研究成果

2023年

2023.12

浦井伸先生の論文が「European Journal of Endocrinology」に掲載されました。

当研究室が主体となりこれまで報告してきた疾患概念「腫瘍随伴自己免疫性下垂体炎」の契機となった抗PIT-1下垂体炎について、全例を対象とした包括的な検討を行い、新たな臨床的特徴を報告しました。疾患特異的と思われる臨床像、腫瘍組織のPIT-1異所性発現、共通するHLA、疾患マーカーである自己抗体について報告し、さらに免疫チェックポイント阻害薬使用症例においても発症し得るとの新規知見を提示しました。
加古川医療センター糖尿病・内分泌内科、大阪大学医学部附属病院呼吸器外科、当院病理診断科との共同研究です。

Eur J Endocrinol. 2023 Dec 26:lvad179. doi: 10.1093/ejendo/lvad179.

小川渉先生の論文が「Endocrine Journal」に掲載されました。

小川教授、廣田准教授らが中心となって肥満症診療ガイドライン2022のエッセンスが英文論文としてまとめられました。

Endocr J. 2023 December 20.doi:10.1507/endocrj.EJ23-0593

今森真さんの論文が「Biochemical and Biophysical Research Communications」に掲載されました。

遺伝的に脂肪組織インスリン抵抗性を生じるマウスにおける肝線維化は、TSP-1欠損により改善することを示しました。また、脂肪細胞におけるTSP-1の発現は、PDK1-FoxO1軸を介したインスリンシグナル伝達によって制御されることを明らかとしました。本研究において、TSP-1は脂肪組織のインスリン抵抗性とMASHを結びつける重要なアディポカインと考えられ、MASH患者における肝線維化の治療標的となる可能性があります。

Biochem Biophys Res Commun. 693, 2024.

2023.11

西影星二先生の論文が「Experimental Hematology」に掲載されました。

腸のALアミロイドーシスにおいて、血管の内皮細胞がアミロイド線維を細胞外に輸送し、沈着させる機序を解明しました。

Exp Hematol. 2023 Nov 10:S0301-472X(23)01762-9.

浦井伸先生の論文が「Pituitary」に掲載されました。

オクトレオチド試験におけるGH抑制率と時間の曲線下面積や底値までの時間が、これまで一般的に使用されてきたGH最大抑制率と比して、IGF-I低下や腫瘍縮小といった第一世代ソマトスタチン受容体リガンドの治療効果を予測し得ることを明らかにしました。先端巨大症患者の薬物治療における個別化や臨床医の薬剤選択に繋がることが期待されます。

Pituitary (2023).Published: 24 November 2023

佐々木百合子先生の論文が「Endocrine Journal」に掲載されました。

パラガングリオーマでは一般的にノルアドレナリンのみを分泌しますが、ノルアドレナリンとアドレナリンの両者を分泌する複合型パラガングリオーマ -神経節細胞腫の症例を病理部と泌尿器科との共同研究で報告しました。また複合型パラガングリオーマの全既報の特徴をoverviewした上で本例のPNMT発現に関する機序を考察しました。

本例は内分泌腫瘍カンファレンスにて取り上げた症例となります。

Endocr J. 2023 Nov 11. doi: 10.1507/endocrj.EJ23-0271. Online ahead of print.

浦井伸先生・渡邊美季先生の論文が「Frontiers in Immunology」に掲載されました。

自己免疫性下垂体機能低下症の一つである腫瘍随伴性ACTH単独欠損症の症例から、疾患マーカーと考えられる自己抗体の有無を探索し、コルチコトロフに対する自己抗体の認識部位がACTH25-39であることを明らかにしました。本研究は、呼吸器内科と病理診断科との共同研究です。

Front. Immunol., 14 November 2023

静岡県立大学との共同研究が「Scientific reports」に掲載されました。

Lactobacillusに代表される乳酸菌などの腸内細菌によって産生されるHYA (10-hydroxy-cis-12-octadecenoic acid)と呼ばれる代謝物が、肝星細胞におけるTGF-β経路を抑制することで肝線維化を改善し、非アルコール性脂肪肝炎を改善することを明らかにしました。

Sci Rep. 2023 Nov 3;13(1):18983.

2023.09

山本雅昭先生の総説が「Endocrine Journal」に掲載されました。

日本内分泌学会研究奨励賞の受賞理由となった研究成果である「飢餓時における成長ホルモンシグナルの新規制御機構の解明」および「新たな疾患概念“抗PIT-1下垂体炎”の確立」に関して、Endocrine Journalに総説を寄稿しました。

Endocr J. 2023 Sep 28;70(9):867-874. doi: 10.1507/endocrj.EJ23-0264. Epub 2023 Aug 5.

