医局からのお知らせ

  • 2022.11.03
  • お知らせ
  • 【研究成果】中西信人らの原著論文がFrontiers in Immunologyに掲載されました

  • Nakanishi N, Ono Y, Miyazaki Y, Moriyama N, Fujioka K, Yamashita K, Inoue S*, Kotani J. Sepsis causes neutrophil infiltration in muscle leading to muscle atrophy and weakness in mice. Frontiers in Immunology 2022, 13, doi:10.3389/fimmu.2022.950646.
    *Corresponding author

    敗血症、すなわち臓器障害をともなう重症感染症では、骨格筋萎縮や筋力低下が頻繁におこります。しかしその原因やメカニズムは未だに分かっていないことが多くあります。その一つが骨格筋萎縮と免疫の関係です。特に好中球という免疫細胞と筋萎縮の関係はこれまで不明でした。

    今回当科の中西らの研究チームは、敗血症モデルマウスを用い、骨格筋萎縮がどのようにおこるか、また筋肉や血液の中で好中球がどのような動態を示すのかを調べました。マウスに敗血症を導入すると、骨格筋萎縮や筋力低下は徐々に進行し、2ヵ月後でも骨格筋萎縮、筋力低下を認めました。そして好中球の推移を調べたところ、血液中では好中球が敗血症罹患後急激に増加、一方で骨格筋肉中の好中球は約2週間後に増加することが分かりました。

    次にこの増加した骨格筋中の好中球が、骨格筋萎縮の原因となっているかもしれないという仮説をたて、敗血症の程度を4段階に分けました。敗血症の程度が強いほど、骨格筋萎縮、筋力低下が顕著であり、筋肉中の好中球も同じように増加していることが分かりました。
    その裏付けるために好中球中和抗体を亜急性期からマウスに使用しました。
    好中球中和抗体を使用するとマウスの筋肉中の好中球が低下し、さらに筋萎縮や筋力低下の程度も軽減しました。

    これらの結果は、骨格筋中の好中球が、骨格筋萎縮や筋力低下の原因になっている可能性を示唆します。敗血症にともなうSIRS (Systemic Inflammatory Reaponse Syndrom:全身性炎症反応症候群)でおきる臓器障害の一つとして、好中球が筋肉の障害をきたしてい可能性を示しました。今後の治療介入につながる重要な研究成果と考え、ここに紹介させていただきます。

    本論文の全文は、以下のリンクからご覧になれます:
    https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fimmu.2022.950646/full?&utm_source=Email_to_authors_&utm_medium=Email&utm_content=T1_11.5e1_author&utm_campaign=Email_publication&field=&journalName=Frontiers_in_Immunology&id=950646nakanishi_221031.png


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