治療につなげることは、症状の進行や骨折などを防ぎ、移動機能を維持することにもつながります。高齢化社会における運動器疾患に関するよくある質問
ここでは、高齢化社会における運動器疾患や運動器の機能低下に関するよくある質問をまとめました。運動器の健康を維持するための参考にしてください。
運動器不安定症とは何ですか?
運動器不安定症とは、加齢などによって運動器の機能が低下し、歩行や移動が不安定になることで、日常生活に支障が生じている状態を指します。転倒するリスクが高まったり、外出が難しくなったりする場合があり、診断には一定の基準が設けられています。
骨や関節、脊椎などの運動器疾患は、痛みや筋力低下、関節の動かしにくさなどを引き起こし、歩行や移動能力に影響を及ぼす場合があります。こうした運動器の問題が重なることで、移動機能が低下する可能性があります。運動器疾患の予防にはどのような運動がおすすめですか?
運動器疾患の予防には、筋力やバランス能力の維持につながる運動を継続して取り入れることが大切です。取り入れやすい運動として、片脚立ちやスクワットなどがあります。
片脚立ちは、転倒しないよう机や椅子などにつかまれる場所で行い、左右それぞれの脚を上げて姿勢を保ちます。スクワットは、足を肩幅程度に開き、お尻を後ろへ引くように膝をゆっくり曲げてから元の姿勢へ戻します。
運動は無理なく継続できる強度で行い、自分の体力や身体の状態に合わせて取り組みましょう。高齢化社会では運動器疾患への理解と対策が重要

高齢化が進む社会では、年齢を重ねても自立した生活を続けるために、運動器の健康を維持することが重要です。骨や筋肉、関節などに問題が生じると、立つ・歩くといった移動機能が低下し、日常生活にも影響を及ぼす可能性があります。
運動器疾患やロコモティブシンドロームについて正しく理解し、適度な運動やバランスのよい食事を日常生活に取り入れましょう。また、痛みやしびれ、歩きにくさなどの異変を感じた場合は、早めに医療機関へ相談することも大切です。
日頃から運動器の状態に目を向け、予防と早期発見を意識することが、健康寿命を延ばし、自分らしい生活を続けることにつながります。
