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肝移植

肝移植とは

肝移植には生体肝移植と脳死肝移植があります。生体肝移植には予め移植日時が決定できる予定手術であるという長所がある一方で、生体ドナーの存在が必須であることと移植される肝臓の大きさが小さいという短所があります。一方脳死肝移植では生体肝移植と比較して大きな肝臓を貰えるという長所がある一方で、待機期間が非常に長くいつ手術になるか分からないという短所があります。移植を受ける人をレシピエント、肝臓を提供する人をドナーといいます。

肝移植

日本肝移植学会の肝移植症例登録によると、これまで日本国内で実施された生体肝移植数は2005年に年間566例とピークを迎えた後に年々減少傾向を示し、2017年は347例の生体肝移植が実施されました。また脳死肝移植の症例数は2010年7月17日に改正臓器移植法が施行されるまでは年間5例未満で推移していましたが、改正後には徐々に増加し2019年には88例の脳死肝移植が実施されました(図1)。

肝移植の適応疾患は内科的に治療不可能な末期肝疾患です。

主な疾患

B型・C型肝炎ウイルス性肝硬変

B型肝炎に対しては経口の抗ウイルス剤とB型肝炎の高力価グロブリン製剤を併用します。術後はB型肝炎の抗体価に応じて2週間から3週間に一度高力価グロブリン製剤を投与するために、外来受診して頂きます。C型肝炎は移植後も再発します。当院では移植後体調が回復した段階でC型肝炎の治療を開始しています。これまでリバビリン、インターフェロン併用療法を行ってきましたが、2014年秋以降は内服剤の投与を行っています。C型肝炎の治療は、消化器内科の先生と一緒に行っています。

肝細胞癌

比較的がんの進展度の低い(ミラノ基準=単発5cm, 3cm 3個以内、あるいは基準外でも腫瘍径5cm以内かつ腫瘍個数5個以内かつAFP500ng/ml以下)末期肝硬変が対象となります。

急性肝不全

原因としては薬剤性、B型肝炎の急性増悪などが挙げられます。兵庫県内で急性肝不全が発生した際に、既存の肝疾患連携協議会の枠組みを用いて治療中の医療機関と専門的治療が可能な医療機関との連携を進めるため、劇症肝炎等医療連携システムが作成され、2011年4月神戸大学に窓口が設置されました。急性肝不全の治療は時間との勝負です。現在神戸大学では肝胆膵外科だけではく消化器内科、集中治療部と連携し積極的な患者様の受け入れを24時間体制で行っています。

胆汁うっ滞性肝硬変

原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎

アルコール性肝硬変

禁酒期間(生体の場合;6ヶ月、脳死の場合;2年)が必須です。

自己免疫性肝炎

胆道閉鎖症

その他

代謝性肝疾患、多発性肝嚢胞、脂肪性肝硬変など

生体肝移植

生体肝移植術:健康な生体ドナーから提供された肝臓の一部をレシピエントに移植する方法です。神戸大学では2000年6月より生体肝移植を始め、2020年12月末までに93例実施しています。

生体肝移植ドナーの条件

生体肝移植のドナーになるために最も重要なことは、病気であるレシピエントの命を救うためにドナーとなることを自発的に希望されるという意思です。神戸大学では親族4親等以内あるいは配偶者をドナーとなる条件にしています。年齢は原則として20才以上65才未満です。

医学的条件としては、肉体的・精神的に健康であること、ウイルス性感染症がないこと、肝機能が正常であることです。血液型は一致(A型-A型、B型-B型、AB型-AB型、O型-O型)または適合(A 型→AB型、B型→AB型、O型→A型、B型、AB型)を優先しています。一致または適合するドナーがおられない場合は、血液型不適合の移植を実施します。

ドナー検査の流れ

まず移植外来を受診して頂きます。最初の面談時に詳しい説明を行いますので、可能な限りご家族と一緒に来院して下さい。最初の外来では、採血検査と腹部CT検査を行います。CTの検査では肝臓の大きさを測るため画像解析ソフトにかけ、ドナーご本人にとって十分な肝臓が残る事と、レシピエントにとって十分な肝臓の大きさがある事を確認します。この検査で問題ないと判断された場合、次に胆管の情報を得るため、もう一度CTを撮影して頂きます。以上の検査で問題がないと判断されれば、最後に全身麻酔をかけるため心電図、呼吸機能検査、レントゲン検査、胃カメラを行います。ドナーの検査は自費診療となりますので、費用が平均で10万円かかります。実際に移植を行った場合には、検査費用はレシピエント側から支払われるためかかりません。

ドナー入院経過

移植手術の前日に入院して頂きます。手術当日は集中治療室に入室して頂き、翌日大きな問題が無ければ病棟に戻ります。入院期間は平均で2週間、手術後1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月目に外来を受診して頂き手術後の肝臓に問題が無いかCTを撮影します。6ヶ月目以降でも何か問題があった際には移植外来を受診して下さい。

レシピエント検査の流れ

まず移植外来を受診して頂きます。生体肝移植を実施するには生体ドナーの存在が必須となりますので、ドナー検査を行いドナーとして問題なければレシピエントには検査入院して頂きます。移植手術は肝胆膵外科の中で最も大きな手術になりますので、全身の検査を行います。具体的には肝臓のCTとMRI検査、全身麻酔をかけるための心電図、呼吸機能検査、心臓超音波検査、口腔外科による齲歯のチェック等を行います。検査が終了した後当院の適応評価委員会に資料を提出し、承認された後手術日程を調節します。

レシピエント入院経過

肝移植

手術日を決定した後、1週間前までには入院して頂きます。術後5日間程度は集中治療室のクリーンルームで集中治療を行います。その後病棟の重症個室で1週間治療を行った後、大部屋に移動します。入院期間は術前状態によって前後しますが平均1ヶ月です。退院する前には一度外泊して頂き、自宅で問題が無い事を確認して頂きます。退院後始めは1週間に一度外来受診して頂き、採血結果等に応じて徐々に間隔を開け最終的には1ヶ月から2ヶ月に一度外来受診して頂きます。

脳死肝移植

神戸大学は2010年6月に脳死肝移植認定施設となりました。脳死肝移植の希望登録を行なう場合、入院で生体肝移植と同様の検査を行ない、検査終了後院内適応評価委員会の承認を得た後、中央の適応評価委員会へ書類を送付します。ここで適応有りと判断された後、日本臓器移植ネットワークに登録されます。中央の適応評価委員会では、肝移植適応疾患別医学的緊急度別に点数がつけられます。

神戸大学では、劇症肝炎等医療連携システム窓口を設置してから県外からも積極的に急性肝不全患者さんの受け入れを行っています。連携システムの充実とともに急性肝不全患者さんの紹介が増え、2020年12月31日までに25例の脳死肝移植が実施されました。急性肝不全患者さんの受け入れは24時間365日行っております。ご希望される患者様、医療関係者の方は、平日は肝胆膵外科医局まで、夜間休日は消化器外科当直医までお問い合わせ頂きますようよろしくお願い申し上げます。

外来のご案内

移植外来は火曜日と金曜日に実施しております。また、当院ではレシピエント移植コーディネーターを継続的に育成しており、外来だけでなく病棟や集中治療室でも移植患者さんのケアに当たっております。移植に関するお問い合わせは随時受け付けをさせていただきます。神戸大学肝胆膵外科医局 078-382-6302(直通)までお問い合わせいただくか、またはe-mail 小松 昇平(komasho8med.kobe-u.ac.jp)までお問い合わせいただきます様宜しくお願い申し上げます。

肝移植外来のご案内

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