もしものときに、自分で決めたり、自分の気持を伝えられなくなったりするとしたら、前もって自分の気持ちを書いて残しておけばよいのではないかというふうに多くの人がお考えになるかもしれません。

このような書類を作成する取り組みのことを、事前指示書(アドバンス・ディレクティブ)と呼びます。
リビング・ウィルやエンディングノートなども、ご本人が「書いておく」という点で、似通った取り組みになるかもしれません。

事前指示書が実際に役立つかどうかを調査

事前指示書が実際に役立つかどうかを調査した大きな研究がアメリカ合衆国で行われています。(1)
その結果は驚くべきものでした。

事前指示書を書いた人と書かなかった人で、事前指示書に書かれたご本人の希望する医療やケアが尊重される割合は変わらず、医療への満足度も変わらなかったのです。

治療への満足度も変わらなかった理由

更になぜこのような結果になったのかを検討した結果、ご本人が家族など信頼できる方々(つまり、もしもの時に「あなたなら、きっとこう考えるだろう」と想像し、医療・ケアチームと共に今後の方針について話し合いをしてくれる方々)との十分な話し合いを行っていないと、たとえ事前指示書が書かれていても必ずしもその内容が尊重されないことが明らかにされました。

事前指示書やエンディングノートそのものは、たいへん良い取り組みなのですが、ぜひその内容をあなたの信頼できるご家族やご友人、そして身近な医療・ケアチームに伝え、話合い共有しておくと、よりご希望が叶えられやすいということです。

肝心な時に、事前指示書やエンディングノートが見つからない、もしくは見られる環境にない場合、あなたの大切にしたいことなどの価値観や希望に関しての情報がないままでは、あなたのお気持ちを推定することができなくなってしまう可能性があります。

これが、ちゃんと話をしておく「人生会議」をお勧めする理由です。

もちろん、記録に残しておければ、さらに良いでしょう。

出典
(1) JAMA 1995;274:1591-8.