医局からのお知らせ

  • 2022.12.17
  • お知らせ
  • 【研究成果】大野 雄康らの原著論文がFrontiers in Pharmacologyから出版されました

  • Ono Y, Saito M, Sakamoto K, Maejima Y, Misaka S, Shimomura K, Nakanishi N, Inoue S and Kotani J (2022). C188-9, a specific inhibitor of STAT3 signaling, prevents thermal burn-induced skeletal muscle wasting in mice. Front. Pharmacol. 13:1031906. doi: 10.3389/fphar.2022.1031906

    熱傷は、非常に大きな生体生体侵襲であり、生体侵襲は全身性炎症反応症候群 (SIRS) を引き起こします。熱傷により引き起こされるSIRSにより、タンパク異化が亢進し、これにより重篤な骨格筋萎縮が発症します。熱傷誘発性骨格筋萎縮は生命予後および機能予後の悪化に関連する重大な問題です。しかし、これまでこの有用な治療法はありませんでした。

    今回当科の大野 雄康らは、炎症伝達シグナルSTAT3経路に着目し、STAT3特異的阻害剤が、熱傷誘発性骨格筋萎縮の治療薬になる可能性を見出しました。

    マウスにおいて、熱傷は侵襲度依存的にSTAT3シグナル、およびタンパク異化を亢進するユビキチンプロテアソームシグナルを活性化し、骨格筋萎縮、ならびに筋力低下を誘導しました。
    熱傷マウスから採取した血漿をマウスC2C12筋管細胞に投与すると、同様にSTAT3シグナルとユビキチンプロテアソームシグナルの活性化と、筋管細胞萎縮が誘導されました。

    STAT3特異的阻害剤、C188-9を投与すると、マウスおよびC2C12筋管細胞のモデルの両方で、STAT3シグナルとユビキチンプロテアソームシグナルの活性化が抑制され、骨格筋萎縮が改善しました。これらの実験結果は、STAT3シグナルの薬理学的抑制が、熱傷誘発性骨格筋萎縮の新規治療戦略になる可能性を示します。

    熱傷誘発性骨格筋萎縮の分子経路の理解を進め、新規の治療の基盤となる重要な結果と考え、ここに紹介させていただきます。
    論文の全文は以下のリンクからご覧になれます:

    https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fphar.2022.1031906/full

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