神戸大学大学院医学研究科 外科系講座 耳鼻咽喉科頭頸部外科学分野 神戸大学大学院医学研究科
外科系講座 耳鼻咽喉科頭頸部外科学分野

鼻・嗅覚外来

1.鼻外来・嗅覚外来について

 鼻・嗅覚外来では、鼻副鼻腔に関する炎症性疾患、腫瘍性疾患、アレルギー性疾患、嗅覚障害まで幅広く扱っています。手術では慢性副鼻腔炎や好酸球性副鼻腔炎に対する内視鏡下鼻副鼻腔手術、鼻副鼻腔良性腫瘍に対する内視鏡手術を中心に行っています。鼻副鼻腔悪性腫瘍については、頭頸部腫瘍の専門チームと連携し、機能温存と根治切除の両立を目指した治療を行っています。

2.担当医師

  • 病院講師 蓼原 瞬

    耳鼻咽喉科専門医

  • 助教 由井 光子

    耳鼻咽喉科専門医

  • 黒木 俊介 (嗅覚外来)

    耳鼻咽喉科専門医


3.受診と患者様のご紹介について

 当院は紹介状と患者支援センターからの外来予約が必要です。鼻副鼻腔疾患、嗅覚障害、アレルギー性疾患で受診を希望の方は原則、木曜日午前にお越しください。鼻副鼻腔悪性腫瘍や頭蓋底腫瘍の場合には火曜日午前にお越し下さい。急ぐ場合やご予定が合わない方は患者支援センターにご相談下さい。


4.診療の特徴

 内視鏡下鼻副鼻腔手術は大学病院本院とポートアイランドにある国際がん医療・研究センター(ICCRC)の両方で行っています。ICCRCでは短期滞在手術(2-3泊)にも対応していますので、入院期間についてご希望のある方はご相談ください。必要に応じて、両施設とも術中ナビゲーションを使用しています。

非好酸球性副鼻腔炎(慢性副鼻腔炎、歯性上顎洞炎、真菌性副鼻腔炎)

 鼻ポリープ(鼻茸)を切除し、内視鏡下に副鼻腔を開放します。歯が原因と考えられる場合には、口腔外科と連携して治療を行っています。真菌の場合には副鼻腔洗浄システム(ハイドロデブリッダー®、ハイドロクレンズ®)を使用しています。

好酸球性副鼻腔炎(2015年7月1日より指定難病306)

 気管支喘息を合併する方が80%、そのうち半数は鎮痛剤で喘息発作が誘発されるアスピリン喘息の方です。当院では呼吸器内科と連携し、喘息に対する治療と手術治療を一緒に行っています。難病申請から2020年に鼻ポリープを有する副鼻腔炎に適応が追加された抗IL-4/IL-13抗体(デュピルマブ)の治療も行っています。

鼻副鼻腔乳頭腫

 鼻副鼻腔良性腫瘍の中で最も多い腫瘍で、悪性転化(がん化する)が約10%程度あります。進行例や悪性合併の場合には歯茎や顔面の皮膚切開が必要になることもありますが、当院では良性の場合には殆ど鼻内内視鏡下での治療を行っています。また当院ではコブレーター®(熱損傷が少ない高周波バイポーラーシステム)を用いて腫瘍切除を行っています。乳頭腫術後の再発率は11.5%(104例, 2012-19年)です。

鼻涙管閉塞・涙嚢炎

 涙嚢炎、鼻涙管閉塞に対して、鼻内から涙嚢を開放する涙嚢鼻腔吻合術を行っています。眼科と連携し、鼻涙管閉塞の狭窄部位の診断、涙道チューブの留置を行っています。

鼻中隔・下鼻甲介手術

 鼻中隔彎曲は正常でも彎曲がありますが、彎曲の程度が強く、鼻づまりを生じる場合に手術を行っています。通年性のアレルギー性鼻炎があり、下鼻甲介の腫脹による鼻づまりがある場合には、下鼻甲介手術(粘膜下下鼻甲介骨切除+後鼻神経末梢枝の切断)を行っています。手術により、鼻づまり、くしゃみ、鼻水の症状が軽くなります。また外傷後などの場合、形成外科と連携して外鼻形成と下鼻甲介手術を同時に行うなど、柔軟に対応しています。

嗅覚障害

 嗅覚外来では、保険収載されているT&Tオルファクトメーター・アリナミンテストの他、オープンエッセンスによる嗅覚の多面的な評価を試みております。新型コロナウイルス感染症の流行に伴い同疾患に伴う嗅覚障害がクローズアップされておりますが、当外来では2021年2月現在、金沢医科大学を中心とした嗅覚障害についての共同研究の実施に向けて準備を進めている最中です。当科では病院の性質上、新型コロナウイルス感染症急性期の嗅覚障害の受け入れは行っておりませんが、新型コロナウイルス感染症の病態解明の一助となれるよう尽力しております。

オスラー病 (遺伝性出血性毛細血管拡張症)

 全身の血管状態に異常をきたす遺伝性疾患であり、本邦では難病に指定されています。繰り返す鼻出血が特徴ですが、脳や肺などにも血管奇形を起こすことがあり、疑われた場合は精査が必要です。遺伝性疾患ですので、親や子供にも繰り返す鼻出血がある場合が多いです。現時点では根本的には治癒させることができない疾患ですが、内服処方や処置方法の指導を行いながら診察を行っています。

5.手術・診療の実績


手術名 2017年度(件) 2018年度(件) 2019年度(件) 2020年度(件)
鼻中隔矯正術 21 22 26 46
下鼻甲介手術 21 16 32 21
内視鏡下鼻副鼻腔手術 86 113 126 80
鼻外切開による副鼻腔手術 2 6 1 1
鼻副鼻腔良性腫瘍手術 22 20 11 15
鼻副鼻腔悪性腫瘍手術 22 19 17 21
涙嚢・鼻涙管手術 2 7 5 5
その他 7 1 0 4
頭蓋底手術 9 3 5 2
合計 192 207 223 195





6.研究

既に当科で治療あるいは検査を受けられた方の中で、ご自身の既存情報(画像データ、検査データなど)が使われることを希望されない場合は当科まで(耳鼻咽喉・頭頸部外科医局:078-382-6024)ご連絡ください。