臨床

ホーム > 臨床 > “頭痛”について

“頭痛”について

頭痛

頭痛には、大きく分けて一次性頭痛と二次性頭痛があります。誤解を恐れずに平易な言葉で説明しますと、一次性頭痛とは、いわば頭痛による頭痛で「厄介な頭痛」と言えますし、二次性頭痛とは頭や頚の疾患によって二次的に引き起こされる頭痛で「怖い頭痛」とも言えるでしょう。

患者さんが頭痛で受診するときは、頭痛がつらくて受診する場合と、何か怖い病気かもしれないと心配で受診する場合と、あるいは、それら両方の場合があるでしょう。
基本的に大きな病院での治療が必要なのは、怖い病気による頭痛、つまり二次性頭痛の場合です。入院した上で点滴や手術等による治療が必要な場合です。

国際頭痛分類
一次性頭痛
  • 1. 片頭痛
  • 2. 緊張型頭痛
  • 3. 三叉神経・自律神経性頭痛(TACs)
    • 群発頭痛
    • 発作性片側性頭痛
    • 短時間持続性片側神経痛様頭痛発作
    • 持続性片側性頭痛
  • 4. その他の一次性頭痛
    • 一次性咳嗽性頭痛、一次性運動時頭痛、性行為に伴う一次性頭痛、一次性雷鳴頭痛、寒冷刺激による頭痛、頭蓋外からの圧力による頭痛、一次性穿刺様頭痛、貨幣状頭痛、新規発症持続性連日性頭痛
二次性頭痛
  • 5. 頭部外傷・障害による頭痛
  • 6. 頭頚部血管障害による頭痛
  • 7. 非血管性頭蓋内疾患による頭痛
  • 8. 物質またはその離脱による頭痛
    • 物質の使用または暴露による頭痛
    • 薬剤の使用過多による頭痛(MOH)
    • 物質の離脱による頭痛
  • 9.感染症による頭痛
  • 10.ホメオスターシス障害による頭痛
    • 低酸素血症あるいは高炭酸ガスによる頭痛
    • 透析頭痛
    • 高血圧性頭痛
    • 甲状腺機能低下による頭痛
    • 絶食による頭痛
    • 心臓性頭痛
  • 11. 頭蓋骨、頸、眼、耳、鼻、副鼻腔、歯、口あるいはその他の顔面・頚部の構造組織の障害による頭痛または顔面痛
  • 12. 精神疾患による頭痛
有痛性脳神経ニューロパチー、他の顔面痛およびその他の頭痛
  • 13. 脳神経の有痛性病変およびその他の顔面痛

『国際頭痛分類第3版』2018年11月1日訳日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会より改編

二次性頭痛「怖い頭痛」

二次性ということは、もともと根底に頭痛を引き起こすような頭や頚の疾患があるということです。さらに、二次性頭痛は、「内科的な」ものと「外科的な」ものに大別することができます。当科は「脳神経外科」ですから、外科的な治療が専門分野です。外科的な二次性頭痛の原因疾患としては、外傷(「国際頭痛分類」表内の5.)、脳血管障害(同6.)、脳腫瘍(同7.)などがあります。これらの疾患の説明は他項に譲りますので、そちらをご参照ください。加えて、外科的な二次性頭痛の原因で、比較的多いものに頭蓋内圧の変化によるものがあります。具体的には、頭蓋内圧上昇による水頭症や、圧低下による低髄液圧症候群などがあります(同7.)。それから、三叉神経痛による顔面痛(同13.)や、副鼻腔炎などによる頭痛(同11.など)も外科治療が適応されることがあります。

一方で、内科的な二次性頭痛の原因疾患には、感染症・膠原病・内分泌疾患などがありますが、これらの中にも髄膜炎や脳炎など、比較的進行が早い病気もあります(同9.や10.など)。

二次性頭痛を疑って精査が必要とされる頭痛の基準には次のようなものがあります。

二次性頭痛を疑う基準
  • 突然の頭痛
  • 今までに経験をしたことがない頭痛
  • いつもと様子が異なる頭痛
  • 頻度と程度が増していく頭痛
  • 50歳以降に初発の頭痛
  • 神経脱落症状を有する患者の頭痛
  • がんや免疫不全の病態を有する患者の頭痛
  • 精神症状を有する患者の頭痛
  • 発熱・項部硬直・髄膜刺激症状を有する頭痛
  • ① 実際の症状は多彩だが、具体的に例示すると、運動麻痺(顔面・四肢等)や感覚障害、視野欠損、視力障害、失語、構音障害など
  • ②不穏、性格の変化、認知機能の低下、意識レベルの低下など
  • ③悪心・嘔吐、項部硬直(首の後ろが固く、前に曲げにくい状態)など

