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 乳房縮小 

|| 乳房縮小術・固定術について

 乳房は女性にとって単なる授乳のためだけにあるものではなく、精神的にも大きな意味を持つ重要な臓器です。
美容外科では、乳房を大きくするための手術や、大き過ぎて困っておられる患者さんの乳房を小さくする手術も行なっています。
また乳房も年齢共に変化します。徐々に下垂するのはやむを得ない変化です。そのような下垂した乳房に対する手術も美容外科で行なっています。

|| 乳房つり上げ

下垂した乳房による悩み

図1:下垂した乳房による悩み(※クリックで拡大)

 これまでに出会った患者さんの訴えでは、大きすぎる乳房によって
・重くて肩がこりやすい
・洋服が似合わない
・乳房下溝に汗がたまりやすく、特に夏などは汗疹ができることもある
などといった症状をお聞きします(図1)

下垂した乳房については
・美容的に満足できない
・乳房下溝に汗がたまりやすく、特に夏などは汗疹ができることもある
などと大きすぎる乳房とよく似た悩みをお聞きします。

 実際に診察してみると、乳房下溝に傷ができていたり、白癬菌が繁殖していたりして、大変つらい状態になっているにもかかわらず、誰にも相談できず、そして相談してもわかってもらえず、お一人で悩んでおられる方が多い印象があります。

 このように生活に支障を来す状況ですが、病気ではないので手術に保険は適応されません。
現時点では、美容外科で自費で手術を受けていただくしかないのです。

 そこでまた違った問題が出てきます。
乳房縮小術・乳房固定術はそれなりに規模の大きな手術で、乳がんの手術と変わらない規模です。しかも乳がんは片方の乳房の手術であることが多いのに対して、乳房縮小術は両方の乳房を手術することを考えると、体の負担は乳がんの手術よりも大きいこともあります。手術時間もそれなりに長時間に及びます。
麻酔も全身麻酔で行い、入院設備が整っていることが望ましいことが多いのです。
が、美容外科でそのような設備を備えている施設はほとんど無いのが現実です。
そのため、この手術を提供している施設は多くはないと思われます。

|| 乳房縮小術・乳房固定術について

 どの程度小さくするかによって手術の方法は変わります。

ドーナツ型皮膚切除法
ドーナツ型皮膚切除による手術
ドーナツ型皮膚切除による手術

図2-1:ドーナツ型皮膚切除による手術
図2-2:ドーナツ型皮膚切除による手術
(※クリックで拡大)

 あまり大きな変化が必要ない場合には、乳輪の周囲の皮膚をドーナツ型に切り取る方法を提案しています(図2-1)
 外側の皮膚の裏側に糸をかけを、巾着袋の口を閉じる要領で引き絞って縮めて、縫い合わせます(図2-2)

【長所】
傷は乳輪の周囲にしかできないので、目立ちにくい。
【短所】
乳輪の周りにギャザー(細かい皺)ができます。
多くの場合は、時間と共に目立たなくなっていきますが、人によっては目立ってしまう場合もあります。
特に傷を小さくしたいがために、無理にこの方法を選択した場合には、このギャザーが残ってしまう傾向にあります。








縦型皮膚切除法
縦型皮膚切除による手術
縦型皮膚切除による手術

図3-1:縦型皮膚切除による手術
図3-2:縦型皮膚切除による手術
(※クリックで拡大)

 木の葉型に皮膚を切り取り、縦型に縫い縮める方法です(図3-1)

【長所】
縦方向に傷を延長することで、ドーナツ型に皮膚を切除した場合に生じるギャザーを消すことができます。
乳輪の下の傷は比較的目立ちにくいことが多いです(図3-2)

【短所】
乳輪の下の傷が目立ってしまうことがあります。
乳輪乳頭の位置が上昇します。乳輪乳頭の位置が上昇することは、アンチエイジングのためには良いことです。が、下垂が進行してしていて、乳輪乳頭と乳房下溝の間の長さが伸びてしまっている方には、乳房全体のバランスが悪くなるために、この方法はお勧めしていません。






