神戸大学大学院医学研究科外科系講座産科婦人科学分野 サンプルロゴ

研究紹介

Research

研究活動・臨床研究

研究活動・臨床研究

サイトメガロウイルス母子感染の研究

 サイトメガロウイルス(CMV)の先天性感染により、全国で毎年1000人の乳幼児に難聴などの神経学的障害が発生していると推計されています。当科では、倫理委員会の承認を受けて2010年より前方視的コホート研究として、妊婦のCMV抗体(IgG抗体、IgG avidity index、IgM抗体)スクリーニングおよび新生児尿(PCR法)のウイルススクリーニングを全例に行なっています。また、先天性感染を引き起こすリスク因子の同定や抗体高力価の免疫グロブリンを用いた胎児治療についての臨床研究も行なっています。

トキソプラズマ母子感染の研究

 なま肉や加熱不十分な肉類の摂食によってトキソプラズマのシストが母体に入り、胎児感染を起こすことがあります。当科では、トキソプラズマIgG、IgM抗体とIgG avidityの測定および羊水や血液のDNA検査を組み合わせた妊婦トキソプラズマスクリーニング、そして初感染妊婦に対する治療、そして新生児の予後に関する臨床研究を行なっています。

不育症の研究

 不育症は、妊娠しても流産を繰り返したり死産となることで健児を得られない病気で、不育症で悩まれている患者様の診断につながる新しい検査法や治療法の開発に取り組んでいます。
 検査法については、従来知られてきた抗リン脂質抗体に加えて、当科の谷村らがミスフォールドβ2グリコプロテインⅠ(β2GPI)/MHCクラスⅡ複合体に対する自己抗体が抗リン脂質抗体症候群の病態に関わっている可能性示しており (Blood.2015)、不育症とこの新たな自己抗体の関連を調べる臨床研究を行なっています。また、近年日本人に多いとされるプロテインS欠乏等の凝固因子異常と産科合併症の関連についても注目が集まっており、新たに開発されたプロテインSやプロテインCの測定系が産科合併症と関連するかについての研究や、母児接点の免疫異常と不育症の関係を調査するため、母児接点の免疫細胞を解析する研究を行っています。
 治療ではリスク因子不明の不育症で悩まれている患者様の一部に想定される免疫異常に対する治療として、免疫グロブリン投与の有効性についての臨床研究、治験などを行っています。

