腫瘍外来
1.腫瘍外来について
腫瘍外来は、頭頸部腫瘍(特に悪性腫瘍)の診療を行う外来です。当院は全国の病院の中でもかなり多くの頭頸部腫瘍診療を行っている施設です。咽頭癌、喉頭癌、口腔癌(舌癌、歯肉癌など)、鼻・副鼻腔癌(上顎癌など)のみならず、頭蓋底腫瘍、副咽頭間隙腫瘍、頸動脈小体腫瘍といった、全国で診療できる施設が限られるような疾患も取り扱っております。放射線腫瘍科、腫瘍血液内科、歯科口腔外科などの関連する科と協力しながら、手術や放射線治療、薬物療法、最近では光免疫療法など、あらゆる治療選択肢の中から、患者さんごとに最適な治療を提案するようにしております。
2.担当医師
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教授 丹生 健一
日本耳鼻咽喉科学会専門医 / 頭頸部がん専門医・指導医 / 日本がん治療認定医 /
日本気管食道科学会専門医 / 日本耳鼻咽喉科学会副理事長 / 日本頭頸部癌学会理事長 /
日本頭蓋底外科学会副理事長 -
特命准教授 四宮 弘隆
日本耳鼻咽喉科学会専門医 / 頭頸部がん専門医 / 日本がん治療認定医
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講師 古川 竜也
日本耳鼻咽喉科学会専門医 / 頭頸部がん専門医 / 日本気管食道科学会専門医 /
日本嚥下医学会嚥下相談医 -
助教 由井 光子
日本耳鼻咽喉科学会専門医 / 頭頸部がん専門医
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助教 藤原 肇
日本耳鼻咽喉科学会専門医
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助教 堀地 祐人
日本耳鼻咽喉科学会専門医 / 頭頸部がん専門医
3.受診と患者様のご紹介について
頭頸部腫瘍で当科への受診を希望される際は、紹介状と患者支援センターからの外来予約が必要です。かかりつけの先生やお近くの耳鼻咽喉科の先生に、「紹介状(診療情報提供書)」を作成してもらい、当院の患者支援センター(地域医療連携室)を通して当科の受診予約を取ってもらってください。木曜日は初診を行っておりませんので、それ以外の曜日での御予約をお願いいたします。腫瘍の内容や状況によっては、その後も検査のために何度か受診いただかなければいけないことがありますので御了承ください。
また、他院ですでに治療方針を提示されている患者様についてのセカンドオピニオンを希望される際は、水曜日にポートアイランドにある当院分院の国際がん医療研究センターでお受けしております。当院の患者支援センターへお問い合わせください。
その他、腫瘍の種類によっては下表の曜日に御予約をいただければ、治療方針の決定が迅速に行えますので、宜しくお願いいたします。
火曜日 | 水曜日 | 木曜日 |
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鼻副鼻腔癌 頭蓋底腫瘍 副咽頭間隙腫瘍 頸動脈小体腫瘍 |
唾液腺腫瘍 甲状腺腫瘍 早期の喉頭癌 早期(表在型)の咽頭癌 |
腫瘍初診・再診外来 |
4.診療の特徴
頭頸部腫瘍の治療は、まず基本的には手術・放射線治療・薬物療法の3つの選択肢があります。しかし、すべての患者様に必ずしもその選択肢全部を提示できるわけではなく、その人の腫瘍の状況によって、希望されている治療法をおすすめできない場合があります。根治性を高めるとともに、機能温存を心がけ、患者様ごとにしっかりと話し合いをすすめ、治療方針を決定いたします。
また、上記のような各治療を行ったあと再発・転移を来たした患者様に対し、当院では近年話題となっている光免疫療法も開始いたしました。腫瘍の部位や状態にもよりますので、すべての患者様に行うことができるわけではありませんが、可能であればできる限りご提案させていただきます。
喉頭癌
