合併症(てんかん)とはEpilepsy
てんかんと神経発達症の関連について
神経発達症との合併頻度が特に高いてんかんを例に挙げて代表的な神経発達症である自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如多動症(ADHD)との関連について紹介します。
てんかんは、脳の異常な電気活動によって引き起こされる慢性の神経疾患であり、発作は脳の一部または全体で異常な電気信号が突然発生することで起こります。これにより、短時間の意識喪失、体の一部のけいれん、全身のけいれんなど、さまざまな症状が現れます。
ASDとてんかんの合併

自閉スペクトラム症(ASD)とてんかんの合併はよく報告されています。研究によって割合は異なりますが、ASDの数%から30%程度がてんかんを合併しているとの報告があります*1),2)。逆に、てんかん患者の16%から21%がASDを合併していたという報告もあり(米国の全国調査や英国の地域研究に基づく)*3),4)、てんかんとASDの関連性が示唆されています。
ADHDとてんかんの合併
注意欠如多動症(ADHD)もてんかんとの合併が多いことが知られています。2003年から2009年のイスラエルで行われた人口の約4分の1を対象とした研究では、6歳から13歳の子どものてんかん有病率は0.5%でしたが、ADHDの子どものうち12.6%がてんかんを合併していました。逆に、てんかんの子どもの27.2%がADHDを併発していたことが報告されています*5)。さらに、BECTS(中心・側頭部に棘波を伴うてんかん)の小児患者の60%にADHDが見られるという、より高い合併頻度の報告もあります*6)。
脳波治療について 〜脳波上の異常波の減少と行動改善の可能性〜
てんかん性の脳波異常を有するADHDの児童35例を抗てんかん薬で治療したところ、18例で行動が改善したとの報告があります*7)。このことから、脳波異常の治療がADHD症状の改善につながる可能性が示唆されています。
1) Lai MC, et al. Lancet. 2014.
2) Thomas S, et al. J Autism Dev Disord. 2017.
3) Russ SA, et al. Pediatrics. 2012.
4) Reilly C, et al. Pediatrics. 2014.
5) Cohen R et al., J Child Neurol. 2013.
6) Arico M et al., Epilepsy Behav. 2020.
7) Bakke KA., et al., Eur J Paediatr Neurol. 2011.
2) Thomas S, et al. J Autism Dev Disord. 2017.
3) Russ SA, et al. Pediatrics. 2012.
4) Reilly C, et al. Pediatrics. 2014.
5) Cohen R et al., J Child Neurol. 2013.
6) Arico M et al., Epilepsy Behav. 2020.
7) Bakke KA., et al., Eur J Paediatr Neurol. 2011.