留学便り

神戸大学システム生理学分野での研究  尾﨑 可奈

 2016年9月より、神戸大学システム生理学分野で研究をしております。私は、2015年4月に大学院へ入学、研究テーマを模索しながら大学病院に在籍している頃、2016年4月に神戸大学システム生理学分野に和氣弘明教授が新しく着任されました。
 システム生理学の研究室は立ち上がったばかりで、7〜9月にスタッフの先生が就任され、とてもフレッシュな研究室です。自然科学研究機構生理学研究所(愛知)で研究されていた先生3人と、大学院生は私を含め3人(神経内科から1人、博士過程1人)で、研究室は広々と使うことができます。研究室が立ち上がったばかりということもあり、機材などの搬入、動物実験室の入り方や物品注文など、実験に入るための準備段階を併行して行い、中心となる先生は大変忙しく過ごされておられました。11月に入り、ようやく研究室の機材や実験動物の搬入が落ち着いてきて、各々の研究テーマを行っていく体制が整ってきました。
 各々の研究を行いながら、毎週火曜は一週間の経過報告と今後の課題を発表するラボミーティングと抄読会があり、毎週金曜はThe Synaptic Organization of the Brainというテキストの輪読会を開いてもらっています。中枢神経については、医学部学生時代と医師国家試験以来、ほぼ接することのなかった分野であり、最初はミーティングや輪読会の内容理解に難渋しました。2ヶ月が経過し、少しずつではありますがミーティング内容、中枢神経系の研究テーマに馴染み始めてきました。
 システム生理学研究室の一番の特徴は、2光子顕微鏡を用いた生体内イメージングです。基礎研究・臨床研究を問わず多方面の共同研究が可能であり、実際複数の共同研究を行っています。顕微鏡技術の発達や蛍光物質の発見から、蛍光タンパク質等で発色した細胞の美しい画像を目にすることができるようになり、さらに、2光子顕微鏡を用いることで、組織の障害が少なく、深い部位の撮像が可能となったことで、生物を生かした状態でイメージングを行うことができます。実際、研究室では、マウスの頭蓋に固定用のチャンバーをのせ、小さいドリルで直径約2mmの円形の穴を頭蓋骨を開け、カバーガラスで置換し(open skull法)、マウスを2光子顕微鏡下に固定した状態で、生きたマウスの大脳皮質を観察するという方法を用いて、マウスの神経細胞活動・構造の観察を行っています。私の研究テーマとしては、中枢神経系の免疫担当細胞とされるミクログリアの動態変化を研究テーマとしています。母体炎症モデルを妊娠中マウスで作成し、胎仔の大脳皮質のグリア細胞(特にミクログリア)及び神経細胞の動態、また、生まれてきたマウスの思春期グリア細胞及び神経細胞にどのような変化が生じるかを研究テーマとしています。現在は子宮内電気穿孔法という手法を用い、胎仔大脳皮質の神経細胞のイメージングにとりかかっています。実際、2光子顕微鏡下での子宮内胎仔大脳皮質のイメージングはとても難しく、確立できるか現段階では評価できません。実験を行い、うまくいかず動きが取れない状態のときに、何かしら道を開いてくれる先生が周りに存在し、また奮闘するという日常を繰り返しています。
 せっかく頂いた機会ですので、システム生理学分野で研究させていただく時間を大切に、よりよい研究成果を挙げるため日々精進していく所存です。
神戸大学臨床ウイルス学分野での研究  長又 哲史
 2015年10月から神戸大学大学院医学研究科臨床ウイルス学分野にて研究を行っております。こちらに来て1年以上経過しましたが、ようやく研究生活に慣れてきた感じがしています。
 現在行っている研究内容は、「BALB/CマウスにおけるHHV-6B glycoproteinQ1(gQ1)タンパクのepitope探索研究」と「造血幹細胞移植後のHHV-6B受容体発現レベルとHHV-6B再活性化との関連」という2つのテーマをメインに研究をしています。Epitope探索研究に関しては、タンパク質を小さなpeptideに分け、免疫したマウスT細胞のpeptideに対する反応を見ていきます。最初は膨大な量のpeptideがあったのですが、ようやく数個にまで絞り込めてきており、ゴールが見えてきた感じがあります。移植後のHHV-6B受容体発現レベルに関する研究では、週2回神戸大や兵庫県立こども病院の先生方から余剰採血検体を頂き、解析を行っています。当初は結果がなかなか出なかった割に膨大な量の検体を解析しなければならず、また解析方法も定まっていなかったので、ずっと戸惑っていました。そうなると自分で色々考えてやるようになり、今ではだいぶシェイプアップして効率よく出来るようになったかなと思います。しかし、結果にまとめられるかどうかはもう少し継続してみないと分からないのが辛いところです。