早期の喉頭癌(ステージI)は、手術による経口的切除術や放射線治療で治癒が見込めます。中期の喉頭癌(ステージIIとIII)は、放射線を1日2回当てる治療や抗癌剤と放射線を組み合わせた治療、喉頭を温存して癌を切除する喉頭部分切除術などが適応となります。進行した喉頭癌(ステージIV)では両側の声帯も含めて喉頭を摘出する喉頭全摘術が必要となります。放射線治療後に再発した場合には、可能であれば喉頭部分切除術などを行いますが、困難な場場合は喉頭全摘出が必要となります。喉頭全摘出を行った場合は声を失うことになりますが、当科で開発された天津式気管食道瘻形成法やボイス・プロテーシスなどにより、できる限り会話機能を再獲得できるようにしています。
下咽頭癌
下咽頭癌は耳鼻科領域の中で最も予後の悪い癌の一つであり、見つかったときには既に進行している場合が少なくありません。しかし電子内視鏡の発達により最近見つかることが増えてきた極めて早期の表在癌は、顕微鏡・内視鏡下に経口的に切除します。表在癌ではないものの原発巣がそれほど大きくない場合には、必要に応じて転移したリンパ節だけを手術で切除し、喉頭・下咽頭は抗癌剤と放射線による保存的治療を行なうようにしています。進行癌や再発癌に対しては、喉頭を含めた全摘出が必要です。
口腔癌(舌癌、歯肉癌、口腔底癌、頬粘膜癌 など)
舌癌を含めた口腔癌に対しては、基本的には手術が必要です。早期癌の場合は切除するのみで問題ないですが、進行癌の場合は形成外科にも協力いただき、切除後の欠損部を自身の腕や腹部の組織を用いて再建します。治療前から言語聴覚士によるリハビリテーションや歯科口腔外科による口腔ケアを開始し、治療後の構音・嚥下機能の向上を目指しています。
中咽頭癌
中咽頭癌にはヒトパピローマウイルス(HPV)が発症に関連するものとそうでないものがあります。関連するものは放射線治療がよく効くことがわかっているため、基本的には放射線治療(必要に応じて抗癌剤も併用)をおすすめします。HPVが関連しないものについては、可能であればまずは手術で切除し、追加で放射線や抗癌剤の治療を行います。病変が大きく手術が困難な場合は、HPV関連のものほど効果は高くありませんが、放射線・抗癌剤による治療を行います。放射線治療後に再発を来たした場合は、可能であれば咽頭の壁ごとすべて切除し、形成外科に協力いただいて、その欠損部をご自身の腕や腹部の組織で再建する治療を行います。
上咽頭癌
上咽頭癌は部位的にそもそも手術が困難な部分でありますが、放射線や抗癌剤が非常に良く効きますので、基本的に手術は行わず、放射線と抗癌剤治療を組み合わせた治療を受けていただきます。肺や肝臓などへの遠隔臓器へ転移することが多いため、退院後も遠隔転移予防のために外来で定期的に抗癌剤の治療を受けていただくことをお勧めしています。
鼻副鼻腔癌
鼻副鼻腔癌に対しては、可能であれば超選択的動注化学療法を併用した放射線治療や、内視鏡とナビゲーションシステムを用いた経鼻的手術などを行いますが、腫瘍の進展範囲が広い場合は、顔面の切開を伴う腫瘍切除が必要となります。腫瘍が頭蓋内にまで進展している場合は、当院では脳神経外科・形成外科に協力いただき、頭蓋底手術という拡大手術を行うことが可能です。この手術は全国でも行える施設がかなり限られるため、県外からも多くご紹介いただいています。
甲状腺腫瘍・唾液腺腫瘍
甲状腺と耳下腺などの唾液腺の腫瘍性疾患は多彩な病理組織の腫瘍が含まれますので、専門外来にて系統的な術前診断を行ない、手術の適応を決定します。顔面を動かす顔面神経や、声帯を動かす反回神経を、余儀なく切除せざるを得ない場合には、可能な限り神経の再建を行います。
5.手術・診療の実績
2020年
手術名 | 症例数 |
---|---|
喉頭癌手術(喉頭摘出) | 8 |
喉頭癌手術(喉頭温存) | 8 |
下咽頭癌手術(喉頭摘出) | 17 |
下咽頭癌手術(喉頭温存) | 37 |
口腔・中咽頭癌手術(再建あり) | 24 |
口腔・中咽頭癌手術(再建なし) | 29 |
鼻副鼻腔悪性腫瘍手術 | 29 |
頭蓋底手術 | 8 |
副咽頭間隙腫瘍手術 | 8 |
頸動脈小体腫瘍手術 | 2 |
6.研究
既に当科で治療あるいは検査を受けられた方の中で、ご自身の既存情報(画像データ、検査データなど)が使われることを希望されない場合は治験・臨床研究にかかる患者相談窓口(078-382-6667)までご連絡ください。