神戸大学大学院医学研究科外科系講座産科婦人科学分野 集合写真

教室の歴史

 神戸大学医学部の歴史は、第二次世界大戦中の軍医養成という国策に沿って昭和19年に開校された兵庫県立医学専門学校に始まります。しかし、その創設母体となった附属病院はもともと、明治維新直後、神戸開港の時代であった明治2年に神戸病院として設立されました。神戸病院は当時、新しい西洋医学を取り入れるための最新施設で、医師養成も行っていました。その後、神戸病院は明治10年に公立神戸病院に、明治15年には兵庫県立神戸病院に、また昭和19年には兵庫県立医学専門学校附属病院に改称されました。病院はこのように、県内のみならず県外からも多数の患者が集まる国内でも有数の施設として存続しました。つまり、神戸大学各学部の沿革をたどれば、医学部附属病院が最も古い歴史を有していることになります。
 さて、神戸大学医学部産科婦人科学教室(現在の正式名称は神戸大学大学院医学研究科外科系講座産科婦人科学分野)の沿革は、昭和19年6月1日に初代村上 清先生の兵庫県立医学専門学校(昭和21年に兵庫県立医科大学に、昭和27年に兵庫県立神戸医科大学、のち昭和39年に国立移管し神戸大学医学部に改称)教授就任にさかのぼります。なお、村上先生は既に大正14年11月に兵庫県立神戸病院の第四代婦人科科長に就任されていました。その後、村上教授は、昭和24年には附属病院長に就任され、さらに昭和29 年には第6回日本産科婦人科学会総会を開催されるなど、学内外で活躍されました。
 村上教授退官後の後任に、植田安雄助教授が第二代教授に昇任されました。植田教授は内分泌学研究の基礎を教室に創られました。惜しくも在任9年で病のためご逝去されましたが、先生が培われた産婦人科内分泌学研究の萌芽は、次に38歳の若さで京都大学から赴任した第三代教授東條伸平先生によって大きなものに育ちました。昭和40年代後半から50年代の教室といえば、胎盤や卵巣の内分泌研究の殿堂という評価をいただいており、内外の学会における特別講演やシンポジウム担当者を数多く教室から輩出しました。一方、東條教授は子宮がんに対する広汎子宮全摘の術式を安全かつ容易なものとなるよう改良を加え、手術症例数を増やすなど、婦人科領域においてもすばらしい業績をあげられました。そして、昭和57 年に第34回日本産科婦人科学会総会を開催されたのち、東條教授は京都大学に転出されました。
 その後任は第四代の望月眞人教授であり、初めての神戸大学出身の教室教授でした。望月教授は、持ち前のバイタリティーで臨床、教育、研究のいずれの分野にも全力を注ぎ教室を運営されました。そして、特筆すべきは昭和59年に当時の国立大学では初めて産科と新生児科が一体化した母子センター(現、総合周産期母子医療センター)を開設し、教室の周産期医学診療と研究を一気に活性化したことです。その後、神戸大学産科は新生児科との相互信頼のもとで診療・研究実績を積み重ね、「全国病院ランキング」を掲載する書籍において、産科医療部門において総合評価1位を獲得するに至りました。また、望月教授は日本母性衛生学会、日本妊娠中毒症学会(現、日本妊娠高血圧学会)、国際妊娠高血圧学会(ISSHP)など 周産期医学領域の関連学会を多数開催されました。
 第五代教授には、同じく神戸大学出身の丸尾 猛先生が就任されました。丸尾教授は、自身の研究に対する厳しい姿勢と、留学時代から培い、講師、助教授時代にさらに拡げてきた国際的人脈を融合させ、もともとの専攻であった生殖内分泌学領域の基礎研究だけではなく、婦人科腫瘍の基礎研究や高度先進治療、あるいは月経過多症の新しい治療法開発など、幅を格段に広げ臨床・研究を発展させました。また、多数の留学生が在籍し、教室内には国際色が満ち溢れていました。そのことにより、教室員の活動度は高まり、多くの教室員が国内外の学会で発表しました。それに呼応して、神戸でも多くの国際学会や国内学会が丸尾教授のもとで開催されました。中でも、平成19年に 丸尾教授が開催された第59回日本産科婦人科学会総会・学術集会は、産婦人科医不足が社会問題になっている中でしたが、予想をはるかに超える多数の参加者を得ることができ、盛会に終えることができました。
 丸尾教授退官の後、平成21年5月16日付けで山田秀人先生が 第六代主任教授に就任いたしました。北海道生まれで北海道大学出身の山田教授は、今までとは異なった風を送り込んでくれました。サイトメガロウイルスやトキソプラズマなどの母子感染の研究を行い、また、不育症も専門とし、日本各地より多くの紹介患者が外来を訪れています。今後も神戸大学産科婦人科学教室がそのよき伝統を守りつつ、より発展した盤石な組織へと進化することが期待されております。

歴代主任教授

 
初 代:
 
村上 清(在職:昭和19年6月~昭和32年3月)
第二代:
植田 安雄(在職:昭和32年4月~昭和41年4月)
 
第三代:
 
東條 伸平(在職:昭和42年6月~昭和57年4月)
 
第四代:
 
望月 眞人(在職:昭和57年12月~平成8年3月)
 
第五代:
 
丸尾 猛(在職:平成8年11月~平成20年3月)
 
第六代:
 
山田 秀人(在職:平成21年5月~現在)

神戸大学医学部産科婦人科学教室位育会について

 教室同門会として位育会は、過去に一時期でも教室に在籍したことのある医師によって組織されており、現在会員は約400名を越えています。勤務形態や世代を超えて同門としての親睦を深めるとともに、学術情報の交換の場として、また、教室発展のサポートをその活動目的としています。
 「位育会」の名称は初代教授村上 清先生が昭和41年に名づけられたもので、儒学の基本と成る「四書」のうちの一つ「中庸」の 一節から引用されたものです。原文は「喜怒哀楽之未発。謂之中。発而皆中節。謂之和。中也者。天下之大本也。和也者。天下之達道也。致中和。天地位焉。万物育焉。」です。この最後の2節は、「天地の位置、秩序が不動のものと安定し、その結果として万物は育っていく。すなわち、天地のいろいろなものがそれぞれ適当な場所を得て、生育を全うしているのである。」という意味で、それぞれからとった「位」、「育」より命名されました。

  
 

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