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入局をお考えの先生方へ

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大学院の紹介

教授(久保亮治)からのメッセージ

あなたもclinician scientistとしての皮膚科診療と皮膚研究への第一歩を踏み出してみませんか。大学院は、その第一歩を踏み出すための、研究の世界への入口です。神戸大学皮膚科の伝統的な研究分野として、皮膚腫瘍学、色素細胞学、光医学、皮膚免疫・アレルギー学があります。一方、令和3年8月に教授に着任した久保は、これまで皮膚のバリア学、発生・細胞生物学、そして遺伝医学の領域で、臨床医学と基礎医学が融合した研究をおこない、世界をリードする成果をあげてきました。神戸大学皮膚科と私の専門領域が融合することで、新しい研究テーマが生み出されています。あなたも、このフレッシュな研究チームに加わって、私たちと一緒に皮膚と皮膚疾患の謎を解き明かしてみませんか?

謎を見つける視力を育て、謎を解く力を育てる

大学院に入る目的は何でしょう?論文を出して博士号を取るため?その通りです。でも何のために?皮膚には、まだ解き明かされていない魅力的な謎がたくさんあります。なぜ起こるか分からない疾患や皮疹も数多くあります。でも、何がまだ解き明かされていない重要な謎なのか?何を調べればその謎を解くことができるのか?研究を通じて得られる知識と経験を身につけ、謎を見つける視力を育てなければ、目の前にある魅力的な謎に気付かずに通り過ぎてしまうのです。私は、大学院での研究生活を通じて得るべき最も大切なことは、この謎を見つける視力と、謎を解く方法を考える力を身につけること、そして実際にその謎を解き明かす体験をすることだと考えています。是非、大学院でみなさんに、謎に挑む体験をして欲しいと思います。解き明かすべき魅力的な謎を用意してお待ちしています。謎を見つける視力が育てば、普段の臨床を診る眼が変わります。そして、さらにその次のステップ、自分で謎を見つけ、その謎を解く方法を見つける"next stage"へと進む力を育んでほしいと願います。

魅力的な研究テーマとは

大学院ではどんな研究をテーマにするのが良いのでしょう?これには、正しい答えというものがありません。たとえば、解くのに10年かかる謎に挑む。もし4年で中間的な結果を論文にできるテーマであれば、これも良いでしょう。しかし最初の論文が出るまでに10年かかるのであれば、それでは博士号が期限内に取れないのでダメです。研究テーマは、最初によくメンターと相談する必要があります。大切なのは、魅力的な研究テーマであることです。魅力的な研究テーマとは、皮膚を用いた研究を通じて、なにか普遍的なことを明らかにできる、そんな研究だと考えます。例えば1つの疾患を扱う研究でも、その研究を通じて、さまざまな疾患の病態の理解であったり、新しい治療方法であったりに応用することができるような、私たちの知識の地平線を拡げてくれるような研究を目指していきます。

研究室長(福本毅)からのメッセージ

私は神戸大学での大学院時代に、臨床の教室(皮膚科)と基礎の教室で学ばせて頂きました。臨床皮膚科医の視点で、基礎研究者の技術を用いて、研究を行う楽しさを教えて頂きました。私が教えて頂いた研究の楽しさを是非一緒にみなさんと共有していきたいと思っています。研究は決して簡単ではありませんが、だからこそ何か一つでも世界で初めての事を見つけ出す瞬間の達成感は他では得難いものだと思います。 神戸大学皮膚科の大学院では何人もの大学院生が、お互いに協力しながら、明るい雰囲気で研究を行なっています。大学院は決して敷居の高いものではなく、多くの人にチャレンジしてほしいと考えています。大学院で学ぶ中で、国際学会などで発表する機会や研究留学の機会など多くの選択肢も増えます。大学院で学んだ知識や考え方によって、臨床の場でも新しい視点で疾患を診れるようになれるはずです。 研究室はどんな雰囲気?毎日はどんな生活?英語は必要?などよく質問を頂きます。興味のある人は、気楽にご相談ください。

