研究

胆膵疾患グループ

我々胆膵グループは日々の臨床の中で生じた疑問をもとにして臨床で役に立つ臨床および基礎研究を行う事を心がけています。

基礎研究

膵癌のバイオマーカー探索

バイオマーカー探索には、血液、尿、唾液、組織など多種多様な生体試料が検体として使用されます。また、検体中の遺伝子、タンパク、代謝物など様々なレベルの生体分子が探索の対象になります。当科では、主に、膵がん患者さんの血液中の代謝物を探索ターゲットとして研究に取り組んできました。研究究成果は以下の通り論文発表しています。

Kobayashi T, et al. Biomarkers Prev. 2013 Apr;22(4):571-9.
Sakai A, et al. Biomark Med. 2016 Jun;10(6):577-86.
Hirata Y, et al. Clin Chim Acta. 2017 Feb 16;468:98-104.
Nakagawa T, et al. Cancer Sci. 2018 May;109(5):1672-1681.

アポリポ蛋白A2はHDLコレステロールの一部を構成するたんぱく質です。国立がん研究センター(本田班)を中心とした研究で、このたんぱく質の末端形態によって5つの型(アイソフォーム)があることが判明し、特にそのうち一つの型は、膵がんのステージI・IIであっても高率に異常をきたすことが明らかになりました。当科では国立がん研究センター(本田班)と共同研究を行い、このアポリポ蛋白A2アイソフォームが実際の検診の場で有効かどうかを実証するための研究(注1)を世界で初めて実施しています。

(注1. 現在行っているのは、有効性実証よりも前段階の臨床研究で、登録は既に終了しています。本研究は、AMED革新がん「膵がん検診の効率を目指した血液バイオマーカーの実用化研究」(研究代表 本田一文)の支援を受けて行われました。)

自己免疫性膵炎の自己抗原の発見

自己免疫性膵炎の自己抗原の発見

自己免疫性膵炎は日本で確立された新しい疾患ですが、膵臓の炎症と線維化により糖尿病を引き起こしたり、膵がんと誤られて手術されたりすることが問題となっています。この病気は、自分の免疫(自己抗体)が誤って自身の膵臓を攻撃してしまうことが原因と考えられてきましたが、膵臓の中のどの物質を攻撃しているかは、多くの研究者が長年探していたにもかかわらず不明でした。この原因物質(自己抗原)を探索するために、自己免疫性膵炎患者の血液から抗体を抽出し、マウスに投与しました。その結果、自己抗体が、自身の膵臓に存在するラミニン511という細胞外マトリックス(細胞外に存在して身体の構造を支える物質)のタンパク質を誤って攻撃していることを発見しました。これにより、ラミニン511が自己免疫性膵炎の病因であることが確認されました。今後、ラミニン511に対する自己抗体を測定することが、自己免疫性膵炎の確定診断に有用となり、この発見がより副作用の少ない新たな治療開発の礎になっていくと考えられます。

本研究は児玉教授の京都時代の業績ですが、今後も血清などを利用して、引き続き共同研究として継続していく予定です。

自己免疫性膵炎の自己抗原の発見

主な研究内容

膵臓

  • 悪性遠位胆管狭窄例に対する新規金属ステントの有効性検討(多施設共同前向き研究Evolution)
  • メタボロミクスを用いた膵がんの診断的バイオマーカー探索と実用化研究
  • アポリポ蛋白A2アイソフォームによる膵がん検診の実用化研究
  • 微小膵癌の診断法の検討
  • 膵がんの4大遺伝子変異と予後に関する前向き研究
  • 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)に対する細胞診の有効性検討
  • 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)における悪性化予測因子の探索
  • 超音波内視鏡下穿刺吸引生検法における22G Franseen針と20G側溝付き針による自己免疫性膵炎の病理組織学的検討 -多施設共同前向き無作為化比較試験-
  • 自己免疫性膵炎における再燃予測因子の検討
  • Pancreatic fluid collectionに対する内視鏡的アプローチを軸とした治療戦略についての観察研究

胆道

  • 消化管再建術後の切除不能悪性胆道閉塞症例に対する超音波内視鏡下胆管ドレナージの有用性を評価する多施設共同前向き登録試験
  • 切除不能中下部悪性胆道狭窄症例による閉塞性黄疸に対する低axial force胆管金属ステント留置の有用性と安全性を検討する多施設共同前向き試験
  • 切除不能肝門部悪性胆道狭窄症例による閉塞性黄疸に対するPartial Stent-in-stent専用胆管金属ステントの有用性と安全性を検討する多施設共同前向き研究
  • 経乳頭的アプローチ困難な胆道閉塞を対象とした超音波内視鏡下のドレナージの後ろ向き観察研究
  • 肝門部領域胆管癌に対するインサイドステントの検討
  • 十二指腸乳頭部腫瘍に対する内視鏡的乳頭切除術の検討
  • ERCP胆管挿管困難例に対する新規カテーテルの有効性検討
  • ERCP後膵炎の予測因子探索

学内共同研究

  • 超音波内視鏡下穿刺吸引術(EUSFNA)を行った膵癌患者の前向きコホート研究 (肝胆膵外科、病理診断科、腫瘍内科)
  • 糖尿病増悪症例におけるBMI変化と膵癌診断に関する前向き観察研究(糖尿病内分泌内科)
  • 膵癌、自己免疫性膵炎における画像所見による腫瘤内線維化予測(放射線診断学分野)