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頭蓋底外科のご紹介

私たちは“患者第一”の信念の下、患者さんの機能改善と長期予後の両立を目指した“患者さんにやさしい脳神経外科”を頭蓋底外科でも実践します。私たち自身や私たちの家族が患者さんと同じ病気になったときに、受けたいと思う治療を患者さん一人一人の病気の状態に合わせて提案します。このページが頭蓋底外科で治療すべき病気(以下「対象となる病気」参照)と診断され、当科を受診前の患者さんやそのご家族の不安を少しでも和らげるお役に立てれば幸いです。

頭蓋底外科とは?

頭蓋底外科を脳神経外科の立場から一言で言うと、脳の奥の方にある病気を治療するために頭蓋骨の一部を削って脳や神経機能を守りながら手術をする外科のことです(図1-4をご参照ください。図1,2では頭蓋底髄膜腫を用いて、図3,4は頭蓋咽頭腫を用いて頭蓋底外科を説明しています)。さらに頭蓋骨の一部や病気(腫瘍など)を取り除いた後に失った機能や容姿を再建したり、神経機能を温存するために控えめな手術を行い、意図的に残した腫瘍に放射線治療を行うことも含みます。ですから頭蓋底外科は複数の診療科の専門知識と技術を必要とする領域です。神戸大学では脳神経外科、耳鼻咽喉・頭頸部外科、形成外科、眼科、麻酔科、放射線腫瘍科、糖尿病・内分泌内科、小児科、病理部・病理診断科などの多診療科がそれぞれの専門分野を生かして患者さんの治療に取り組んでいます。

図1. MRI画像をもとに描いた腫瘍(髄膜腫)のイメージ
頭蓋底外科とは?

髄膜腫(矢印)は周囲の脳を強く圧迫しています(矢頭)。腫瘍は大きいだけでなく周囲が正常な脳で囲い込まれているので、正常な脳に切り込まず腫瘍だけを摘出することは通常の手術の方法では困難です。

図2. 頭蓋底(脳が入っている骨(頭蓋骨)の底となる部分)を見下ろしたイメージ
頭蓋底外科とは?

そこで、脳幹を圧排している腫瘍(矢印)を矢印の方向から開頭し、頭蓋底の骨の一部を削って(水色部分)、神経の間から摘出します。
この図では大脳、小脳、脳幹の一部を取り除き解説していますが、実際は青矢印の進路には言葉の中枢を司る脳(側頭葉)が存在しており、それをよけながら摘出することになります。

図3. MRI画像をもとに描いた腫瘍(頭蓋咽頭腫)のイメージ
頭蓋底外科とは?

頭蓋咽頭腫(赤矢印)は、視神経(①)や下垂体(②)を圧排しています。正常な脳や頭蓋骨に周囲を取り囲まれていることがわかります。

図4. 硬性内視鏡を導入した際のイメージ
頭蓋底外科とは?

そこで内視鏡(矢印)を鼻の孔から挿入して頭蓋底の骨を削り腫瘍を摘出します。内視鏡の入り口である鼻の孔は狭いですが、細長い内視鏡なら入ります。さらに内視鏡は中に入れば非常に広い範囲を照らすことができる(水色部分)ので、大切な視神経や機能を温存して摘出することが可能です。

当院の頭蓋底外科のあゆみと特色

当科の頭蓋底外科の歴史は古く、当科2代目教授として1991年に玉木紀彦教授が就任後、頭蓋底外科の研究・臨床応用が進められました。1993年から第一解剖学教室のご協力を得て、頭蓋底腫瘍の手術手技向上を目的とした本邦で最初の解剖体を用いた頭蓋底・頸椎手術手技ワークショップが開催され、その後も継続開催されています。2002年には3代目に甲村英二教授が就任。甲村教授は卓越した手術手技と手術成績で同業の脳外科医から信頼を得て、近畿圏は元より、遠くは沖縄・中四国からも学閥の垣根を超えて多くの患者さんが紹介され、治療されました。2020年9月からは第4代篠山隆司教授の指導のもと、教員それぞれが得意分野を生かして関係各科と連携して治療にあたっています。

当院の特色として耳鼻咽喉・頭頸部外科、形成外科、眼科、麻酔科、放射線腫瘍科、糖尿病・内分泌内科、小児科、病理部・病理診断科との多科連携が緊密であることが挙げられます。セクショナリズムに陥ることなく、我々が得意な開頭手術や経鼻内視鏡手術の利点・欠点をよく理解し、欠点は協力各科の得意な治療で補ってもらいながら患者さんの機能維持・改善と長期予後の両立を目指します。

対象となる病気

  • 髄膜腫(頭蓋骨内のいろいろな場所に生じます)
  • 神経鞘腫(前庭神経鞘腫、顔面神経鞘腫、三叉神経鞘腫、頸静脈孔神経症腫、など)
  • 下垂体腺腫(非機能性下垂体腺腫、プロラクチノーマ、成長ホルモン産生腫瘍など)
  • 頭蓋咽頭腫
  • 類皮腫
  • 脊索腫
  • 眼窩内腫瘍
  • 海綿状血管腫
  • 一部の脳動脈瘤
  • 様々な頭蓋骨腫瘍
  • 様々な頭蓋底悪性腫瘍(耳鼻咽喉・頭頸部外科、形成外科の先生方と協力して治療にあたります)
  • 三叉神経痛
  • 顔面けいれん

脳神経外科で提供する上記の病気に対する治療の方法

  • 開頭手術
  • 経鼻内視鏡手術
  • 開頭・経鼻内視鏡同時手術

我々自身が同じ病気になったときに、自身で受けたいと思う治療を患者さん一人一人の病気の状態に合わせて提案します。