先天性サイトメガロウイルス感染の診断のための検査

 先天性サイトメガロウイルス感染の診断は、生後3週間までに採取された出生児の尿、臍帯血、もしくは出生時の血液や唾液からサイトメガロウイルスの検出によってなされます。検出の方法としてウイルス培養同定法やPCR法がありますが、その迅速性、簡便性、正確性などからPCR法が頻用されるようになってきています。診断が生後3週間以内の尿や臍帯血、出生時の血液や唾液検体に限られている理由は、出生直後に児に感染が成立した場合と区別するためです。出生直後に感染した場合には、一旦体内で増殖し、検体がウイルス陽性になるまでに数週間かかります。生後3週間以降に採取された検体でサイトメガロウイルスの存在が証明されたとしても、先天性感染か後天性感染かの区別をつけることはできません。したがって、先天性感染が疑われた場合は迅速に、血液、尿などの検体を採取しPCR検査を行います。引き続いて、先天性感染の確定診断や症候性・無症候性の鑑別のため、血算、生化学検査、CMVIgG・IgM、CMV抗原血症などの検査に加えて、脳画像検査(頭部超音波、CT、MRI)、聴力検査(聴性脳幹反応)、および眼底検査の精査を行います。
 出生後時間が経った方に対して、後方視的診断する方法として、ガスリー検査用に出生5日前後に採取された乾燥血液や乾燥臍帯を用いてウイルスDNAを検出する方法があります。ガスリー検査用の乾燥血液を用いた場合、先天性CMV感染症であっても、陰性となることがあるので、注意を要します。

担当
神戸大学医学部附属病院 周産母子センター 森岡一朗
 
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