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もやもや病

もやもや病とは

もやもや病は頭の中の脳を養う太い血管(内頸動脈)が細くなり、これによって脳に十分な血液が供給できなくなって脳梗塞などを発症してしまう病気です。人口10万人あたり6-10人程度いると考えられています。子供さんの脳卒中の原因として代表的なものですが、発症年齢は様々で成人になってからの発症も稀ではないです。家族内発症が約10%にみられ遺伝的関与が指摘されています。

脳梗塞を発症されると言葉がでなくなったり上手くしゃべれなかったり、場合によっては手や足の脱力や麻痺などを引き起こしてしまいます。細くなった血管の代わりになんとか脳に血流を補おうとして微細な血管が発達し(側副血行路と言います)、これが脳血管撮影で“もやもや”と映ることが病気の名前の由来です。この血管は脆い血管で、特に大人になられてからは脳出血の原因にもなります。

もやもや病の治療は?

これらの理由から、もやもや病の治療目的は、

  • (1)脳梗塞の発症を予防すること
  • (2)脳出血の再発を予防すること

…になります。

細くなってしまった頭の中の太い血管(内頸動脈等)に対して、元どおりの太さに戻すことは現在の最善の医療をもってしても不可能とされています。そのためできることは、血流が少なくなった脳になんとか他から血流を補うことです。

通常、頭の皮下を走る浅側頭動脈という血管を剥離して、これを脳の表面の血管に吻合することで脳への血流を増やすことができ、脳梗塞の予防が期待できます。この治療法は直接、血管を脳の血管に吻合するため直接血行再建術と言われていて、術直後から即効性のある血流増加を期待できます。

さらに、通常、この直接血行再建術に加えて間接血行再建術も併用しています。これは筋膜、筋肉、そして骨膜や硬膜など血流のあるあらゆる組織を脳の表面にそっと置いてくる治療法で、直接血行再建術を行う際に同時に行なっています。間接血行再建術では即効性のある脳の血流増加は期待できませんが、時間の経過とともに脳の表面に置いた組織から血流が養われ、血流のさらなる増加を期待できます。

これらの治療は、これまでの臨床研究で脳梗塞の再発予防に有効なことが証明された確立した手術手技であります。また近年、もやもや病による脳出血の再発予防にも近年有効であることが報告されています。

手術は安全で概ね大きな合併症もなく行えており、患者さんの術後経過も良好です。詳しくは担当医からご説明させて頂きますので、手術を受けられる・受けられないに関わらず、あるいはもやもや病の可能性を指摘されただけでも一度「もやもや病専門外来」を受診して頂ければと思います。

病気や治療法などなるべく詳しく説明させて頂くようにしておりますので、きっとご安心頂けると思います。

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参考文献
  • 脳神経外科疾患情報ページ https://square.umin.ac.jp/neuroinf/index.html
  • 難病情報センター もやもや病(22)https://www.nanbyou.or.jp/entry/47
  • 黒田敏ら:もやもや病の診断・治療に関する現状と今後の展望.脳卒中 25: 215-229, 2003
  • 難波理奈ら:家族制もやもや病の臨床像と最近の研究の動向.脳外32:7-16, 2004
  • Houkin K, Nakayama N, Kuroda S, Nonaka T, Shonai T, Yoshimoto T: Novel Magnetic Resonance Angiography Stage Grading for Moyamoya Disease. cerebrovasc Dis. 2005 Aug 30;20(5):347-354
  • Miyamoto S, Yoshimoto T, Hashimoto N, Okada Y, Tsuji I, Tominaga T, et al. Effects of Extracranial–Intracranial Bypass for Patients With Hemorrhagic Moyamoya Disease. Stroke 45:1415–1421, 2014
  • Qian-Nan Wang, Xiang-Yang Bao, Yong Zhang, Qian Zhang D-SL and LD. Encephaloduroarteriosynangiosis for hemorrhagic moyamoya disease: long-term outcome of a consecutive series of 95 adult patients from a single center. J Neurosurg 130:1898–1905, 2019