大腸がん
1. 大腸癌について
大腸は結腸(盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸)と直腸(直腸S状部、上部直腸、下部直腸)から構成されています。大腸癌の治療法は手術、抗癌剤、放射線、免疫療法、またこれらを組み合わせた集学的治療など多岐にわたります。進行した癌では泌尿器科や産婦人科、形成外科と協力しなければ切除できない場合もあります。当院では、患者さん一人一人に最適な治療ができるように日々取り組んでおります。
2. 大腸癌手術に必要な主な検査について
- 下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ):腫瘍を直接観察し、また癌細胞を採取し診断を確定します。
- 胸部・腹部CT検査:腫瘍の場所や大きさの診断、転移の検索を行います。また可能であれば造影剤を用いて撮影を行い、手術に必要な血管の走行も確認します。
- PET検査:遠隔転移を検索します。
- MRI検査:肝転移の診断や、周囲臓器への広がり(浸潤)を精査します。
<下部消化管内視鏡検査>


<腹部造影CT/3D血管構築>


大腸癌取り扱い規約 第9版

3. 初診から手術までに要する期間・入院期間の目安
- 初診から手術まで:1~3週間
- 入院期間の目安:7-10日(人工肛門が無い場合)
9-14日(人工肛門がある場合)
4. 手術治療について
当院ではほとんどの大腸癌患者さんに腹腔鏡手術を行っています。また直腸癌の場合には、TaTME(腹腔側および肛門側からアプローチによる腹腔鏡手術)やロボット支援手術といった最先端手術も積極的に行っています。
- 腹腔鏡手術
腹腔鏡手術では開腹手術に比べ低侵襲で術後の回復が非常に早く、当院では初発直腸癌の95%以上を腹腔鏡手術で行っています。一般的な腹腔鏡手術では切除した腸管をつなぐ(再建)ために、小切開創をおきますが、当院では再建までの全てを腹腔鏡で行うことで、更に低侵襲な手術を行っています。
- 直腸癌に対する肛門温存手術
癌が肛門に近い下部直腸にできた場合、肛門温存の可否が非常に重要な問題となります。当院では以下に述べる2チームによるTa-TMEやロボット支援手術、また術前治療の併用により、肛門温存手術に積極的に取り組んでいます。
- TaTME(Transanal total mesorectal excision:経肛門的直腸間膜全切除)
TaTMEは2010年に米国で初めて報告された直腸癌手術の新しい術式で、肛門に腹腔鏡手術用プラットフォームを装着し、腹腔鏡手術の要領で肛門側から直腸切除を行う方法です。通常のお腹からのアプローチと併用して2チームで手術を行うことで、手術時間が大幅に短縮するだけでなく、確実な腫瘍切除や肛門温存に非常に有利と考えられています。この手術は難度が高く、また人手もいるため、施行可能な施設は限られています。
当院ではこれまでに200例近い手術経験があり、全国でもトップクラスです。

- ロボット支援手術
手術支援ロボットであるダヴィンチを用いたロボット支援下直腸癌手術が2018年4月に保険収載されました。当院では2006年にロボット支援下直腸癌手術を開始しております。高精度の3Dカメラや手振れのない鉗子操作が可能であり、非常に精緻な手術が可能となります。現在は結腸癌も保険適応となり、大腸癌に対してロボット手術を積極的に施行しています。
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5.術前治療について
直腸癌の治療成績を向上させるため、術前化学放射線治療(NACRT)や術前化学療法(NAC)を積極的に行っています。これらの術前治療により、腫瘍が非常に小さくなるため、再発率が下がる、肛門温存率が上がる、といったメリットが考えられます。また、一部の患者さんでは癌が消えてしまうこともあります。患者さんによって受けられる術前治療は異なるため、患者さんの病状をしっかりと見極めて、最適な術前治療をご提案します。
6.新しい治療法の開発
当科では、新しい治療法の開発にも積極的に取り組んでおり、多くの臨床試験や臨床研究に代表施設あるいは共同施設として参加しています。
特に、以下の大腸癌治療を専門とした研究グループに所属し、大腸癌治療における新しいエビデンスを構築・発信できるよう、日々取り組んでいます。
- 大腸癌研究会
- 腹腔鏡下大腸切除研究会
- KSCC(九州消化器癌化学療法研究会)
- OGSG(大阪消化管がん化学療法研究会)
7.当院での手術実績