ごあいさつ

教授あいさつ

松本 理器

松本 理器

神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 神経内科学分野は、脳神経系の診療を志す医師が集い、2008年12月に創立された若い教室です。この度、初代教授戸田達史先生の後任として、2018年12月に着任しました松本理器(まつもとりき)です。私達は脳神経の病気を幅広く内科的知識と技能をもって診療していますが、国民の皆様によりわかりやすくなるよう、学会全体として標榜科を「脳神経内科」に変更することになりました。当教室でも2019年4月より診療科を「脳神経内科」に、同年5月より分野名を脳神経内科学分野に変更いたしました。脳神経内科診療が本格始動し10年となる節目での分野名の変更が、くしくも令和への改元に重なりました。次の10年に向けた新たな出発に際し、分野長としてご挨拶申し上げます。

脳神経内科が対象とする病気は、パーキンソン病・筋萎縮性側索硬化症に代表される神経難病から、超高齢社会となり増加している脳卒中・認知症・てんかんといったコモンディジーズまで幅広く、脳・脊髄から末梢神経・筋の病気まで、いわば全身を守備範囲としています。脳の世紀とされる21世紀に入り、変性疾患の原因が解明されつつあり、一部の神経難病では核酸医薬による根本治療も始まりました。そして、パーキンソン病やてんかんでは、難治例を対象に脳神経外科と共同で外科治療も行われるようになってきました。スタッフの専門性を活かして、認知症・てんかん・神経難病の世界水準の診療体制の構築をめざし、メディカルスタッフとチーム医療を展開し、兵庫県下の大学病院として、患者第一の安心、安全な高度医療を提供いたします。

世界水準の診療には、世界水準の研究がかかせません。脳神経内科は、難治性神経疾患の病態や高次脳機能のメカニズム・可塑性の解明といった臨床神経科学の最先端を担う研究科の側面を持ちます。臨床現場での疑問を大切にして、現在、そして未来の患者さんに何ができるかを考えながら、「治る脳神経内科」をめざして、基礎研究・臨床研究の両面から、神経疾患の病態解明、そして新しい検査や治療法の開発に取り組んでいます。診療同様、研究も学際的な共同研究が重要であり、国際色豊かな神戸の地の利を活かして、学内、国内外との共同研究を進めてまいります。

教室の発展には三位一体となった診療・教育・研究が重要ですが、なかんずく教育は要であり、スタッフ一同、全力を尽くして取り組んでいます。脳神経内科は、臓器ではなくシステムとして機能する神経系を相手にする診療科であり、学生や初期研修の皆様は一見とっつきにくいイメージを持つかもしれません。しかし、実際は問診とハンマー・音叉などを用いた神経学的診察をもとに臨床診断に到達する診断学の醍醐味やニューロサインスの先端を担う研究科の側面、21世紀の治療の進歩といった様々な魅力を併せ持つ診療科です。脳神経内科に少しでも興味のある方は是非見学にお越しになって、面白さを実感してください。学生実習、初期研修、後期研修、大学院を通じたphysician scientistの育成、そして生涯教育とシームレスな教育プログラムを展開し、関連病院との密な連携のもと、教室員の希望や家庭環境に応じて研修・教育を受けられる体制を整えています。

古くから海外に門戸を開いた神戸港の影響でしょうか、教室は活気があり、教室員は個性・多様性を尊重しながら切磋琢磨しています。創立10年の若い教室ですが、診療・教育・研究面での人との出会い、つながりを大切にして、教室員とともに、神戸から世界に発信し、社会に貢献する脳神経内科教室を築いてゆきたいと存じます。

令和元年 5月吉日
脳神経内科学分野教授 松本理器