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教室の歴史

生化学・分子生物学講座 分子細胞生物学分野

初代—馬淵秀夫(まぶち ひでお)教授(昭和22年-昭和41年)

生化学第一講座は,医化学講座として大阪大学から兵庫県立医科大学教授に赴任した馬淵秀夫によって創設された。馬淵秀夫教授は航空医学講座の出身で,航空生理学が専門であった。疲労におけるグルクロン酸抱合とビタミンCの生合成について研究した。当時の助教授であった白井陽一を中心に,グルクロン酸抱合機序の解明,また講師であった大久保達也を中心に肉芽組織のムコ多糖類合成機構が研究された。馬淵教授は20年間研究室を主催し,多くの門下生を育てた。昭和39年に医化学講座は生化学講座と改称された。

2代—白井陽一(しらい よういち)教授(昭和41年-昭和45年)

2代目の教授として当講座助教授白井陽一が就任した。白井教授は,馬淵渕教授の助教授時代からの研究テーマであったグルクロン酸抱合による解毒機構の解明をテーマとし,グルクロン酸代謝経路の確立につとめた。助教授であった若林正雄はβ-グルクロニダーゼの生体内分布の研究をし,酵素の帰巣性を提唱した。また白井教授は,神戸大学医学部インドネシア学術調査隊のメンバーとしても活躍し,海外技術協力に尽力した。昭和44年の生化学第2講座の発足に伴って,医化学講座は生化学第1講座に改名された。白井教授は就任4年後の昭和45年に病気のため逝去した。

3代—木幡 陽(こばた あきら)教授(昭和46年-昭和59年)

3代目の教授として米国国立衛生研究所(NIH)客員研究員木幡陽が就任した。木幡教授は東京大学大学院薬学修士課程終了後,武田薬品工業株式会社に9年間勤務し,その後同社を退職してNIHにて研究に従事した。38歳で神戸大学に着任した後,複合糖質の中でも,当時ほとんど未開拓であったアスパラギン結合糖鎖の構造解析に着手した。以後,神戸大学に在職中の12年間で,アスパラギン結合糖鎖の微量解析法“ヒドラジン分解法”の開発やアスパラギン結合糖鎖の基本構造としてバイセクト型の発見,ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の糖鎖構造の癌化による変化の解明などの業績をあげた。また,村松喬(鹿児島大学・名古屋大学),田井 直(東京都臨床医学研究所),水落次男(東海大学),山下克子(佐々木研究所),小出典男(岡山大学),溝口明(三重大学)を教授・部長・PIとして輩出した。昭和48年の生化学第二講座の発足に伴って生化学講座は生化学第一講座に改称された。木幡教授は昭和57年東京大学医科学研究所教授に異動した。

4代—高井義美(たかい よしみ)教授(昭和59年-平成6年)

4代目の教授として神戸大学医学部生化学第二講座助教授高井義美が就任した。高井研究室では生化学第二講座在籍中に行なっていたプロテインキナーゼCの研究をやめて,Gタンパク質の研究を行なった。Rasがん遺伝子産物(Ras)と共にRasと類似した分子量を示すGタンパク質を多数分離精製してその一次構造を決定し,これら一群のGタンパク質を低分子量Gタンパク質と命名し,その機能と活性化機構および作用機構を明らかにした。現在では,低分子量Gタンパク質は,100種類以上のメンバーからなるスーパーファミリーを形成しているが,高井研究室ではRap1とRab3を最初に発見し,さらにRab3の活性制御分子である,Rab GDIやRab3 GEP,Rab3 GAP,標的分子であるラブフィリン−3を発見し,これら一連のRab3とその関連分子が細胞内小胞輸送,特に神経終末からの神経伝達物質の放出を制御することを解明した。また,ウシ脳から精製したRab3とRap1,RhoのC末端にゲラニルゲラニル基が結合しており,この脂質修飾がこれらの低分子量Gタンパク質とその活性制御因子との結合とその活性制御に関与していることを解明した。貝淵弘三(奈良先端大学・名古屋大学),菊池章(広島大学・大阪大学),田中一馬(北海道大学),畑裕(東京医科歯科大学),苅谷研一(琉球大学),佐々木卓也(徳島大学),中西宏之(熊本大学),宮崎章(昭和大学),山下孝之(群馬大学),星島正彦(University of California, San Diego),黒田真也(東京大学),岸田昭世(鹿児島大学),平田健一(神戸大学),堀内久徳(東北大学),竹山宜典(近畿大学),藤岡宏幸(兵庫医療大学),小澤修(岐阜大学),堀裕一(神戸大学),西村範行(神戸大学)を教授・PIとして輩出した。高井教授は平成6年に大阪大学医学部分子生理化学教室教授に異動した。

5代—山村博平(やまむら ひろへい)教授(平成6年-平成18年)

5代目の教授として福井医科大学教授山村博平が就任した。就任早々の平成7年1月に阪神淡路大震災に遭遇し,赴任最初の仕事は研究室や機器の修復整備であった。スタッフとして大阪大学から南康博助教授と福井医科大学から柳茂助手および定清直助手が着任した。神戸大学では,福井医科大学で発見したタンパク質チロシンキナーゼSykの多彩な生理機能を解明した。さらに,南康博助教授が形態形成と器官形成に重要な役割を果たす新たな受容体型チロシンキナーゼRorを,後任の助教授の柳茂がミトコンドリア機能を制御するMitolを発見した。定講師はアダプタータンパク質3BP2とユビキチンリガーゼCbl-bの新たな制御機構を,通山由美助教授は貪食作用におけるSykの機能を解明した。南康博(神戸大学),柳茂(東京薬科大学),定清直(福井大学),通山由美(姫路獨協大学),松阪諭(筑波大学),高橋秀典(京都女子大学・岐阜市立女子短期大学),石原逸子(産業医科大学・神戸市看護大学),曲秀娟(中国医科大学)を教授として輩出した。平成13年大学院部局化とともに生化学第一講座はゲノム科学講座機能ゲノム学分野に改称された。山村教授は医学科長,医学部長・研究科長を歴任し,平成18年に定年退職した。