『慢性頭痛の診療ガイドライン2013』 慢性頭痛の診療ガイドライン作成委員会 より改編

これらのような頭痛が疑われて、怖い病気が心配な場合には、放っておかずに、一度近くの脳神経疾患を扱う科を受診して、画像検査等の必要な検査を受けておく方が良いかもしれません。なお、急に症状が出現した場合には、すぐに受診をしましょう。

関連病院・医院

一次性頭痛「厄介な頭痛」

二次性頭痛であれば、もとの疾患が治癒すれば頭痛も改善するはずです。しかし、この一次性頭痛は原因となるようなはっきりとした疾患がないのです。怖くはないものの根治がなかなか期待できないわけですから、厄介な頭痛なのです。言い換えるならば一次性頭痛は「いかに上手に付き合うか」が大事な頭痛です。
下記に、代表的な一次性頭痛を簡単に説明します。

緊張型頭痛(「国際頭痛分類」表内の2.)

多くの方が経験する頭痛は、この頭痛だと考えられています。しかし、症状が比較的軽いからなのか、この頭痛でわざわざ受診をしようと考える人が少ないようで、実はまだまだ病態が解明されていないのがこの頭痛です。通常は、頚や肩などの筋肉のコリを伴っていることが多いのですが、謂わば「こころの緊張」が関連している方も多いようです。最初は頭痛が軽度であっても慢性化すると日常生活に支障を来すようになります。

片頭痛(「国際頭痛分類」表内の1.)

一般的に「片側性・拍動性」の頭痛とされていますが、実は両側性の方も多く、非拍動性の方もいます。日常生活に支障を来す頭痛をお持ちの方の多くには片頭痛があります。片頭痛発作が酷かったりすると、頭痛だけでなく、閃輝暗点(キラキラ・ギザギザした光が見えること)、吐き気や嘔吐、視野視力異常、耳鳴りやめまい、ときには手足の運動麻痺やしびれ、失語などの脳卒中にそっくりな症状を伴うことがあります。中等度以上の片頭痛発作があると仕事や日常生活を休まざるを得ません。鎮痛薬が効かず、片頭痛用の頓服薬が必要な方も多いです。経過とともに緊張型頭痛も合併するようになり、厄介な頭痛に変容してゆくことも稀ではありません。
一方で、専門家による治療が非常に有効なことが多い頭痛でもあります。

三叉神経・自律神経性頭痛(TACs)(「国際頭痛分類」表内の3.)

いくつかの似たような頭痛をまとめてTACsと言いますが、目の周りや頭の片側にのみ起こる頭痛です。一番有名なのは「群発頭痛」という頭痛です。群発頭痛は、目の奥や側頭部に極めて重度の頭痛が起きます。通常は15~180分程度持続し、頻度は1回/2日から8回/1日程度で、一旦、群発期が始まると毎日頭痛発作が群発するわけです。その他のTACsにはもう少し発作持続時間が短いものなどがありますが、それらは比較的稀だと考えられています。興味深いことに、TACsの多くは、頭痛と同側だけに流涙や鼻汁、発汗といった所謂「ホルネル兆候」を認めることがあります。

薬物使用過多による頭痛(薬物乱用性頭痛、MOH)(※)

「頭が痛いから薬を飲むのに、飲めば飲むほど頭痛が酷くなっていく」というような悪循環に陥ってしまった方の頭痛です。これは、上記のような一次性頭痛がある人で、鎮痛薬などの頓服薬を服用しすぎると起こってくる頭痛です。3ヶ月以上の期間に、月に10~15日以上頓服薬を服用している場合にはこの診断となります。予防薬を併用しながら乱用している頓服薬を断つというのが、現在有効な治療方法と考えられています。
(※原因は「くすりの飲みすぎ」ですから分類上は二次性頭痛(「国際頭痛分類」表内の8.)ですが、一次性頭痛がベースにあるものですのでこちらに記載しました)

これら一次性頭痛は多くの場合には「まちのお医者さん」でも十分に対処してもらえることも多いです。しかし、薬が効きにくくなってきたり、痛みが悪化してきたり、あるいは、頻度が増えて月に何度も頭痛が来たりするようであれば、早期に頭痛の専門家を受診する方が良いかもしれません。

日本頭痛学会認定頭痛専門医一覧