検査・治療
肝がんの治療法一覧
外科切除
病変部の周囲を含めて切除します。もっとも根治性が高い治療です。最近では、腹腔鏡下の治療やロボット手術が増えています。
ラジオ波焼灼療法
超音波検査で病変を確認しながら、局所麻酔下にてがんに直接針(ラジオ波針)を刺して焼灼する治療です。がんの大きさが3㎝以下かつ3個以内が適応となります。血管に近い部分や肝臓表面、横隔膜の下などは、マイクロ波を用いてより精巧に焼灼を行ったり、人工腹水・胸水を注入して他臓器損傷を防ぐようにして治療を行います。
カテーテル塞栓療法
足の付け根から肝動脈へカテーテル(細い管)を挿入し、抗がん剤と塞栓物質を注入して血流を遮断します。遮断することにより、がんへの栄養を断ち死滅させる治療法です。多数の病変を一度に治療できるメリットがあります。
薬物治療
切除が難しい肝がんで適応になります。近年、様々な治療薬が登場し選択の幅が広がってきています。他の治療と組み合わせて行うことで、効果をさらに高める工夫がされていますし、今後も創薬が進むことが期待されています。
放射線治療、陽子線治療、重粒子線治療
放射線を効率的に一点に集中させたり、他臓器への照射線量を減らす技術の進歩に伴って、他の局所治療で治療しづらいがんに対して放射線治療が選択されることが増えてきました。特に陽子線や重粒子線は隣接する他臓器への影響が少ないとされています。また、2022年4月より4㎝以下の肝細胞がんに対して、陽子線・重粒子線が保険適応となりました。
当院では、院内での放射線治療だけでなく、低侵襲がん医療センター、兵庫県立粒子線医療センター、神戸陽子線センターと連携を取って治療を行っています。肝移植
当院は兵庫県内で唯一脳死・生体肝移植を行っている施設です。
肝移植は、その他の治療では治すことのできない病状において、最後の砦となる治療です。決してその道のりはたやすいものではありませんし、様々な適応条件が存在します。当院では、肝胆膵外科とともに消化器内科肝疾患治療グループも移植医療に携わっています。消化器内科肝疾患治療グループは、肝移植までの肝不全管理を担っています。
上記のように、様々な治療法がありますので、これらをうまく選択して最適な治療法を提案できるよう、外科・放射線科との連携を取りながら治療を行っています。
検査
―肝臓の血液検査とは?―
血液の中には、肝臓の健康状態を示すサインがたくさんあります。
検査で早めに気づくことで、症状を防いだり治療を早く始められます。
定期的なチェックが、健康な肝臓を守る第一歩です。
- 項目を調べる
肝臓の働きをみる検査
- AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)
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- 基準値:13~30 (U/L)
- 肝臓のほかに心筋や骨格筋に多く存在します。これらの細胞が傷つくと、血液中に流れ出ます。
- 基準値:13~30 (U/L)
- ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)
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- 基準値:男性10~42 (U/L) 女性7~23 (U/L)
- 主に肝臓の細胞に多く存在します。ASTと同じく、細胞が傷つくと血液中に流れ出ます。ASTと合わせて肝障害の状態を評価します。
- 基準値:男性10~42 (U/L) 女性7~23 (U/L)
- ALB(アルブミン)
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- 基準値:4.1~5.1 (g/dL)
- 肝臓で作られるたんぱく質です。体の水分や栄養バランスを保つ働きがあります。
- 基準値:4.1~5.1 (g/dL)
- PT%(プロトロンビン活性)
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- 基準値:70~130 (%)
- 血液を固めるためのタンパク質(凝固因子)はほとんどが肝臓で作られています。PTはそのタンパク質をつくる力をみる検査です。肝臓の機能が低下すると値が低くなることがあります。
- 基準値:70~130 (%)
胆汁の流れをみる検査
- ALP(アルカリフォスファターゼ)
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- 基準値:38~113 (U/L)
- 主に肝臓、胆管、骨、胎盤などに多く分布し、これらの臓器の疾患で高値となります。
- 基準値:38~113 (U/L)
