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頭部外傷

私たちの施設は3次救急病院であり、救急部と協力し、重症頭部外傷をはじめとして様々な頭部外傷患者を診察・治療しています。重症の急性頭部外傷患者は、まず呼吸管理、循環管理を行ない、全身状態を安定させた後、脳損傷の管理を行ないます。頭部外傷にはさまざまな発生機序がありますが、脳実質の損傷の有無で回復の程度が変わります。当科では、病態にあわせて、外科的治療のみならず、投薬・全身管理による保存的治療を行なっています。また、刻々と変化する病態を把握するために、頭蓋内圧センサーなどのさまざまなモニタリングを用い、適切な治療を行なうよう努めています。慢性期ではリハビリテーションを中心に、地域の病院と連携して治療にあたる体制を整えています。

脳は、頭皮の下の筋肉や脂肪のみならず、固い頭蓋骨やさらにその内側にある、硬膜、くも膜、軟膜と、外から順にさまざまな組織で包まれ保護されています。

頭部外傷

受傷状況・形態により、これらの種々の層や部位で障害が生じますが、直接的あるいは出血や組織の腫れにより、脳に圧迫や障害がおよぶことで、意識障害や運動麻痺等の神経症状を呈し、ひいては深部にある脳幹に損傷が生じると、死に至ることとなります。
主に、損傷や血腫の存在部位に応じて、診断名が定まります。

代表的かつ重大な疾患として、以下のものがあります。

外傷性脳実質損傷 脳挫傷、外傷性脳内血腫
び慢性軸索損傷
外傷性頭蓋内血腫 急性硬膜外血腫
急性硬膜下血腫
外傷性くも膜下出血
慢性硬膜下血腫
頭蓋骨骨折 頭蓋骨陥没骨折
頭蓋底骨折

以下に、それぞれの疾患について解説いたします。

外傷性脳実質損傷

脳挫傷、外傷性脳内血腫
脳自体の挫滅が限局性に見られる状態です。挫滅により脳内で出血し、血腫をつくることもあります。挫滅創内では細胞の自己融解が起こり、最終的には液化、空洞化します。時間経過とともに挫滅創周囲に著明な脳浮腫が形成され、24~48時間後に浮腫は著明となり、これが脳挫傷をさらに悪化させます。このため、脳圧降下剤などを用いて脳浮腫を軽減させるように努めますが、それでも悪化するようであれば開頭減圧術や血腫除去術などの外科的治療を行ないます。
び慢性軸索損傷
頭部外傷直後より昏睡状態が続いているにもかかわらず、CTなどで有意な頭蓋内占拠性病変などが見られないときに診断されるものです。脳の神経細胞(軸索)レベルでの広範囲の線維断裂により、機能障害をきたすと考えられています。受傷機転は交通事故などにより、回転性・剪断性の力が働いた時に起こることが多いとされています。基本的に、投薬による保存的治療・管理を行ないます。

外傷性頭蓋内血腫

急性頭蓋内血腫は、硬膜外、硬膜下、くも膜下、脳内など、血腫の発生・存在部位によって分類されています。脳内血腫は上記の通り、脳挫傷に伴って起こることが多く、以下には脳実質外の頭蓋内血腫について説明いたします。

