研究内容 (堀江 真史)
① 呼吸器疾患の包括的な分子病理学的解析
病理検体を用いて肺癌や間質性肺炎などを中心とした呼吸器疾患全般の包括的な分子病理学的研究を行っています。さらに、シングルセル解析や空間遺伝子発現解析、ゲノム・エピゲノム解析、多重免疫染色等と組み合わせた多層オミクス解析により、新規治療標的や診断マーカーの同定、病態の解明に取り組んでいます。
肺癌検体の空間トランスクリプトーム(Xenium 5K)
② 間質性膀胱炎の本態解明
間質性膀胱炎は膀胱の痛みと頻尿が特徴の原因不明の難治性疾患で、特にハンナ型間質性膀胱炎(HIC)は指定難病に認定されています。これまで信州大学、金沢大学、東京大学、秋田大学と協力して、HICは上皮の剥離とB細胞主体の炎症細胞浸潤によって特徴づけられること、そして免疫ゲノム解析を通じてこれらのB細胞にクローナリティが存在することを明らかにし、世界に先駆けて報告してきました。現在、抗体アレイや空間解析などを行い、さらなる本態解明と新規治療法の開発を進めています。
HIC検体のイメージングマスサイトメトリ
研究内容 (児玉 貴之)
本学大学院 病理学分野(当時)横崎 宏 前教授のもと、食道扁平上皮癌の腫瘍関連マクロファージに関する研究により学位取得後、病理診断業務に専従し(病理専門医、分子病理専門医、細胞診専門医取得)、2024年4月より再び当教室で研究に従事しております。 大学申請時代の研究テーマ(腫瘍微小環境)、病理診断を経て興味を抱いた臓器(上部消化管、膵胆道)、堀江教授着任以降に導入された新たな技術(シングルセルRNA解析、空間的オミクス解析)を組み合わせ、独自の研究を目指しています。
① 膵管内乳頭状粘液性腫瘍(IPMN)の微小環境に関する研究
膵管内乳頭状粘液性腫瘍(IPMN)は膵前癌病変の1つですが、組織学的に胃型、腸型、膵胆道型の3つの亜型に分かれ、それぞれ癌化リスクや癌化した場合の組織型が異なるとされています。我々はその理由として、癌・間質・細胞外基質から構成される腫瘍微小環境に着目し、亜型や癌化前後の腫瘍微小環境(特に線維芽細胞や骨髄球系細胞)の違いを、FFPE検体を用いたシングルセル解析や、多重蛍光免疫染色とその定量的解析によって評価・検討しています。
② H. pylori未感染胃に発生する前癌・早期癌病変の空間的解析
近年、H. pyloriの感染率の低下や消化管内視鏡技術の発達により、胃癌の罹患率・死亡率は減少傾向にある一方で、胃底腺型胃癌や腺窩上皮型腫瘍(いわゆる「ラズベリーポリープ」)など、これまで内視鏡医・病理医が経験したことのない腫瘍が発見されるようになってきております。これらの腫瘍については悪性度が低いことが示唆されているものの、具体的な良悪性の取り扱い(診療方針)や、他の胃腫瘍(腺腫・癌)との相違点、病理診断に有用なマーカーなど、未解明な点も多く残されています。我々は、これらの疑問に対して、主に空間トランスクリプトーム解析Xeniumを用いた解析を行っています。
③ 消化管・膵胆道領域における臨床症例に対する病理学的検索・考察
神戸大学医学部附属病院やその他関連施設の病理診断科において、消化管・膵胆道領域を中心に病理診断を担当しており、臨床病理カンファレンスや臨床研究への協力を通して臨床医とも密接に交流し、患者さんの診療に役立てるよう心掛けております。また全国他施設のエキスパート病理医との意見交換を通して自己のスキルアップに努めているほか、希少症例については積極的に症例報告も行っております。
(膵胎児消化管類似癌の一例)