- γ-GTP(γ-グルタミルトランスペプチターゼ)
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- 基準値:男性13~64 (U/L) 女性9~32 (U/L)
- 肝臓や胆管に存在します。お酒や脂肪のとりすぎで高くなることがあります。
- 基準値:男性13~64 (U/L) 女性9~32 (U/L)
- T-Bil(総ビリルビン)
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- 基準値:0.4~1.5 (mg/dL)
- 古くなった赤血球の分解によって作られる黄色の色素です。体内を循環し肝臓で処理され、体の外へ排出されます。排出までの一連の経路が正常に機能しているかを調べます。
- 基準値:0.4~1.5 (mg/dL)
解毒の検査
- NH3(アンモニア)
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- 基準値:12~66 (µg/dL)
- アンモニアは尿素に合成されてから体外に排出されますが、肝臓の機能低下や尿素に合成する力が弱くなると血液中に増加します。体にたまると意識障害を引き起こすことがあります。
- 基準値:12~66 (µg/dL)
肝硬変の指標となる検査
- PLT(血小板数)
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- 基準値:158~348 (×10³/μL)
- 血を固める働きをします。この血小板を増やすホルモン(トロンボポエチン)は肝臓で作られています。そのため、肝臓の機能が低下すると血小板の数が減ることがあります。
- 基準値:158~348 (×10³/μL)
B型肝炎ウイルスの検査
- HBs抗原
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- 基準値:0.005 (IU/mL)未満
- 「B型肝炎ウイルスの表面のたんぱく質」です。これが陽性だと、ウイルスが体の中にいる、つまり感染していることを意味します。
- 基準値:0.005 (IU/mL)未満
- HBs抗体
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- 基準値:10(mIU/mL)未満
- 「B型肝炎ウイルスをやっつけるために体が作った抗体」です。これがあると、過去に感染して治ったか、ワクチンで免疫ができている状態です。
- 基準値:10(mIU/mL)未満
- HBc抗体
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- 基準値:1.0 (C.O.I.)未満
- ウイルスの中身に対してできる抗体で、陽性だと『過去に一度でも感染したことがある』という意味になります。ワクチンでは出てきません。
- 基準値:1.0 (C.O.I.)未満
- HBV-DNA
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- 基準値:1.0 (LogIU/mL)未満
- B型肝炎ウイルスそのものの量を調べます。検出されると、今もウイルスが体の中にいて、感染が続いているという意味です。治療が必要かどうか、治療の効果がでているかを判断する大切な検査です。
- 基準値:1.0 (LogIU/mL)未満
C型肝炎ウイルスの検査
- HCV抗体
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- 基準値:1.0 (C.O.I.)未満
- 「C型肝炎ウイルスを見つけたときに、体が作る抗体」です。陽性になると、過去にウイルスが体に入ったことがあるという意味です。今も感染しているかどうかは、この検査だけでは分かりません。そこで次に「HCV-RNA」を調べます。
- 基準値:1.0 (C.O.I.)未満
- HCV-RNA
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- 基準値:1.2 (LogIU/mL)未満
- C型肝炎ウイルスそのものの量を調べます。検出されると、今もウイルスが体の中にいて、感染が続いているという意味です。治療が必要かどうか、治療の効果が出ているかを判断する大切な検査です。
- 基準値:1.2 (LogIU/mL)未満
がんの早期発見につながる検査
- AFP(α-フェトプロテイン)
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- 基準値:10 (ng/mL)以下
