神経内視鏡手術
神経内視鏡とは
光ファイバーの技術を用い、細い管を通じて、狭く深い部分においても、リアルタイムに状況を映し出すことができるのが内視鏡です。頭蓋内や脊柱管内の脳や脊髄、すなわち神経組織に対する診断・治療に特化したそれを神経内視鏡と総称しております。
従来のような開頭(大きく創を開け、大きく骨を開ける)を要することなく、穿頭(骨に小さな穴をあける)により外科的目的を達することで、当教室の掲げる“患者さんにやさしい脳神経外科”に相応しい治療戦略と自負しております。
機器の特性として、大きくは、硬性内視鏡と軟性内視鏡との2種類があり、種々の疾患の治療や検査目的に応じ、これらを適宜選択あるいは併用し、低侵襲下に治療成績の向上に努めています。
硬性内視鏡
細い筒状の硬いカメラで、優れた解像度を有することが特徴です。小さな穴を通じ、病変へと先端を進めて映し出すとともに、並行して様々な器具を駆使して、治療を行います。 当科では、4K高解像度の内視鏡とともに、立体構造把握に優れた3D内視鏡を有します。
(OLYMPUS社ホームページより)
(3Dカメラ使用時の手術風景)
軟性内視鏡
いわゆる「胃カメラ」(消化管内視鏡)や気管支鏡のように、比較的柔らかく、任意に先端を曲げることが可能です。主に、脳室と呼ばれる脳脊髄液が満たされた領域での病変に到達し、先端から器具を出し入れし、治療介入や検査をする際に有用です。
- 治療例
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- 脳腫瘍に対する内視鏡下生検術
- 閉塞性水頭症に対する内視鏡下第3脳室底開窓術(ETV)
【手術前】
脳室内に位置する腫瘍(赤矢印)により、脳脊髄液の流路が閉塞し(青矢印)、上流の脳室の拡大(青矢頭)を呈し、頭痛などの水頭症症状がみられました。【手術】
穿頭を行い(頭蓋骨に小さな穴を設け)、軟性内視鏡を脳室内へと挿入し(緑矢印のイメージ)、(①)腫瘍を一部採取し病理検査を行う(生検術)とともに、(②)第3脳室と呼ばれる空間の底部に小さな穴を設けることで髄液流路の迂回路を作成(第3脳室底開窓術:ETV)しました。【手術後】
採取した腫瘍組織の病理診断をもとに、適切な化学療法を施行し、腫瘍の縮小(橙色矢印)、ならびに、脳室拡大の縮小(水色矢頭)にて水頭症の改善を認めました。- 脳室内出血に対する内視鏡下血種除去術
【手術前】
脳室内に位置する血種(赤矢印)により、脳幹への圧排(赤矢頭)が著しく、また、脳脊髄液の流路が閉塞して脳室の拡大(青矢頭)による水頭症を呈していました。【手術後】穿頭後に軟性内視鏡を脳室内に誘導し、血腫を除去することで、脳幹の圧迫解除(緑〇)とともに、脳室拡大(水色矢頭)・水頭症の改善を認めました。