教育・研修
education
放射線治療専門医 radiation oncologist
初期研修
現代において癌という病気は、一生のうち2人に1人がかかる病気であり、死亡する確率は男性の4人に1人、女性の6人に1人とされています。つまり皆さん自身にあるいはご家族に経験される可能性が高い疾患ということになります。我々は多くの若い先生方がそういった癌治療に興味を抱き、そのような世界で戦おうという志をいただいてくれることを願っております。放射線治療は、癌治療の3本柱の一つを担っています。放射線治療は半分が機械の世界ですので、昨今の技術革新により極めて速いテンポで目覚ましい成長を遂げています。10年前できなかったことが、現在では標準治療ということも多く経験することでしょう。我々は、医者としてスタートしたばかりの若い先生方に放射線治療を通して、最先端の癌治療について、一方で今なお根治が難しい領域、それぞれの癌に対する豊富な知識を学び、興味をもっていただきたいと思っております。
がん治療に興味のある方は、関連診療科とセットでの研修をご検討下さい。期間や内容について、ご希望に沿って柔軟に対応致します。まずはお気軽にご連絡ください。
後期研修
後期研修では、実際に放射線治療専門医になるため、放射線治療および癌について知識と理解を深めることはもちろん、一人前の治療医の証である放射線治療専門医資格の取得という具体的な目標を達成することを目指します。現時点では放射線診断・放射線治療の専門医制度には2段階の試験が設けられ、診断・IVR・治療で共通の「放射線科専門医」を取得した後、「放射線治療専門医」を目指すこととなります。また、放射線治療と一言で言っても、X線、治療、粒子線治療、小線源治療と大きく分けられ、自身がどれを突き詰めて行っていくのか、またほぼすべての癌に精通しなければならないので、どの癌について誰にも負けない知識を身に着けていくのかなど考えていく必要あります。もちろん幅広く技術・知識は身についた方がよいのですが、色んな疾患を学んでいく中で、自身はどんな治療、どんな疾患に知識欲が揺さぶられるのか感じながら学んでいってください。神戸大学放射線腫瘍学教室は、昔から粒子線治療にも歴史があり、そういった豊富な環境を最大限利用し、若い先生には幅広く経験していただこうと思います。
放射線治療医はまだまだ数が少ないです。みなさんの力が必要です。また多くの学士入学の方、一度他の大学を卒業した方、また転科してこられる方が多いのも特徴です。ぜひ放射線治療を一緒にしませんか?
臨床
- 外来
- 初診患者さんの診察に立ち会い、放射線治療の適応の判断や他科連携の現状を学ぶ。
通院治療中の患者さんの診察を通じて急性期有害事象や生活のサポートの仕方を身につける。 - 病棟
- 当科の入院患者さんの病棟管理を通じて、全身管理や放射線治療に伴う急性期有害事象についての理解を深める。
- 治療計画
- 治療計画装置を用いて実際に治療計画を作成することを通じ、放射線治療の実際を体験する。
- 他科との
カンファレンス - 頭頸部癌、消化器、呼吸器、婦人科、骨軟部など領域別の多くのカンファレンスへの参加を通じて、他科連携や集学的治療の実際を学ぶ。
Tumor board, BMB(Bone metastasis board)などの多診療科・多職種を含むカンファレンスを通じて、病院全体を挙げた取り組みを体験する。
研究
- 産学連携
- 吸収性スペーサ「ネスキープ®」に代表されるような、企業との連携により新規の医療器具や薬剤を創出する研究に携わる。
- 他大学連携
多施設共同研究 - 他大学との連携により、互いの強みを組み合わせることでより高度で大規模な研究が可能になります。
また、学会・研究会等の主導する他施設共同研究にも参加しています。
医学物理士 medical physicist
医学物理⼠コース
物理学に関連する科学的知識を医療の分野に応用する職業である「医学物理士」の育成を行うコースです。
本コースは、医学物理士認定機構から教育コースとして認定されており、在学生は修士課程において1年間在籍することで医学物理士試験の受験資格を得られるメリットがあります。また、医学物理士試験合格後は医学物理士に認定されるまでの実務期間に優遇があることもメリットと言えます。
医学物理士の役割は様々な分野に及びますが、当コースではその中でも、放射線治療計画の最適化や検証を主な使命とする放射線治療分野を扱っています。実際の臨床業務に携わりながら、医学物理士認定機構が実施する医学物理士認定試験および認定審査を通過し資格を得ることを目指します。当教室には、診療放射線技師、理工学、生命科学など多彩な背景を持つメンバーが在籍しています。それぞれに合わせたカリキュラムで試験の合格及び学位の取得を目指して研鑽しています。
医学物理士はまだまだ歴史の浅い資格ではありますが、自由な発想で放射線医療に役立つ研究開発ができる強みがあります。興味を持たれた方はぜひ一緒に兵庫県の放射線治療をよりよくしていきましょう。さらには世界的な研究で日本の(さらには世界の)放射線治療や医学物理を変えていくことを目指しませんか。
年間予定 annual events
日本医学放射線学会総会
毎年4月中旬の4日間、横浜市のみなとみらいにあるパシフィコ横浜で開催され、放射線腫瘍科や診断科の医師だけでなく、医学物理士や放射線技師、看護師も参加する日本で一番大きな放射線科の学会です。
毎年大きなテーマがあり、そのテーマに沿ったシンポジウムや講演、セミナーが開かれます。
ちなみに2024年のテーマは「変革の時代を先導する: Leading an Era ofTransformation」、2023年のテーマは「Be a Game Changer in Medicine with Radiology」で、AIの活用やライフワークバランスなどのシンポジウムが開かれました。我々の教室からも、研究発表や新しい知見の獲得、情報交換など様々な目的をもって多くの医局員が参加しています。
日本医学放射線学会総会
毎年秋に開催され、日本全国の放射線腫瘍科に関係する医師・医学物理士・放射線技師・看護師が一堂に会する放射線腫瘍科の学会です。
各施設の持ち回りで開催されますので、4月の日本医学放射線学会総会とは異なり日本各地で開催されます。新型コロナウィルス感染拡大の影響で、2020年(北海道大学主催)・2021年(山形大学主催)は残念ながらオンライン開催となりましたが、2022年(広島大学主催)から現地開催が復活しました。学会では普段は会うことのない様々な施設の放射線腫瘍科の先生方と意見交換ができ、非常に有益な学術交流の場ですので、ほぼ全ての医局員が参加しています。
2024年は山梨大学が主催で、「至誠慧眼―常識の見直しと新次元のPGRT:patient guided radiotherapy」というテーマのもと、3日間の学会開催が予定されています。