急性硬膜外血腫
急性に硬膜の外側(頭蓋骨の内側)に生じた血腫です。頭蓋骨線状骨折や陥没骨折に伴うことが多いですが、骨折なく起こることもあります。骨折により主に硬膜の動脈を損傷して、そこから勢いよく出血することによります。とくに注意すべき点として、受傷時は意識がはっきりしていても、その後、頭痛、嘔吐、不穏、痙攣などの症状とともに、急激な意識障害の出現・進行を呈することがあります(lucid interval)。もちろん、受傷の程度が強ければ、受傷時から意識が低下していることもあります。脳実質の損傷が少なければ、速やかに適切に治療を行うことで回復が期待できますが、進行が著しい場合や対処が遅れると、二次的に急速に不可逆的脳損傷が起こり、後遺症を残すことや、救命困難となる場合があります。
急性硬膜外血腫
急性硬膜下血腫
急性に硬膜と脳との間に出血がおこり、血腫となった状態です。回転性の加速度により脳の移動が起こり、脳表の架橋静脈が破綻して出血することが多いです。高齢者の場合は比較的軽度の外傷(転倒による頭部打撲)などでも起こることがあります。受傷直後より意識障害を伴うことが多く、救命し得ても、硬膜外血腫に比べて神経学的予後や経過が不良な傾向があります。血腫の量が少ない場合は、投薬による治療のみで経過を見ることもありますが、血腫量が多く、脳への圧迫が強い場合は開頭減圧術、血腫除去術などの外科的治療を行ないます。
急性硬膜下血腫
外傷性くも膜下出血
硬膜と脳との間にゆっくり(通常3週~数ヶ月)と液体状の血腫が貯留する病気で、軽微な頭部外傷に由来することが多い。しかし、外傷などが無くとも発生することもあり、本症の発生に関しては現在も不明な点が多いです。乳幼児と高齢者に多く発生します。ゆっくりと進行するため、最初は殆ど症状が出ず、症状が出たときにはかなりの血腫が溜まっていることが多いです。治療は基本的に穿頭血腫除去術などの外科的治療で、血腫を除去することですが、除去しても再度貯留する場合もあります。
外傷性くも膜下出血
脳表のくも膜と脳実質との間に出血を起こした場合、くも膜下出血といいますが、外傷によりこの部分に出血を起こしたものを外傷性くも膜下出血とよびます。外傷性くも膜下出血のみでは外科的治療の対象にはならず、基本的には薬による治療を行います。
慢性硬膜下血腫

本頁の他の外傷急性期の経過と異なり、脳と硬膜との間にゆっくりと(2週間~3ヶ月間程度かけて)液体状の血腫が貯留する病気です。通常、軽微な頭部外傷に由来することが多いですが、はっきりとした外傷がなくとも発生することもあり、本症の詳細な原因に関しては現在も不明な点があります。

乳幼児やとくに高齢者に多く発生します。典型的には、転倒などで軽度の頭部打撲をされ、その直後には大きな問題がないものの、2週間~3ヶ月間ほど後に、頭痛や悪心、認知症(の出現や進行)、片麻痺(ときに両側の麻痺)やこれに伴う歩行障害などが明らかとなり、診断に至ります。症状が出たときにはかなりの血腫が溜まっていることが多いです。放置すれば死に至ることもあります。

治療は、基本的に局所麻酔にて穿頭(頭蓋骨に小さな穴を開ける)し、血腫を除去する外科的処置を行ないますが、除去しても再度貯留する場合もあります。一般的には、脳を圧迫する血腫により症状がもたらされ、脳自体には障害がないため、適切なタイミングで治療が施されれば、症状は回復します。このため、治療可能な認知症としての特徴を有します。

頭部外傷

頭蓋骨骨折

頭蓋骨陥没骨折

強い外力が加わり、頭蓋骨が陥没して骨折する状態です。陥没が小さければ保存的に治療することもありますが、

  • 美容的に問題がある場合
  • 硬膜の損傷を伴う場合
  • 静脈洞など重要な血管や組織を圧迫している場合
  • 頭蓋内血腫を合併している場合
などには手術にて修復を行ないます。なお、陥没の程度に関わらず、開放性(脳組織が外部と交通・露出している状態)でも、手術の適応となります。
頭蓋底骨折
頭蓋底部に強い外力が働いた場合に生じます。髄液鼻漏、髄液耳漏、耳出血、眼窩周囲の皮下出血や、脳神経麻痺などの症状があった場合に、頭蓋底骨折を疑います。保存的加療を行なうことが多いですが、髄液漏が持続し頭蓋内感染が危惧される場合などには、修復術を考慮します。

上記は代表的疾患と一般的解説であり、その他、個々の状態・症例に応じて、適宜専門的加療・対処を行ないます。