プロラクチン産生腫瘍に関する国際コンセンサスステートメントが「Nature Reviews Endocrinology」に掲載されました。

2009年、2011年にこれまで示されてきたプロラクチノーマの診断、治療に関する国際コンセンサスの改訂版として、コンセンサスステートメントが掲載されました。福岡先生がご参加されておられます。

Nat Rev Endocrinol (2023).

2023.08

本村悠馬・浦井伸先生の論文(兵庫県立がんセンターとの共同研究)が「Diabetology international」に掲載されました。

免疫療法開始から1型糖尿病診断までの期間が、過去報告されたなかで最も長く、1988日後に発症した、兵庫県立がんセンターと共同の症例報告です。

Diabetol Int (2023). doi: 10.1007/s13340-023-00659-5

辻本泰貴先生の論文が「JCEM case reports」に掲載されました。

早老症とインスリン抵抗性の強い糖尿病と示す遺伝性疾患である、Werner症候群に特徴的なアキレス腱石灰化の所見を示すClinical imageです。

JCEM Case Reports. 2023; 1(4): luad099

2023.07

共同研究の論文が「The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」に掲載されました。

グルコースクランプ、および、75-g OGTT のデータを用いて数理モデル解析を行い、インスリン分泌、インスリン感受性、インスリンクリアランスで表される「DI/cle」は、耐糖能の変化をよく説明することのできる、新たな耐糖能指標であることを報告しました。

J Clin Endocrinol Metab. 2023 Jul 5;dgad392.

2023.06

共同研究の論文が「Diabetes Therapy」に掲載されました。

治療抵抗性の糖尿病を伴う希少疾患である遺伝的インスリン抵抗症及び脂肪萎縮性糖尿病を持つ方の認識について調査した論文であり、疾患に対する社会の不理解や適切な治療指針の欠如などを心理的負担と感じていることが明らかとなりました。

Diabetes Ther (2023).

国際共同の総説が「Diabetes Technology & Therapeutics」に掲載されました。

様々な要因が血糖とHbA1cとの関係性に影響を与えるため、HbA1cを個人間で比較することにはいくつかの問題があります。本総説論文では、CGMデータを用いて血糖とHbA1cとの関係の個人差を調整することの有用性について述べています。

Diabetes Technol Ther. 2023;25(S3):S65-S74.

検査部との共同研究が「Clinical Endocrinology」に掲載されました。

近年TSH値の国際標準化を目的としたハーモナイゼーションが提唱されていますが、その実臨床における不安定性に関連する因子について当院検査部との共同研究で4社の測定系を用いて検討した研究です。

Clin Endocrinol (Oxf). 2023 Jun 6. doi: 10.1111/cen.14938.

2023.05

細川友誠先生の論文が「Hepatology Communications」に掲載されました。

遺伝的に脂肪組織インスリン抵抗性を生じるマウスに非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を誘導する食事を与えると、体重増加を生じることなく、肝臓の炎症、線維化が増悪することが明らかとなりました。本モデルは他のNASHモデルと比べて、より早期・より均質的にNASHが生じるため、今後非肥満NASH患者の病態解明につながる可能性があります。

Hepatol Commun. 7(6):e0161, 2023.

2023.04

清家雅子先生の論文が「Biochemical and Biophysical Research Communications」に掲載されました。

膵β細胞におけるmTORC1活性調節において、GCN2の下流で発現するl-アスパラギナーゼが、14-3-3との結合を介してTSC2を競合的に活性化し、mTORC1活性を制御していることが明らかにしました。

Biochem Biophys Res Commun. 2023 Apr 16;652:121-130.

滋賀医科大学との共同研究の論文が「Endocrinol Diabetes Metab Case Rep」に掲載されました。

学校検尿で尿糖陽性となった17歳高校生の受診を契機に、発端者、母、祖父がインスリン抵抗症と診断された。遺伝子解析を実施したところ、インスリン受容体に新規変異(p.Val1086del)をヘテロで認めA型インスリン抵抗症の確定診断に繋がった。母は50歳、祖父は77歳で糖尿病を発症しており、同変異であっても臨床経過が異なっていた。

Endocrinol Diabetes Metab Case Rep. 2023: 22-0362.

