平成29年留学便り

神戸大学分子細胞生物学分野での研究 川口 徹也

  2017 年7 月から神戸大学大学院医学研究科 生化学・分子生物学講座 分子細胞生物学分野にて研究を行っています。初期研修以降、ずっと臨床現場での業務だったため、実験をするのは医学生の時以来になります。そのため、一から覚えることばかりで大変ですが、臨床現場とは異なる環境の中、日々新鮮な気持ちで研究に取り組んでいます。
 分子細胞生物学分野では、発がんの分子メカニズムの研究を行っています。具体的にはP53、PTEN 経路、またはHippo 経路と呼ばれる発がんに関与するテーマを中心に研究を展開しています。非常に和気藹々とした雰囲気の研究室です。その一方で、スタッフの方皆が意欲的、かつ真剣に研究に取り組んでおられ、知らないうちに日付が変わっているということも珍しくありません。
 研究テーマは3 つあります。
1.MOB1 欠損マウスにみられる不妊症の解析 2.MOB1 欠損マウスを用いた子宮頸癌の治療薬の発見 3.婦人科がんの予後と関連のある分子の同定・解析です。
いずれのテーマも、その発端にはHippo 経路が関与しています。Hippo 経路とは、器官サイズの制御やがん化の抑制に作用すると報告されており、この経路の破綻により発がんが促進されるといわれています。MOB1 は、Hippo 経路を構成するタンパク質の一つであり、その経路におけるコア複合体を形成します。MOB1 欠損マウスでは、子宮頸癌が高頻度に発症することから、その治療薬の発見をテーマの一つとして研究しています。また、MOB1 欠損マウスでは受精がうまく行われず、受精が阻害されている可能性が示唆されており、不妊症との関連についても研究しています。また、Hippo 経路において最終的に活性化される転写共役因子:YAP1、TAZ が発がんに関与していることが報告され、YAP1、TAZ が核内で作用すると細胞増殖に作用してがん化を促進することがわかってきています。このことから、ヒト全ゲノムライブラリーの約18,000種類の遺伝子の中から、YAP1、TAZ の活性化に関与する遺伝子をピックアップし、それらを用いて婦人科がんに関連のある分子を同定・解析することを目的として研究を行っています。
 いずれの研究テーマも非常に興味深い内容であり、研究室のスタッフの方々にご指導いただきながら、試行錯誤しながら研究しています。まだ判明していない、未知の領域への挑戦であり、戸惑うことばかりですが、今しかできない貴重な経験であり、結果を残せるよう日々精進して参りたいと思います。  

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