医師・医学生の皆様へ│教室の紹介

総合内科とは、診断推論の専門家でしょうか?「総合」の名の通り「複数の病気をまとめて全部診る」ことでしょうか?「地域を診る医師」という特徴があり、在宅医療や小児科にも携わっていく「家庭医」に近い医師像である総合診療医(プライマリーケア医)ではなく、また病棟管理と総合診療のエキスパートですが、ただ専門診療科と関わりながら診療し、自科のみで完結する存在ではない病院総合医(ホスピタリスト)でもないと考えています。一方、全診療科が揃っていない医療機関では、総合内科の役割として不足している診療科を補う役目が期待されると思いますが、ほとんどの診療科が存在する大病院での総合内科は、専門診療科の前段階で適切な診療科を紹介する役目を担ったり、複数の診療科の中心で患者をマネージメントする診療科である、と言われます。では具体的にどのような役目を担えば良いのでしょうか。また本当にそのような役割でよいのでしょうか。

私たち総合内科は、「特定の臓器に偏った診療ではなく、患者さんを中心とした“全人的”医療を実践する」という理念に基づき、「私たちに診ない病気はない」をモットーに診療にあたっています。「よい医療=患者さんを幸せにすること」であり、その目的達成のためには「良い医療を提供できる医師」でなければなりません。そのためには全米卒後医学教育認可評議会が定める「医師に必要な一般的能力」である、①患者をケアする能力、②医学的知識、③症例から自ら学び、自らを改善する能力、④人とのコミュニケーション能力、⑤プロフェッショナリズム、⑥医療制度、社会制度に基づいた診療、を自ら実践し、研修医・医学生に共に学べるような環境作りをしています。

そのような中で私たち総合内科は、診断推論の専門家のイメージ通り、診断学のスペシャリストとして、症状・症候のみで診断確定に至っていない患者の診療を率先して行っています。ただ近い将来人工知能(AI)が医療現場で活躍することが予想され、そうなると莫大な知識量を誇るAIには診断力という点で遠く及ばないことが想像に難くありません。しかしどの情報を使い解釈するかといった医師の知見や判断は必要不可欠であり、そもそも患者情報を適切にAIに入力できるかどうかが大事であり、十分な問診、適切な身体診察ができるかどうかがより問われる時代になると思います。そういう意味で、私たち総合内科は診断だけでなく診察のスペシャリストであるべきであり、日々の診療において、問診、身体診察の重要性を理解し実践しています。

また「私たちに診ない病気はない」をモットーに診療にあたっており、当科診療の疾患構成は内科系疾患のほぼ全領域にわたっています。入院患者の約7割においては、同時進行で治療を必要とするような他領域の併存疾患を有しており、敗血症や多臓器不全など集中治療を要する重症患者も多く診療しています。さらに他科入院中の患者でも、併存疾患を多数有し全身管理が必要な患者の診療には、当科が中心となって複数の診療科と連携しながら診療にあたっています。つまり私たち総合内科は、様々な患者を最後まで診療する横断型の診療スタイルを採用しており、「どんな疾患でも、どのような患者でも診る」という情熱、診断確定に至っていない疾患に対し、どこまでもきちんと原因を究明するという情熱を持って、日々診療に取り組んでいます。また診断・診察のスペシャリストとして、学生・研修医の教育において中心的役割を果たすべきと考えています。さらには各専門診療科の後期研修や内科系医師の生涯教育などにおいても、専門的視野でなく、全人的視野から教育を行う担い手であるべきと考えています。コメディカルや救急救命士への積極的な教育、一般市民に対する医学知識や救急蘇生の啓蒙活動など、医学教育に対しても情熱を持って取り組んでいます。

私たち総合内科は現在、専門分野として総合内科を専門とする医師、総合内科マインドを持ちつつ何か一つ専門分野を持つ医師など、様々な得意分野を持った医師が集まっており、日々のカンファレンスでは、各専門分野を持った医師がいることで、専門的見地からの考え方や診断・治療法などをメンバー全員が共有することができます。ただそのような雑多な医師の集まりですが、根底には全人的医療を実践する、どんな患者・疾患でも診るというマインドを持っており、さらに得意な専門分野が一つありつつ、他のメンバーの専門分野と繋がり「H」になるという「人と繋がることができる」医師が集まっていることで、お互いに成長することができ、新しい何かを生み出す可能性を秘めていると考えています。

一方、これからの総合内科は、研究医(Physician-Scientist)でもあるべきです。日本医師会 日医ニュースからの引用ですが、「患者を診る医師は、常に困難かつ未知の道を行くものであり、その意味において全ての医師はPhysicianでありScientistである」(2015/02/20)とあります。研究医は、Scientist(科学者)であり、かつPhysician(臨床医)として、実際の臨床現場の疑問をラボで解決する「Bench-to-bedside」の医学を理想としますが、日々の臨床業務に追われる中、臨床研究や症例報告を行うことで、研究医としてのモチベーションを維持することは重要です。「治らなかった病気をいつかきっと治してみせる」という研究医魂こそが、医師となった者全ての原点であり、研究することにより、臨床医は実臨床に必須のセンスがますます磨かれると思っています。私たち総合内科は、当科の患者群の特性を生かした横断的臨床研究をベースに、各メンバーの専門性を生かした臨床研究を行っています。多種多様の疾患・患者群を診療しており、研究テーマとして、どのような疾患・臓器に興味を持ったとしても当科で研究医として力を発揮することができると考えています。

このように、私たち総合内科は様々な専門・得意分野を持った雑多なメンバーですが、診断・診察のスペシャリストとして、診療・教育・研究に対する強い情熱を持った医師の集まりです。総合内科とは「全人医療を実践する」マインドを根底に持ち、今までの概念、枠組みにとらわれることなく、内科全般の診療を行い、医学教育の担い手であり、かつ研究医であることと考えています。メンバーお互いが共に成長し続けることが、「よい医療」を提供し、患者のため、社会のためになると思っています。私たちと一緒に頑張りませんか。