- 肝臓がんがあるときに高くなりますが、肝硬変や肝炎などでも高くなることがあります。また、AFPを産生してしまうがんや、妊娠でも高くなることがあります。
- 基準値:10 (ng/mL)以下
- PIVKA-II
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- 基準値:40 (mAU/mL)未満
- ビタミンKの働きがうまくいかないとき、または肝臓がんがあるときに高くなります。AFPと一緒に調べることで、肝がんの早期発見に役立ちます。
- 基準値:40 (mAU/mL)未満
- CEA(がん胎児性抗原)
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- 基準値:5(ng/mL)以下
- 大腸がんや胃がん、肺がんなどで高くなることがあります。ただし、喫煙や炎症でも高くなることがあるため、数値の変化をみることが大切です。
- 基準値:5(ng/mL)以下
- CA19-9
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- 基準値:37(U/mL)以下
- 消化管や膵臓・胆道の細胞の表面にある糖のような物質です。がん細胞が増えると、この物質が血液中に多く出てきます。 ただし、胆汁の流れが悪い(胆石や胆のう炎など)場合にも、血液中に出やすくなって一時的に高くなることがあります。
- 基準値:37(U/mL)以下
薬物治療
B型ウイルス性肝炎
B型ウイルス性肝炎は、B型肝炎ウイルスが血液・体液を介して感染することにより起こる肝臓の病気です。B型肝炎ウイルスが肝臓の細胞に入り込むと、異物と判断されて、体の中の免疫の仕組みが働き、免疫細胞がウイルスだけでなく肝細胞ごと攻撃します。この攻撃によって肝細胞が壊れて、肝臓全体で炎症が起こり、B型肝炎となります。
B型肝炎に対する薬の一つとして、核酸アナログ製剤があります。核酸アナログ製剤は、B型肝炎ウイルスの遺伝子がつくられるのを抑え、B型肝炎ウイルスが体の中で増えるのを防ぎます。
- 核酸アナログ製剤の注意事項
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- 核酸アナログ製剤を服用中に気になる症状があらわれた場合、必ず医師または薬剤師に相談しましょう。
- 核酸アナログ製剤は基本的に、医師の指示に従った期間、服用を継続する必要のあるお薬です。
- 核酸アナログ製剤を服用中に、体調が良くなった、または気になる症状がある等の理由で、自己判断で服用を中止したり、量を加減したりすると、病気が悪化したり、薬が効きにくくなったりするおそれがあります。必ず医師の指示どおりに飲み続けることが重要です。
- お薬の飲み忘れが続いた場合も同様に、病気が悪化したり、薬が効きにくくなったりするおそれがあります。アラームをセットするなど、飲み忘れを防止し、正しく服用を続けましょう。
- 他の医療機関を受診する時には、医療者に内服している薬の内容を伝えましょう。
- 病院に行かないときも、突然のけがや病気に備えて、いつもお薬手帳を持ち歩くようにしましょう。
C型ウイルス性肝炎
C型ウイルス性肝炎は、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染により起こる肝臓の病気です。一度感染すると慢性化しやすいのが特徴です。
C型肝炎の治療として、現在はインターフェロンを使用しないインターフェロンフリー治療が中心となっており、直接作用型抗ウイルス薬(DAA)と呼ばれる飲み薬を使用します。DAAは、C型肝炎ウイルスが肝臓の中で増えようとする際に必要な核酸という物質が作られるのを邪魔するなどのはたらきにより、C型肝炎ウイルスの増殖を抑えます。
- 直接作用型抗ウイルス薬(DAA)の注意事項
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- お薬を服用中に気になる症状があらわれた場合、必ず医師または薬剤師に相談しましょう。
- DAAは、お薬ごとに決められた服用期間(8週または12週)、服用を継続する必要のあるお薬です。
- DAAを服用中に、体調が良くなった、または気になる症状がある等の理由で、自己判断で服用を中止したり、量を加減したりすると、病気が悪化したり、薬が効きにくくなったりするおそれがあります。必ず医師や薬剤師の指示どおりに飲み続けることが重要です。
- お薬の飲み忘れが続いた場合も同様に、病気が悪化したり、薬が効きにくくなったりするおそれがあります。アラームをセットするなど、飲み忘れを防止し、正しく服用を続けましょう。
