当科における検査・治療

気管支鏡検査における新技術

気管支鏡検査は難治性気管支ぜんそくの治療や肺癌の診断に使用されます。近年様々な新しい方法や光学機器が開発されつつあります。当院では機器に精通した医師の指導のもと、積極的に新たな技術を導入し、先進治療や診断精度の向上に勤めています。以下に当院で使用している機器や方法についてご紹介します。

 

①クライオ(凍結)生検 
クライオ生検は、気管支鏡検査で行う生検方法の一つで、クライオプローブという凍結凝固装置を用いて組織の一部を凍らせて、検体を採取します。プローブを病変に接触させて組織を凍らせて生検をするので、従来の気管支鏡検査で行う肺生検よりも大きな検体を採取することができ、組織の挫滅が少ないことが特徴です。主に、びまん性肺疾患(両肺もしくは片肺の肺に広がる病気で原因は多岐にわたる)の場合に、病気の診断をして、治療方針を決定するために行います。従来の経気管支肺生検では、採取できる組織の大きさが限られており、組織が小さいために診断が難しかった病気も、クライオ生検を用いることで、診断できる可能性が向上しています。これまで気管支鏡検査で診断がつかない病気の場合、手術で生検を行うこともありましたが、クライオ生検で診断がつくことが期待されます。当院でも、クライオ生検を導入し、びまん性肺疾患の診断に積極的に用いています。

②気管支サーモプラスティ
BT近年、日本を含めた先進国において気管支喘息の罹患率は増加傾向にあります。これまでの治療法は吸入薬や内服薬など薬物治療が中心で、多くの患者さんは、吸入ステロイドや長時間作用性β2刺激薬などの治療でコントロール可能でした。しかし一方で、高用量の吸入ステロイドを適切に使用しても喘息発作を起こしてしまう患者さんがどうしてもおられました。そこで、これまでの薬物療法とは異なる治療方法として、気管支サーモプラスティ(Bronchial Thermoplasty:BT)という方法が注目されています。
重症喘息の患者さんでは気管支平滑筋が発達(肥厚)した状態になっています。気管支サーモプラスティでは、気管支鏡を用いて専用のプローブを気管に挿入し、その肥厚した気管支平滑筋組織を高周波電流によって65℃で10秒間温めて焼灼するというものです。この処置によって喘息発作が抑えられ、救急外来受診する機会が減るなどの効果が得られています。喘息の薬物治療だけではコントロール不十分であった患者さんにとって、新たな治療の選択肢のひとつと期待されています。

③仮想気管支鏡ナビゲーションシステム
3cm以下の肺末梢小型病変の診断は難しく、HRCT(高分解能CT)で病変の関与気管支を一生懸命読影しても、病変にたどりつけない場合があります。 当科では肺末梢小型病変に対する気管支鏡検査に仮想ナビゲーションシステムを導入しています。
仮想気管支鏡ナビゲーションシステム(Bf-NAVI, オリンパスメディカル)は、検査前にHRCTを再構築して仮想気管支鏡を作成し、病変までのルートを作成します。後は気管支鏡検査時にナビゲーションの画像に従ってカメラを操作します。これにより診断率の向上と検査時間の短縮が期待できます。

④ガイドシース併用気管支腔内超音波断層法(EBUS-GS)
肺末梢病変に生検鉗子などが到達したかの確認は、以前からX線透視を用いて行われてきました。しかし、この方法では縦隔や横隔膜に隠れる病変、小型病変、スリガラス陰影などの位置確認は、困難な場合が多々あります。ガイドシース併用気管支腔内超音波断層法(EBUS-GS)は、シースをかぶせた細径超音波プローブを気管支鏡のワーキングチャネルより入れ、病変の内部に挿入します。病変に到達したことを示すEBUS像を得られたら、超音波プローブを抜去し、留置したシースから生検・擦過などの検体採取を繰り返し行うことが可能です。この手法を用いることで、適切な場所から繰り返し検体を採取することが可能となるため、診断率が上昇します。当科では、多くの肺末梢病変に対し、EBUS-GSを標準使用して検査を行っています。

⑤コンベックス走査式超音波気管支鏡(CP-EBUS)
縦隔肺門リンパ節や縦隔腫瘍などの気管・気管支周囲の病変に対しては、コンベックス走査式超音波気管支鏡(CP-EBUS)を導入しています.CP-EBUSは気管支鏡と超音波が一体となった内視鏡です。CP-EBUSを使用することで、経気管支的に超音波で病変をリアルタイムに確認しながら、穿刺生検が可能となりました。超音波機能はBモードの他、カラードップラーモードも備えており、穿刺ルート上の血管を避けて、正確に病変から検体が採取できるため、安全で確実な穿刺が可能です。適応病変は、気管・気管支周囲のリンパ節や腫瘍で、肺癌などの悪性疾患だけでなく、サルコイドーシスや結核などの良性疾患も高率に診断することができます。

 

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肺がん遺伝子変異の検索

 肺がん治療において、ドライバー遺伝子を標的とする分子標的治療薬は重要な役割を果たしています。従来の殺細胞性薬剤ではなく、特定の遺伝子変異を持つ患者さんに、分子標的治療薬を選択的に使用することで、高い効果が得られます。その中で代表的なものではEGFR遺伝子変異を有する患者さんに対するEGFRチロシンキナーゼ阻害剤が挙げられます。現在、特に非小細胞肺癌では、多くのドライバー遺伝子が発見され、その遺伝子変異に対する治療薬の数も増えています。一つ一つドライバー遺伝子を検索するだけでなく、がん遺伝子パネルを用いて複数の遺伝子変異を一度の検査で調べる方法(遺伝子パネル検査)があります。ドライバー遺伝子変異を効率よく検索し、それに対する個別化治療を行うため、当院でも肺がん遺伝子変異の検索およびがんゲノム医療に積極的に取り組んでいます。当院では、厚生労働省より「がんゲノム医療拠点病院」に指定され、中核拠点病院である国立がん研究センター中央病院と連携し、がん遺伝子パネル検査を実施しています。
(当院がんゲノム医療外来HP)

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局所麻酔下胸腔鏡検査

胸腔鏡胸腔検査近年石綿関連疾患である悪性胸膜中皮腫が社会問題となっており、今後急速に患者数が増加すると考えられています。
当科ではこの悪性胸膜中皮腫が疑われる患者さまや、原因不明の胸水の原因精査のため、局所麻酔下で行う胸腔鏡検査を積極的に行っています。
この検査は、胸水をドレナージ(チューブを挿入して水を抜くこと)する際にあける孔を利用して簡便かつ低侵襲に行え、また胸膜を観察しながら病変部を狙って組織を採取できるという利点があります。
石綿暴露歴があり胸水を指摘された方や原因不明の胸水で診断がつかない患者さまは、この胸腔鏡検査の適応について当科にご相談下さい。

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