医局からのお知らせ

  • 2021.11.10
  • お知らせ
  • 【研究成果】大野 雄康らの研究成果が PLOS ONE (2021) に掲載されました

  • 本邦では、現在救急救命士が施行可能な処置は限られており、医師/看護師を現場に投入するドクターカーシステムが普及しています。重症外傷の救命の鍵は、早期の確定的止血です。しかしドクターカーシステムが決定的治療開始を早期化し、外傷患者の予後の改善に寄与するかどうかは不明でした。今回、当科の大野らは福島県太田西ノ内病院の外傷データベースを使用し、この臨床的疑問の解決を試みました。

    2002年1月1日から2019年12月31日に同院に搬送され、緊急手術や緊急経カテーテル的動脈塞栓術 を受けた1020名の外傷患者を対象とし、ドクターカー搬送群と通常救急車搬送群の病院前滞在時間、確定的治療までの総経過時間、院内滞在日数、および死亡率を比較検討しました。
    外傷患者の生理学的・解剖学的重症度、年齢、性別、基礎疾患などを傾向スコアマッチングを用いて調整し解析したところ、ドクターカー群では、通常救急車群に比較して有意に病院前滞在時間 (71.0分 vs. 41.0分, P < 0.001)、 確定的治療までの総経過時間 (189.0分 vs. 177.0分, P = 0.002)、および院内滞在日数 (38.0日 vs. 29.0日, P = 0.0073) が延長していました。この2群間で死亡率に差はありませんでした (8.8% vs 9.8%; OR 0.89; 95% CI 0.51-1.55)。

    ドクターカーで現場に投入された医師、看護師は補液、投薬、気管挿管、胸腔ドレン挿入などの救命処置を施行し病院搬送を行います。しかし、現場で施行されるこれらの処置は、いずれも確定的止血ではないため、今回のような結果が得られたと推察します。
    本研究は外傷ケアに対するドクターカーシステムの使用に対し、一石を投じる重要な成果と考えられます。

    本研究結果は以下のリンクからご覧になれます:
    https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0259733

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