研究者の声
出口 雅士
『不育症と凝固異常、リスク因子不明不育症の母児接点免疫異常に関する解析と新規治療開発』
リスク因子不明の不育症で悩まれている患者様の一部には母児接点の免疫異常が関与していると考えられ、母児接点の免疫細胞を解析する研究を行っています。また、想定される免疫異常に関する治療として、免疫グロブリン投与の有効性について検討しています。また、近年日本人に多いとされるプロテインS欠乏等の凝固因子異常と産科合併症の関連についても注目が集まっており、新たに開発されたプロテインSやプロテインCの測定系が産科合併症と関連するかについて研究しています。不育症はまだまだ新しい分野で分からないことも多く、非常にエキサイティングな分野です。
谷村 憲司 『習慣流産の病態解明と治療法の確立』
原因不明の不育症で悩まれている患者様の診断や治療につながる新しい検査法の開発に取り組んでいます。新しいことに挑むのはとてもエキサイティングです。
長又 哲史「HHV-6と生殖不全との関係」
私は大学院在学中からHuman herpesvirus 6(HHV-6)を中心に研究を行っております。産婦人科では馴染みのないウイルスですが、近年流産や原因不明不妊症との関連性が海外から報告されています。まだまだ産婦人科領域では解明されていない事が多く、少しでも医学の前進に役立てればと思っています。
笹川 勇樹「免疫抑制ネオセルフ下ペプチドワクチンによる膠原病・産科異常治療法の確立」
不育症の治療確立をめざし、研究にもいそしんでいます。
田中 恵里加
2018年4月から、神戸大学大学院医学研究科内科系講座幹細胞医学分野で研究を行っております。
私の研究テーマは「iPS細胞から胎盤(trophoblast)を分化誘導させる」ことです。妊娠高血圧症候群、胎児発育不全、流産などの妊娠合併症は胎盤の初期発生の過程が障害されることが一因であると言われていますが、その機序については不明な点もまだ多くあります。そこで、iPS細胞からtrophoblastへの分化が可能になれば、胎盤の初期発生過程について研究することができます。具体的には、iPS細胞を様々な物質を添加した培地で培養することで、胎盤(trophoblast)へ分化誘導させることを目指しています。さらに、作製した胎盤を用いて、胎盤発生にかかわる遺伝子の機能についても検討中です。自分自身でテーマを設定し実験をする日々はとても充実しています。ぜひ一緒に研究しましょう。
冨本 雅子
2023年5月から神戸大学大学院医学研究科生理学・細胞生物学講座生理学分野で研究をはじめ約1年が経ちました。右も左もわからず研究の世界に飛び込み、戸惑うことが多い1年でしたが、ようやく少し慣れてきたかなと思っているところです。
私の研究テーマは「母体炎症(MIA:Maternal immune activation)と児の自閉症発症の関連について」です。MIAが児の自閉症発症に関連している可能性があることは分かってきていますがその機序や表現型については未知の部分が多いです。私はまずその中でも、自閉症児に併発することが多い睡眠障害に着目し、MIAと概日リズムの乱れについて研究を進めました。さらに、MIAにより自閉症が発症する過程において脳内でどのような異常が生じているのかについても研究を進めています。
思うような結果が得られないことが多く、暗中模索の日々ですが、仮説をたて実験計画をたて、実験手技を習得し結果を出すという一連の流れを黙々と実行することでゴールに近づいていることを信じて粘り強く頑張りたいと思っています。
安積 麻帆
卵巣がんは早期発見が難しく、再発率が高いことが知られています。エクソソームは、ほぼすべての細胞から分泌される30~150 nmの細胞外小胞で、細胞間コミュニケーションの役割を果たしています。マイクロRNA(miRNA)は長さ約22ヌクレオチドの小さなノンコーディングRNAで、特定の遺伝子の発現を抑制することが知られています。エクソソームにはタンパク質、RNA、DNA、脂質などが含まれており、miRNAも存在していることが知られています。近年、体液に含まれるエクソソームを調べることで、がんの診断や予後予測、無細胞療法(エクソソーム療法)、ドラッグデリバリーシステム、がんワクチンに応用できることが分かってきました。体液中のエクソソームは、これまで卵巣がんにおいて血液、血漿、尿、腹水を用いて報告されていますが、腟分泌物を用いた報告はありませんでした。腟分泌物中のエクソソームmiRNAが卵巣がんの早期発見につながる可能性があると仮説を立て、研究を行っています。
山中 啓太郎
2022年6月から神戸大学大学院医学研究科病理学分野で研究を始め、現在3年目を迎えています。
私が所属する研究室では、主にがん微小環境について研究を行っています。がん細胞を取り巻く環境、いわゆる、がん微小環境には、マクロファージや線維芽細胞などの間質細胞が存在し、これらはがん細胞と相互作用してがんの進展に関与することが知られています。私は腫瘍関連マクロファージ(TAM)が高異型度漿液性卵巣癌(HGSOC)の進行に与える影響を研究テーマとしました。研究の初期段階では、末梢血由来マクロファージとHGSOC細胞株の間接共培養を行い、癌の悪性形質に関わる因子を見出すことを目指しました。研究を始めたばかりの頃は不安や困難が多くありましたが、上級医の先生方や他科の大学院生の仲間の助けを借りながら研究を進めてきました。最初の1年間は結果が出ず不安な日々が続きましたが、関連因子を発見してからは順調に研究が進み、現在はこれまでの研究内容を論文としてまとめる作業を行っています。基礎研究の経験を通じて、医師としての視野が大きく広がったと感じています。皆さんもぜひ基礎研究の世界に挑戦してみてください。
研究一覧

・習慣流産の病態解明と治療法の確立
・妊娠成立と維持に関わる自然免疫の解明
・胎盤・絨毛における脂質代謝
・抗リン脂質抗体症候群の病態解明と妊娠管理
・母子感染の予防法と管理指針の確立
・内科合併症妊娠の管理方法の確立
・癒着胎盤の出生前予測と治療法の確立
・絨毛細胞の筋層浸潤機構の解明
・婦人科癌における妊孕能温存治療法の開発
・子宮体癌、新規がん抑制因子の探求
・周術期と周産期における凝固異常
・先天性性器奇形に対する新術式の開発
・体腔液細胞診の有用性と予後因の解析
・性分化異常の分子生物学的解明
・抗MHCクラスII / ミスフォールド蛋白抗体を用いた自己免疫疾患診断法の開発

現在おこなっている臨床研究

現在進行中の臨床研究

患者さんへの情報公開文書

症例登録

日本産科婦人科学会 周産期登録事業及び登録情報に基づく研究
日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会 婦人科悪性腫瘍登録事業及び登録情報に基づく研究
ロボット支援手術 術前症例登録(婦人科領域)

研究実績

令和5年教室研究業績

令和4年教室研究業績

令和3年教室研究業績

令和2年教室研究業績

令和元年教室研究業績

平成30年教室研究業績

平成29年教室研究業績

平成28年教室研究業績

平成27年教室研究業績

平成26年教室研究業績

平成25年教室研究業績

平成24年教室研究業績

  
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