神戸大学大学院医学研究科 外科系講座 耳鼻咽喉科頭頸部外科学分野 神戸大学大学院医学研究科
外科系講座 耳鼻咽喉科頭頸部外科学分野

嚥下外来

1.嚥下外来について

 嚥下外来では、原因を問わず嚥下障害(食事の飲み込みのトラブル)に関する診断・治療を扱っています。社会の高齢化に伴い、嚥下に問題をかかえる患者様は増加の一途をたどっています。嚥下障害の診療には医師はもちろんですが、嚥下評価・リハビリテーションを担当する言語聴覚士や摂食嚥下障害看護の認定を受けた専門看護師、口腔機能の評価やケアに関わる歯科医師や歯科衛生士など、多くのスタッフの連携が不可欠です。当院でもより多くの患者様に必要な治療を提供するための体制作りに努めており、下記のスタッフを中心に常時15名程度のチームで診療しています。また重度の嚥下障害で、一定のリハビリテーションを行っても期待する回復が得られなかった患者様に手術が適応となる場合があります。嚥下障害の手術治療が対応可能な施設は限られるのが現状ですので、当院では手術のご相談も積極的にお受けしております。

2.担当医師

  • 特命准教授 四宮 弘隆

    耳鼻咽喉科専門医 / 頭頸部がん専門医 / がん治療認定医

  • 助教 古川 竜也

    耳鼻咽喉科専門医 / 嚥下相談医 / 気管食道科専門医 / 頭頸部がん専門医

  • 助教 入谷 啓介

    耳鼻咽喉科専門医

  • 言語聴覚士 髙橋 美貴

  • 摂食嚥下障害看護認定看護師 上岡 美和


3.受診と患者様のご紹介について

 嚥下にお困りで当院の受診を希望される方は、かかりつけの先生から「診療情報提供書(紹介状)」と「地域予約」をお願いいたします。
 嚥下外来は毎週水曜日の14時30分より診療を行っております。嚥下障害の検査には通常の耳鼻咽喉科診療とは別に、検査用食品やX線透視室の確保など特別な準備が必要となります。またリハビリテーションの指導などは言語聴覚士や認定看護師が行います。これらの準備ができない他の曜日、時間帯に受診されても必要な診療が行えない場合があります。患者様のご紹介は、まずは水曜日の嚥下外来宛に地域医療連携室を通じてご紹介いただけますと、検査も含めてスムーズに診療が可能です。
 スタッフがつきそって嚥下リハビリテーションを実施するのは原則当院の入院患者様のみとなっており、外来通院の患者様は定期的な嚥下評価を行い、必要と判断した訓練方法を指導させていただき、在宅でのセルフトレーニングを実施していただいております。マンパワーの制約のため、通院リハビリテーションには対応できかねますことをご理解いただきますようお願いいたします。

4.診療の特徴

嚥下障害の評価・検査

 言語聴覚士、認定看護師とのチーム医療で内視鏡下嚥下機能検査、嚥下造影検査を中心に評価を行い、食事調整やリハビリテーションを指導しています。
 新しい検査として高解像マノメトリーを導入して嚥下圧測定を実施しています。嚥下に関わる圧力を定量的に評価することが可能となりました。

嚥下障害のリハビリテーション

 嚥下障害は様々な原因により起こる症状です。リハビリテーションはやみくもにおこなっても効果は上がりにくいため、上記のような評価・検査の上で必要なメニューに取り組んでいただくことが重要です。嚥下訓練の中心は口やのどの筋力強化が中心となりますが、リハビリテーションという点では食事内容の調整・指導や口腔ケアなど複合的なアプローチが望ましいと考えています。

嚥下障害の手術治療

 重症の方には病状に合わせて嚥下機能改善手術(喉頭挙上術、輪状咽頭筋切除術など)、誤嚥防止術をご提案しています。誤嚥防止術には様々な方法がありますが、当科では2008年に福島県大原綜合病院鹿野真人先生が発表された声門閉鎖術を主に行っています。

5.診療の実績


御覧のように年度により多少のばらつきはありますが、徐々に受診患者数は増加傾向にあります。

6.研究

将来より良い医療を患者の皆さんに提供できるよう、当科では次のような研究に取り組んでいます。
既に当科で治療あるいは検査を受けられた方の中で、ご自身の既存情報(画像データ、検査データなど)が使われることを希望されない場合は当科まで(耳鼻咽喉・頭頸部外科医局:078-382-6024)ご連絡ください。

臨床研究
  • 嚥下機能改善手術や誤嚥防止手術の効果や安全性の確認・向上に関する研究

  • 精密検査を要する嚥下障害患者を発見するための嚥下スクリーニング法(当院では「嚥下トリアージ」と呼んでいます)の開発

  • 高解像マノメトリーを利用して頭頸部癌患者様における嚥下圧を測定して、病態との関連を検討する研究