参考資料:これまでの成果とこれからの目標

皮膚バリア機構:久保亮治

皮膚のバリアには、大きく分けて2つの役割があります。1つは、我々が空気中でも干からびずに生きて行くために、内側から外側への水の移動を制限する、内から外へのバリア機能。もう1つは、外から病原体やアレルゲンが侵入してこないように防ぐ、外から内へのバリア機能です。皮膚を覆う表皮は、2つの物理的なバリアを備えています。それは、角質のバリアとタイトジャンクション(TJ)のバリアです。これら2つのバリアがどのように協調しているのか、バリアを超えて侵入するアレルゲンや病原体は、どこで、どのようにして、免疫系の抗原提示細胞(表皮ランゲルハンス細胞や真皮樹状細胞)によって捕らえられるのか、皮膚のバリア不全がどのような疾患の病態形成に関わるのか。皮膚のバリアに異常をきたすモデルマウス(フィラグリン欠損マウス、角質層形成異常マウス、皮膚TJ障害マウス)の開発・解析を行うことで、角質バリアとTJバリアの相互作用と役割分担を明らかにし、皮膚のホメオスターシスを保つためのバリア機能、外界からの病原体・アレルゲンの侵入に対するバリア機能と、それらの侵入者に対する免疫応答機能について解析を行います。

遺伝性・先天性皮膚疾患:久保亮治

皮膚科には様々な遺伝性・先天性の疾患があります。何らかの生まれつきの遺伝学的変化が原因となっています。正常の細胞と遺伝学的変化を持つ細胞がひとつのカラダの中で混ざって存在することによって発症する疾患(モザイク疾患)もあります。珍しい疾患であるためになかなか診断がつかない、診断がついても治療法がない、子どもに遺伝するのかどうか分からないので不安だ、などなど。遺伝性・先天性疾患の患者さんが持つ様々な悩みを解決するために、新しい診断方法の開発、新しい原因遺伝子の探索、汗孔角化症や長島型掌蹠角化症、色素性母斑などの病態形成機構の解明、そして新しい治療法の開発へと結びつく基礎研究・臨床研究を推し進めていきます。

光生物学:国定充

紫外線は可視光線や赤外線と同じで必ず皮膚に到達しますので、様々な生物学的作用を示します。そのうちの最も大切な(有害な)作用に発がんがあります。近年の高齢化社会に伴って悪性黒色腫を始めとした皮膚がんがその治療を始めてとして皮膚科領域でもおおいに注目されています。一方その紫外線発がんに至る経路、メカニズムについては解明できていない部分も多く、特に紫外線を浴びたあとの日焼け反応などの修飾因子も密接に関与することも当教室での研究で明らかにしています。 私たちに身近な紫外線は発がんだけではなく、勿論しみやしわなど、いわゆる光老化作用もあり、あらゆる点で皮膚科医としてこれらの分野の細胞やマウスモデル、あるいはヒトの皮膚を使った様々な基礎研究が進むことが重要で、そして何より光生物学のおもしろさを体感できるところだと思います。

発がん:福本毅

2018年にノーベル医学生理学賞を受賞したがん免疫療法など、がんの治療戦略は劇的に進歩を遂げています。しかし、依然としてがんは、何十年も全死因の中の第1位であり、日本でも年間30万人以上が亡くなります。そこで日本も、「がん対策推進基本計画」に基づき「がん研究10か年戦略」を定め、国をあげてがん研究の推進に努めています。私たち神戸大学皮膚科でも、死亡者数が多い難治性の皮膚がんである悪性黒色腫や血管肉腫や乳房外Paget病などに対する病態解明研究と新規治療シーズの探索的研究を行なっています。具体的には、神戸大学の伝統であるシグナル伝達分子に着目した病態解明研究、がん細胞で特異的変化を生じる低分子代謝制御であるがん代謝を標的とした新規治療シーズの探索、発がんにどう関わるかまだ未知である細胞老化のエピゲノム制御の機序解明など、様々な視点からのがん研究を展開しています。

免疫アレルギー疾患:織田好子

蕁麻疹やアトピー性皮膚炎は有病率の高い一般的な皮膚疾患の1つです。2017年以降慢性蕁麻疹に対しオマリズマブが、アトピー性皮膚炎に対しデュピルマブやJAK阻害薬が保険適応承認薬となり、治療に大きな転換をもたらしました。これらは病態に関与している分子を標的とし開発されましたが、治療法が進むにつれ、さらに新たな病態が紐解かれ、次々と新知見が明らかになっている分野です。我々は好塩基球に着目し、蕁麻疹やアトピー性皮膚炎患者の生体内で寄与している役割について業績を上げています。さらに当教室では古くから汗や紫外線に関する研究を行っており、コリン性蕁麻疹や特発性後天性全身性無汗症、アトピー性皮膚炎の病態における汗の関与や日光蕁麻疹の病態解明の研究も行っています。

  • 子育て医師支援プロジェクト