2023.03

権 映月さんの論文が「Journal of Diabetes Investigation」に掲載されました。

新規糖尿病治療薬であるイメグリミンは膵β細胞からのインスリン分泌促進作用を有するが、その作用メカニズムの詳細は不明な点が多い。本研究により、イメグリミンはマウスにおいて消化管ホルモンであるインクレチン分泌を促進するという新たな作用メカニズムを見出した。さらに、同機構がイメグリミンによる血糖降下作用の一部を担うことを示した。

J Diabetes Investig. 2023 Mar 28. doi: 10.1111/jdi.14001. Online ahead of print.

2023.02

杏林製薬との共同研究が「iScience」に掲載されました。

Ligand fishingという手法を用いて、Prohibitin1/2(PHBs)が、AMPKと結合しその働きを抑制するという新規メカニズムを明らかとしました。AMPKとPHBsの結合を阻害する化合物も得られており、新しいAMPK活性化薬の創出につながることが期待されます。

iScience. 2023 Feb 28;26(4):106293. doi: 10.1016/j.isci.2023.106293.

山田倫子先生の論文が「Scientific Reports」に掲載されました。

高齢者の入り口である65歳という年齢では、肥満は糖尿病や高血圧に対する高いリスクになりますが、脂質異常症に対するリスクはそれらほど高くありませんでした。またこの傾向は女性で顕著である事を明らかにしました。

Sci Rep. 2023 Feb 9;13(1):2346.

初期研修医 佐藤郷介先生の論文が「Journal of Diabetes Investigation」に掲載されました。

AIによる蛋白質立体構造予測プログラムAlphaFoldを用いてインスリンシグナルに関連する蛋白質の予測構造を俯瞰することで、その構造的特徴やシグナル伝達における機能を新たな視点から考察した報告です。(佐藤先生は2022年度に当科を初期研修医としてローテートされました)

J Diabetes Investig. 2023 Feb 14. doi: 10.1111/jdi.13988

国際症例カンファレンスに関する論文が「Journal of Endocrine Society」に掲載されました。

COVID-19によるパンデミック後に急激に進んだビデオ会議システムを応用し、2020年7月にいち早く内分泌疾患という希少疾患の教育方法として取り入れた、新たな国際症例カンファレンスの方法と実際、その成果を報告した論文です。

Journal of the Endocrine Society, Volume 7, Issue 4, April 2023, bvad023

2023.01

穂積かおり先生の論文が「Scientific Reports」に掲載されました。

新規経口血糖降下薬であるイメグリミンは肝細胞においてミトコンドリア呼吸、AMPK活性、遺伝子発現に対してメトホルミンと同様の薬理学的効果を発揮する一方で、ミトコンドリア機能に関連する特定の遺伝子の発現に対する効果はメトホルミンと異なることを明らかにしました。

Scientific Reports, Article number: 746 (2023),Published: 13 January 2023

廣田勇士、山本あかね先生が参加された論文が「Internal Medicine」に掲載されました。

SMBGのアドヒアランスとisCGM使用パターンによる階層クラスター分析を行った結果、3つのクラスターに分類でき、クラスター1(17.7%;主にisCGMデータを参考にし、SMBGをあまりしない)の者は平均年齢が若く、クラスター2(34.0%;SMBG頻度は高く、isCGMデータをあまり参考にしない)の者はリブレ使用期間が短く、クラスター3(SMBGとisCGMの両方のデータを参考にする)の者はTIRが低く、甘い飲料を飲む割合、重度の糖尿病ストレスの割合が多いことが明らかとなりました。

Internal Medicine,Article ID: 0639-22, Advance online publication: January 12, 2023

藤田泰功先生の論文が「Journal of Endocrine Society」に掲載されました。

癌に対する免疫チェックポイント阻害剤の使用により内分泌障害が生じることはよく知られていますが、1型糖尿病と下垂体炎の併発は極めてまれです。
本研究ではこの二つの内分泌障害を呈した自験例とこれまでの全報告例をまとめ、その特徴を明らかにしました。(奈良県立医科大学との共同研究)

Journal of the Endocrine Society, 2023;, bvad002,

千船病院との共同研究が「Obesity Surgery」に掲載されました。

術前血清コルチゾール値が10µg/mL以上の男性では腹腔鏡下スリーブ状胃切除術後の体重減少が乏しいことが示されました。

Obesity Surgery. 2023 Jan 10. doi: 10.1007/s11695-022-06415-z.

大町侑香、浦井伸先生の論文が「Frontiers in Endocrinology」に掲載されました。

Kenny–Caffey症候群2型は、2013年に報告された、副甲状腺機能低下症と低身長を含む稀な遺伝子疾患です。我々は比較的高齢で診断に至った症例を経験しました。大半は小児での診断例であり、加齢に伴いどのような経過を辿るのかを考える上で有益なものとなり得ます。

Front. Endocrinol., 04 January 2023