逆T字切除法
逆T字型皮膚切除による手術
逆T字型皮膚切除による手術

図4-1:縦型皮膚切除による手術
図4-2:縦型皮膚切除による手術
(※クリックで拡大)

 縦型切除法は切除する皮膚を木の葉型にデザインし、縦型に縫い合わせました。そのために横方向の皮膚のたるみを取るには適して方法でしたが、縦方向の皮膚のたるみを取ることはできないため、下垂の程度によってはバランスの悪い乳房になってしまう方法です。
逆T字切除法では、それに加えて乳房下溝付近で横方向にもデザインを加え、乳房下溝に合わせた横方向に縫い合わせる方法です(図4-1)

【長所】
縦方向と横方向のどちら方向にもたるみが取れるために、綺麗な形状に仕上げることができます。

【短所】
傷が長いことが最大の欠点です。形成外科的な縫合手技を用いて、丁寧に縫合しますが、人によっては傷が目立ってしまう場合もあります(図4-2)

|| 乳房縮小術・乳房固定術で得られるメリット

1)若々しくて綺麗な形状の乳房が得られます。
2)乳房のボリュームを減らすことも可能です。
3)乳房下溝付近の「汗がたまる」などといった症状を改善できます。

|| 乳房縮小術・乳房固定術の合併症

1)傷あと

 当科では形成外科的な縫合手技を駆使して、丁寧に縫合しますが、どうしても傷あとは残ってしまいます。

2)血腫

 手術中にどれだけ丁寧に止血しても、血液が皮膚の下にたまってしまうことがあります。血腫は感染の原因にもなりますので、手術中に細いチューブを傷口に挿入しておく処置を追加しています。チューブは術後に引っ張れば抜けるように固定しています。

3)感染

 手術である以上は、感染の危険性をゼロにすることは不可能です。
当科では清潔度の高い、きちんと管理された手術室および手術器具の使用、科学的な根拠に裏付けられた適正な抗生剤の使用など、感染の減少に務めています。

4)皮膚の壊死

 手術で皮膚を広く剥がすと、皮膚の血流が不安定になることがあります。皮膚の血流が悪くなると、皮膚に酸素が行き渡らなくなり、組織がダメージを受けてしまうことがあり、そのひどい状態が壊死です。
多くの場合は、軟膏を用いて、傷口の安静を守ることで治癒しますが、場合によっては追加の処置(壊死した部分を取り除く)が必要となることもあります。
また壊死が乳輪乳頭におよんだ場合には、美容的に大きな障害となることがあります。

5)乳輪乳頭の知覚異常

 乳輪乳頭は赤ちゃんが乳頭を吸うと、その信号を脳に送り、乳汁の分泌を増やすなど非常に繊細な知覚を有しています。手術によって知覚が低下する(鈍くなる)可能性があります。
その程度は手術の規模などによって左右されますが、多くの患者さんは徐々に低下した知覚も回復してきますが、その回復にはバラツキがあることをご理解ください。

6)左右差

 元々、女性の乳房の形状、大きさ、位置は左右で異なっているのが普通です。
もちろん術前のデザインは、患者さんと相談しながら進めますが、完全に揃えることは難しいことをご理解ください。

7)喫煙と合併症の関係について

 ここで注意を喚起したいのは喫煙です。喫煙は術後の感染を増加させる原因であることが判明しています。他にも糖尿病などの基礎疾患、肥満など感染率を高める患者さん側の要素はあるのですが、それらはすぐに改善できるものではありません。しかしながら喫煙は今すぐにでもやめることは可能です。
感染以外にも組織の血行への悪影響、麻酔への悪影響など、喫煙は手術に非常に悪いものであることをご理解ください。

 当科では手術を希望される患者さん全員に、禁煙をお願いしています。
美容外科の手術は、健康な身体にメスを入れるものであり、患者さんご本人の希望によるものです。美容外科の手術をお受けになるなら、禁煙をセットでお考えいただきたいと思います。

※手術費用のほかに、術前検査代、入院費、場合によっては全身麻酔代が別途かかります。

 



(文責:神戸大学病院美容外科診療科長 原岡剛一)

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