神戸大学大学院医学研究科 外科系講座 耳鼻咽喉科頭頸部外科学分野 神戸大学大学院医学研究科
外科系講座 耳鼻咽喉科頭頸部外科学分野

耳・難聴外来

1.耳外来・難聴外来について

 耳外来では、耳に関する疾患を幅広く扱っています。真珠腫性中耳炎、慢性中耳炎に対する鼓室形成術、耳硬化症に対するアブミ骨手術の他、高度難聴の成人に対する人工内耳手術や、骨導インプラントの手術など先進的な治療も行っています。また難聴遺伝子検査や人工内耳リハビリを含めて質の高い医療を提供しています。疾患の状態に応じて、めまい外来、顔面神経外来、腫瘍外来と連携して診療を行っています。

nishimura

2.担当医師

  • 特命教授 柿木 章伸

    耳鼻咽喉科専門医 / 耳科手術指導医 / めまい平衡医学会専門会員 / めまい相談医 / 補聴器相談医

  • 准教授 藤田 岳

    耳鼻咽喉科専門医 / 耳科手術指導医 / 臨床遺伝専門医 / めまい相談医 / 補聴器相談医

  • 助教 上原 奈津美

    耳鼻咽喉科専門医 / 臨床遺伝専門医 / 補聴器相談医

  • 言語聴覚士 岩城 忍


3.受診と患者様のご紹介について

 耳の病気で当院の受診を希望される方は、かかりつけの先生から「診療情報提供書(紹介状)」と「地域予約」をお願いいたします。
 耳に関連した患者様のご紹介は、まずは月曜日の初診、あるいは火曜日の耳外来宛に地域医療連携室を通じてご紹介いただけますと、検査も含めてスムーズに診療が可能です。また、小児の難聴や難聴の遺伝子検査をご希望の場合には、木曜日の難聴外来宛にご紹介いただいても対応いたします。

<初 診> <耳外来> <難聴外来>
柿木
藤田
柿木
藤田
上原
上原

4.診療の特徴

耳の手術について

 外耳や中耳などに病気(慢性中耳炎、真珠腫性中耳炎、耳硬化症など)がある場合、手術により治療が可能です。耳の手術は通常、顕微鏡によって行いますが、症例に応じて低侵襲な内視鏡耳科手術TEES (transcanal endoscopic ear surgery)や最新のデジタルビデオ顕微鏡 オリンパス社製ORBEYEを用いた手術も行っています。また顔面神経モニター装置(NIM)を用いて安全性の確保に努めています。神戸大学では大倉山の大学病院本院と、ポートアイランドにある国際がん医療・研究センター(ICCRC)で、耳の手術を行っています。

難聴について

 超高齢化社会を迎え、難聴の方は今後ますます増えていくものと予想されます。難聴は認知症のリスクファクターである(Lancet誌 2017年)とされ、適切な介入により、患者さんやご家族のQOL(生活の質)の向上が期待できます。まずは、かかりつけの耳鼻咽喉科やお近く補聴器相談医と相談し、聴力の適切な評価と補聴器の調整(フィッティング)を試してみてください。
 補聴器を適切に調整しても会話が困難である場合には、後に述べる人工内耳が有効である場合があります。また耳の状態で補聴器が装用できない場合には、人工中耳や骨導インプラントといった治療が有効な場合があります。そういった最新の人工聴覚器のご相談も、当外来で担当しています。

人工内耳手術

 補聴器でも会話が困難な方には、「人工内耳」という治療方法があります。これは手術により内耳に電極を挿入し、マイクから入った音を電気刺激に変換し、直接蝸牛神経を刺激して、音を聞き取る方法です。
80歳を超えるご高齢の方でも、普通の大きさの会話音声が聞き取れるようになることも多く、非常に効果の高い人工感覚器です。両耳への装用も保険適応となっています。当科では、2017年より成人症例に対して手術とリハビリテーションを開始し、多くの方に「聞こえ」を取り戻していただいております。

難聴の遺伝子検査について

 2012年より難聴の遺伝子検査が保険適応となっています。血液検査により、難聴の原因が分かる場合があります。また遺伝子の変異により、今後の難聴の進行予測や、一部の抗菌薬の使用可否などが判断できる場合があります。遺伝子検査には倫理的な問題がしばしば伴いますが、当院では臨床遺伝専門医資格を持つ上原奈津美助教・藤田岳准教授を中心に、当院の臨床遺伝カウンセラーと連携し、遺伝カウンセリングと診察を行っています。

5.手術・診療の実績

当院の耳科手術件数は、兵庫県下で指折りの症例数を取り扱っています。

2021年度 手術症例数

手術名 症例数
鼓室形成術 77
乳突削開術 45
鼓膜形成術 7
人工内耳手術 13
顔面神経減荷術 9
アブミ骨手術 9

6.研究

将来より良い医療を患者の皆さんに提供できるよう、当科では次のような研究に取り組んでいます。
既に当科で治療あるいは検査を受けられた方の中で、ご自身の既存情報(画像データ、検査データなど)が使われることを希望されない場合は当科まで(耳鼻咽喉・頭頸部外科医局:078-382-6024)ご連絡ください。

臨床研究
  • 耳科内視鏡手術における手術支援機器の開発研究

  • 聴神経腫瘍の発生・増殖メカニズムの解明と治療薬探索研究

  • 耳科手術のQOL調査(共同研究:慶応大学他)

  • 先天性および若年性の視覚聴覚二重障害に対する一体的診療体制に関する研究(共同研究:東京医療センター他)

  • 先天性難聴の遺伝子解析と臨床応用に関する研究(共同研究:信州大学他)

基礎研究
  • 内リンパ水腫モデル動物を用いた、内耳 in vivo 観察の研究

  • アクアポリン受容体からみた内リンパ水腫メカニズムの解明研究

  • 好酸球性中耳炎による難聴メカニズムの解明研究

  • 色素性乾皮症による難聴の研究