- 他の疾患で使用している薬や健康食品が、C型肝炎の薬の効果に影響を与える場合があります。また、C型肝炎の薬が他疾患の薬の効果に影響することもあります。副作用を避け、適切な治療効果を得るために、併用薬については医師や薬剤師の指導をしっかり守ってください。
- 他の医療機関を受診する時には、医療者に内服している薬の内容を伝えましょう。
- 病院に行かないときも、突然のけがや病気に備えて、いつもお薬手帳を持ち歩くようにしましょう。
リハビリテーション
―からだを動かすことで「筋力・体力・生活の質」を守る―
リハビリテーションの効果
これまでの報告では、軽~中等度の肝疾患(Child-Pugh分類 A~B)の方において、有酸素運動(ウォーキングなど)と筋力トレーニングを組み合わせることで、次のような改善が示されています。
- ✓ 運動耐容能(息切れ・疲れにくさ)の向上
- ✓ 筋肉量や筋力の維持・改善(筋力低下の予防)
- ✓ 生活の質(QOL)の改善
また、手術(肝切除など)や肝移植を控えている方では、術前から運動や栄養を取り入れる「プレハビリテーション」により、術後の合併症減少や回復促進も期待されています。
運動を安全に行うための注意点
運動を開始する前に、以下の点をご確認ください。いずれかに該当する場合は、どの程度の運動をしてもよいか、主治医へご相談いただくことをお勧めします。全身の状態や合併症の程度に応じて、無理のない範囲で個別に運動内容を調整する必要があります。
- 食道・胃の静脈瘤がある方(息こらえや過度のいきみは避ける必要があります)
- 高度の腹水や浮腫がある方(呼吸困難・転倒・皮膚トラブルに注意が必要です)
- 肝性脳症の症状がある方(意識状態や転倒リスクの確認が必要です)
- 出血しやすい方(高負荷の筋力トレーニングは控える必要があります)
運動の目安
| 有酸素運動 | ウォーキングやジョギングなどの運動を週合計約150分(例:1日30分×週5日)を目標に行います。運動の強さ(速度)は、“少し息切れはするが快適に会話ができる”状態を目安としてください。 |
|---|---|
| 筋力トレーニング | 脚・腕・体幹など主要筋群を中心に週2~3回、各運動10~15回を目標として行います。力をいれるときに “息をはきながら” 呼吸を意識して行いましょう。 |
当院でのリハビリテーションの取り組み
患者さんの早期の機能回復と円滑な社会復帰を目指し、各診療科と連携して入院中の急性期リハビリテーションを実施しています。退院後もリハビリテーションが必要な方には、患者支援センターを通じて、地域医療機関で円滑に継続できるよう支援しています。また当センターでは、「肝疾患に対する運動療法」の普及啓発や研究活動にも取り組み、より安全で効果的なリハビリテーションの提供を目指しています。
- 「動くこと」も治療の一部です
- 体力低下を防ぎ、より良い日常生活を続けるために、できる範囲から運動を習慣化していきましょう。
食事について
―肝臓を守る食事の基本は、「栄養バランスの整った食事」です―
規則正しく、主食・主菜・副菜を揃える
肝臓は、胃や腸から吸収された栄養素を体内で利用できる形に作り変える(代謝)役割があります。代謝には様々なビタミンやミネラルが不可欠です。特定の栄養素だけを摂りすぎたり、不足したりすると、肝臓での代謝機能が円滑に行われなくなります。
- 栄養バランスの整った食事とは
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- 3食を規則正しく食べましょう。
- 毎食、「主食(ごはん、パンなど)」「主菜(肉、魚、卵、大豆製品など)」「副菜(野菜、きのこ、海藻など)」が揃ったバランスの良い食事を心がけましょう。
- 1日のどこかで、油脂類、乳製品、果物を適度に摂りましょう。

アルコールと嗜好品
肝臓の負担を減らすためには、日々の飲み物にも配慮が必要です。
- アルコールについて
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肝臓疾患の治療において、アルコールは基本的に断酒が望ましいです。
- アルコールは肝臓で分解される際に大きな負担をかけ、病状を悪化させる最大の原因となります。
- 肝疾患がある場合、種類や量に関わらず、医師から許可がない限りは飲酒を控えましょう。
- 嗜好品(ジュース、お菓子など)について
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アルコール以外の甘い飲み物や高カロリーな嗜好品も、肝臓に負担をかけることがあります。
- ジュースや清涼飲料水: 多くの糖分を含んでおり、摂りすぎると脂肪肝の原因になります。できるだけ水、お茶などを選ぶようにしましょう。
- 甘いお菓子や菓子パン: 糖質や脂質が多く、カロリーオーバーになりがちです。これらも脂肪肝や肥満につながります。

