肝疾患とは
肝臓は、人の体の中で重要な働きをもつ臓器の一つです。
肝臓は高い予備力と再生力を持っているため、多少の障害では自覚症状が現れにくい臓器でもあります。そのため、病気に気が付くのが遅れる可能性が高く「沈黙の臓器」と呼ばれています。
病態別
急性肝炎
主に肝炎ウイルスの感染が原因でおきる急性の肝機能障害を呈する病気です。
慢性肝炎
急性肝炎で治りきらなかった場合や徐々に発病して行く場合があり、これが慢性肝炎となります。肝炎が6ヶ月以上持続していると、慢性肝炎と診断されます。慢性肝炎は、特に自覚症状がほとんどないまま約20~30年で肝硬変や肝がんへと病気が進んでいきます。病気が進んでしまうと治療も難しくなるため、できる限り早めに肝炎ウイルス検査を行い、感染していないか確認することが大切です。
肝硬変
肝炎などによる障害と、肝臓の再生を繰り返すうちに線維化が進み、肝臓が固くなっていきます。肝臓の線維化が進み、硬くなった状態が肝硬変であり、肝臓の機能が低下しています。
肝がん
肝臓のがん「原発性肝がん」と、ほかの臓器に発生したがんが肝臓に転移した「転移性肝がん」があります。原発性肝がんは、「肝細胞がん」と「肝内胆管がん」に分けられます。
病因別
B型ウイルス性肝炎
B型肝炎ウイルス(HBV)が血液・体液を介した感染により起こる肝臓の病気です。母子感染と成人してからの感染があります。ウイルスに感染した肝細胞の免疫反応によって、一部の人は急性肝炎になります。慢性肝炎の状態になると現存の治療ではウイルスを抑えることはできますが、完全にウイルスを消失させる事が難しい肝炎です。
C型ウイルス性肝炎
C型肝炎ウイルス(HCV)の感染により起こる肝臓の病気です。一度感染すると慢性化しやすいのが特徴です。近年経口抗ウイルス薬の登場により、安全で効果的な治療が可能になりました。
その他のウイルス性肝炎(A型・E型)
A型やE型は経口感染であり、ウイルスに汚染された水、食物を介して感染します。E型肝炎は、ウイルスに汚染され加熱調理が不十分な肉食(豚肉、猪肉、鹿肉)など感染が成立することから注意が必要です。肝硬変や肝がんに進行することはありません。しかし、まれに劇症化や慢性化することがあります。
代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)
過剰飲酒がなく代謝異常が生じている状態です。過体重や肥満、2型糖尿病がある場合のほかに、体重が基準範囲下でも、ほかの条件が複数当てはまると該当します。MASLDに該当して、かつ肝炎が生じている場合は、代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)です。(※2024年名称・分類変更)
アルコール関連肝疾患(ALD)
長期にわたるアルコールの過剰摂取により起こる肝障害のことです。お酒に含まれるアルコールは肝臓内で分解され無毒化されますが、大量に飲み続けると飲む量に比較して有害物質の分解が追いつかなくなり、肝臓は障害を受けます。(※2024年名称・分類変更)
薬物性肝障害(DILI)
医療機関で処方された医薬品やドラッグストアなどで購入できる医薬品、漢方薬、サプリメント、健康食品などの副作用が原因で起こる肝臓の炎症です。
指定難病
※指定難病は、難病法に定められた難病のうち、医療費助成の対象となる難病のことです。
自己免疫性肝炎(AIH)
自らの肝細胞を非自己、つまり異物として勘違いし攻撃してしまう肝疾患です。適切な治療を行わず炎症が進行すると、最終的に肝硬変や肝不全になることがあります
原発性胆汁性胆管炎(PBC)
肝臓内の細い胆管を体内の免疫が破壊してしまう胆汁うっ滞性肝疾患です。胆管が破壊されると胆汁が正常に流れなくなり、その場にたまってしまい、炎症が生じます。適切な治療を行わず炎症が進行すると、最終的に肝硬変や肝不全になることがあります。(※2016年名称変更)
原発性硬化性胆管炎(PSC)
肝内外の胆管に炎症が生じ、その結果、胆管の狭窄閉塞を起こし、胆汁が流れなくなる進行性の胆汁うっ滞疾患で、適切な治療を行わず炎症が進行すると、最終的には肝硬変や肝不全になることがあります。
特発性門脈圧亢進症
肝臓や門脈に特別な原因となるべき疾患が認められないにも関わらず門脈の圧が上昇し、食道静脈瘤の発生や脾臓の腫大、貧血などの症状を呈する原因不明の病気です。
バッド・キアリ症候群
肝静脈(肝臓から出る静脈)、あるいは肝部下大静脈(肝静脈から心臓につながる静脈)が閉塞したり狭窄することにより、肝臓からでる血液の流れが悪くなり、門脈圧が上昇し、門脈圧亢進等に至る症候群です。
Wilson病(ウィルソン病)
体に必要な微量金属である「銅」がうまく排出されず、肝臓や脳、目など全身の臓器にたまって障害を起こす遺伝性の病気です。肝臓に銅がたまると、黄疸、肝機能障害、肝硬変などが起こります。早期発見・治療で、普通の生活を送ることができますが、治療をやめると病状が悪化するため、継続した治療が大切です。
原発性門外門脈閉塞症(EHPO)
肝臓の外にある門脈(腸から肝臓に栄養や血液を運ぶ大きな血管)がつまってしまう病気です。門脈がつまることで血液の流れが悪くなり、門脈圧が上がります。これにより、腹水が出てきたり、食道静脈瘤ができてきて、場合によっては破裂したりすることがあります。これらの合併症を適切に治療することが重要です。