6代—高井義美(たかい よしみ)教授(平成18年-平成25年)

6代目の教授として大阪大学大学院医学系研究科生体生理医学専攻生化学・分子生物学講座教授から高井義美が再就任した。大阪大学では新規の細胞間接着分子であるネクチンとこれをアクチン細胞骨格に連結するアファディンからなる新しい細胞間接着装置を発見し,この細胞間接着装置がカドヘリンによる細胞間接着を制御することを明らかにしていたが,神戸大学では異種細胞間接着機構の解明に着手した。生体内では隣り合う同種あるいは異種の細胞が互いに接着して組織や臓器を形成している。例えば,精巣では精子細胞とセルトリ細胞が,内耳コルチ器の感覚上皮では有毛細胞と支持細胞が接着している。カドヘリンはこれらの異種細胞間接着を制御することはできなかったが,ネクチンがこれらの異種細胞間接着を制御することを明らかにした。また,ネクチンとアファディンが記憶・学習に必須の神経シナプスの形成と機能(シナプスの伝達と可塑性)に関与していることを解明した。現在では,ネクチンを介する細胞間接着装置はアルツハイマー型認知症や統合失調症,パーキンソン病,がんなど種々の疾患と関連していることが明らかにされている。扇田久和(滋賀医科大学),力武良行(神戸薬科大学),下野洋平(藤田医科大学),萬代研二(北里大学)を教授として輩出した。平成19年ゲノム科学講座機能ゲノム学分野は生化学・分子生物学講座分子細胞生物学分野に改称された。また,平成22年に分子細胞生物学分野に病態分子細胞生物学部門(連携大学院)が設置された。高井教授は医学科長,医学部長・研究科長を歴任し,平成25年に定年退職して,エーザイ寄附講座であるシグナル統合学分野病態シグナル学部門 特命教授に異動した。

7代—鈴木 聡(すずき あきら)((平成28年-現在)

7代目の教授として九州大学生体防御医学研究所教授鈴木聡が就任した。平成29年4月から2年間医学部附属動物実験施設長を務め、平成31年4月からは共同研究施設長を務めている。

教室の現況について

がんは死因の第1位であり,かつ依然増加の一途をたどり,人類にとって最も脅威な疾患である。当分野では分子生物学,細胞生物学・発生工学等の技術を駆使して,「がん関連遺伝子の機能とその破綻病態の解明,およびがん関連遺伝子を標的とする治療薬開発」の研究を行っている。
多くのがん遺伝子やがん抑制遺伝子の異常は,がんの発症進展のみならず,がん以外の多くの主要な疾患の発症や,個体の発生・分化にも深く関わっていることが分かってきた.このことから,がん関連遺伝子研究はがんのみならず,生活習慣病等の多くの疾患の治療法開発につながることが期待される。
私たちはこれらがん関連遺伝子の中でも,最近注目されつつあるHippo経路,がん抑制遺伝子の代表格であるp53やPTENの機能やその制御機構を解析し,これら遺伝子を標的とする新規治療薬開発にも取り組んでいる。
これらの研究により、平成28年度文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)を受賞した。またHippo経路を標的とする薬剤や、世界最速発がんモデルマウスの開発で、特許申請も行った。 我々の研究によって,がんを含む多くの疾患の発症・進展機構が解明されるとともに,新規治療薬を開発して,医療に貢献したいと考えている。
平成30年には准教授の下野洋平が藤田医科大学生化学教室に昇任した。
令和2年7月1日現在のスタッフは、鈴木 聡教授、前濱朝彦准教授、西尾美希講師、富樫 英学内講師、大谷淳二助教となっている。客員教員は、TAK WAH MAK教授(トロント大学)、竹縄忠臣教授、片桐豊雅教授(徳島大学)、井垣達吏教授(京都大学)であり、その他、臨床からの派遣も含めた博士課程学生6名である。(休学中を除く)


歴代教授の紹介

馬渕 秀夫 先生 (昭和22年2月27日 - 昭和41年3月31日)

大正14年 大阪医科大学(現 大阪大学)卒
・兵庫県立医科大学医化学講座 
・神戸医科大学医化学講座 
・神戸大学医学部医化学講座 

白井 陽一 先生 (昭和41年10月16日 - 昭和45年5月13日)

昭和16年 大阪大学卒
・医化学講座
・生化学第一講座
       

木幡 陽 先生 (昭和46年11月1日 - 昭和59年3月31日)

昭和31年  東京大学医学部薬学科卒
・生化学第一講座 
 
 

高井 義美 先生 (昭和59年9月1日 - 平成6年3月31日)

昭和49年  神戸大学卒
・生化学第一講座 
 
 

山村 博平 先生 (平成6年10月1日 - 平成18年3月31日)

昭和42年   神戸医科大学卒
・生化学第一講座 
・ゲノム科学講座機能ゲノム学分野
 

高井 義美 先生 (平成18年4月1日 - 平成25年3月31日)

昭和49年  神戸大学卒
・ゲノム科学講座機能ゲノム学分野 
・生化学・分子生物学講座 分子細胞生物学分野
 

鈴木 聡 先生 (平成28年4月1日 - 現在)

昭和60年  秋田大学卒
・生化学・分子生物学講座 分子細胞生物学分野 

 

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