研究概要
教室の研究領域の全体像と、共同研究のご相談について。
声を測り、
治療の成果を確かめる。
声は数値で捉えにくい機能です。専門外来で積み重ねた検査と治療の記録をもとに、評価の方法と治療の成果を検証しています。
声のかすれや出しにくさは、ご本人の困りごとと検査の数値が一致しないことがあります。喉頭内視鏡やストロボスコピーによる声帯振動の観察、録音した声の音響分析、発声時の呼気流の測定などを組み合わせ、声の状態をどう捉えるのが適切かを検討しています。専門外来で蓄積した検査データは、評価方法そのものを見直すための材料にもなります。
声帯麻痺に対する甲状軟骨形成術I型や披裂軟骨内転術、声帯脂肪注入術、痙攣性発声障害に対するチタンブリッジを用いた甲状軟骨形成術II型など、声を改善する手術を行っています。手術の前後で声がどう変わったかを検査値とご本人の評価の両面から記録し、どのような方にどの術式が適しているかの検討につなげています。甲状腺癌の手術で反回神経を切除せざるを得ない場合の神経再建など、声の機能を守る手術の成績も検証しています。
喉頭を摘出した患者さんは、気管孔から呼吸するため、吸い込む空気の加温・加湿を担う装具(人工鼻)を日常的に使います。装具の性能を実際の患者さんで測定し、より使いやすいものを選ぶための検討を行っています。気管食道シャントによる代用音声の獲得や永久気管孔の管理では、言語聴覚士が早期から関わることの意義を検証しています。一方で、喉頭を残せる患者さんを増やすことも大切な課題であり、喉頭温存手術の適応を見きわめる研究を続けています。
手術だけでなく、声の使い方を見直す音声治療も重要な治療手段です。医師と言語聴覚士が協力して評価と訓練にあたり、その経過を記録しています。音声障害や嚥下障害の診療に携わりながら臨床研究に取り組み、医学博士を取得した言語聴覚士も教室から生まれています。高齢者の音声障害に対する Vocal Function Exercises の有効性と、その効果を長く保つうえでの課題について、継続して検討しています。
第四代・天津睦郎教授が開発した喉頭摘出後の音声再建法「天津法」は、がんの治療と機能の再建を結びつける教室の伝統を象徴しています。第五代・丹生健一教授のもとでは、早期喉頭がんの低侵襲手術や反回神経麻痺に対する音声改善手術、音声訓練と機能評価が発展しました。日本喉頭科学会や日本音声言語医学会の学術集会も担当しています。この流れの先に、現在の喉頭・音声研究があります。
教室の歩みは教室の沿革をご覧ください。