 臨床において失敗は許されず、ある程度うまくいって当たり前という感覚があったと思います。しかし、研究においては失敗が日常茶飯事で、夜の12時近くまでやった実験がうまくいかない時のストレスといったら気が狂いそうになります。気の短い自分には性に合ってないと常々思っていますが、失敗しないように何だか今までよりも細かい性格になったような気もしています。そのモードで家に帰ると、嫁さんには嫌がられるので切り替えが必要です。しかし、表面的なことだけ理解して満足してしまう性格は変わっておらず、研究室スタッフの深い知識にはいつも圧倒されております。
 研究に慣れてきたこともあり、スタッフの先生方の実験の手伝いもさせて頂いております。手伝っているのはマウス関連の実験が中心で、多いときでマウス60匹から脾臓を摘出し、1日がかりで末梢血単核球を分離します。研究も時には力仕事だということを痛感させられます。連日研究室を出るのは夜9時過ぎで、遅いときは11時頃になります。無駄な時間を使っているつもりもないですが、それでも時間が足りません。思い描いていたゆとりある大学院生活とはほど遠いので、なんとかもっと効率良く出来ないものかと思いますが、忙しさは時に考える時間も奪うので恐ろしいものです。しかし外来や病棟業務と違って体力はそんなに消耗しませんし、土日も休みたいときは休めます。今後の医者人生の中で、今しかない時間だと思って、研究もプライベートも充実させたいと思います。
 今現在行っている研究内容は、ウイルスということもあり免疫系の知識が必須になってきます。まだまだ勉強不足ですが、将来的にはその知識や経験を産婦人科で活かせればと思っております。
微生物病研究所  笹川 勇樹
 2015年10月より、微生物病研究所 免疫化学分野(主宰;荒瀬 尚教授)に国内留学しています。同分野では、これまでにも、当科の谷村憲司講師と森上聡子先生(神戸大学大学院生)が留学され、抗リン脂質抗体症候群や不育症に関する研究を行い、業績を上げられております。
 早いもので1年が過ぎました。これまで学生時代の実習以外で実験を行ったことがなかったため、最初の3ヶ月ぐらいは慣れない実験生活についていくのにやっとでしたが、最近は慣れてきたため自分のペースで実験を行っています。免疫科学教室には今年度は他大学からの留学者1名、ポスドク1名が加わりました。期間限定ではありますがアメリカからの留学生が来たり、他の研究室から大学院生が来たり、また授業の合間に医学部の大学生が実験に来たりと常に人数が多く活気に満ちあふれています。研究室のまわりは豊かな自然に囲まれており、春には桜がキャンパス内の至る所に咲き、夏は美しい緑に囲まれ、秋には赤や黄色に木々の葉が色づきます。冬は標高がやや高いためか、神戸や大阪梅田より2から3℃程寒く雪が積もることもたまにあります。梅田まで近いのですが、豊かな自然がそのことを忘れさせ実験や勉学に集中できる環境が整っています。
 研究室での生活ですが、毎週月曜日は、午前8時半から全員のプログレスレポートと業務連絡のための全体ミーティングを行い、毎週金曜日の午前8時半から抄読会や研究報告を行っています。毎週あるプログレスレポートでは、1週間の研究成果についてプレゼンテーションし、荒瀬教授をはじめ、他の教官の先生などから様々なアドバイスをいただき、今後の実験に役立てています。
 私の研究についてですが、抗リン脂質抗体症候群(APS)とMHCクラスⅡとの関係について研究しております。抗リン脂質抗体の中でも抗β2GPI抗体が病態に深く関わっている可能性が高いので、抗β2GPI抗体についての研究を進めています。2つテーマがあるのですが、1つはAPS発症を阻害することについて研究しています。抗β2GPI抗体がAPS発症に関わっていることは分かっているので、その抗体を阻害することができればAPSを発症することがないのではないかと考え実験を進めています。もう一つ、β2GPIには5つのドメインがあることが分かっているのですが、そのうちどのドメインが抗β2GPI抗体の認識に必要であるか、そしてまたドメインとMHCクラスⅡとの関連について解明する研究も現在進めております。残念ながらどちらもまだ十分な結果が出ていないため詳しく紹介することはできませんが、荒瀬教授の指導のもと研究を進めていきたいと思っています。

平成27年留学便り   

 

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