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研究テーマ
膵がんの発生・進展機構の解明と早期診断・治療標的の探索に向けた基盤研究
病態ステージに応じた膵がんオルガノイドの樹立と分化系列・発生段階に基づく分類手法の確立
膵がんの発生段階をin vitroで再構成することを目的として、正常膵上皮、前がん病変(PanIN、IPMN、MCNなど)、超早期がん、進行がんに至る各病態ステージに対応した膵臓オルガノイドを患者検体から樹立します。特に、前がん・初期がん段階に特化した培養条件の最適化を行い、組織内の不均一性を反映する複数のオルガノイドクローンを同一症例から取得します。
得られたオルガノイド群に対しては、擬似時系列解析(pseudotime analysis)や細胞起源(cell of origin)に基づく分子分類を行い、膵がんの多様性を発生系列に沿って構造化します。これにより、オルガノイドモデルを用いた膵がんの自然史的理解を深め、病態ステージに依存した診断・治療戦略の基盤を構築します。

膵がんの発生・進展機構の解明と早期診断・治療標的の探索に向けた基盤研究
がん化の機能的再構成と質的破綻に基づく新規診断・治療標的の探索
正常膵上皮や前がん病変由来オルガノイドから、遺伝子編集技術を用いてゲノム修復に重要なTP53を欠損させ、長期培養を行うことでがん化プロセスを再現します。さらに、再現したがん化プロセスを解析し、膵がんの初期イベントに関わる分子メカニズムを明らかにします。また、膵がんで頻発するBIG4変異(KRAS、TP53、CDKN2A、SMAD4)をすべて有しながらも腫瘍形成能を欠くオルガノイドの比較解析を通じて、腫瘍性獲得に不可欠な非ゲノム因子の同定を目指します。
がん細胞が示す特徴的な性質の一つである足場非依存性増殖(anchorage-independent growth)の評価には、soft agar colony formation assayを用い、正常細胞とがん細胞の間に存在する構造的・機能的破綻を定量的に捉えます。また、単なる増殖や生存といった量的な指標だけでなく、分化系列の乱れや足場依存性の喪失といった質的な細胞性状の異常にも注目し、がん特異的な診断・治療標的の探索を行います。
さらに、エピゲノム制御因子(例:MLL3/4、LSD1など)の異常に着目し、機能的な化合物スクリーニングを通じて、分化状態や腫瘍性に依存するエピジェネティック脆弱性の発見を目指します。

膵がんの発生・進展機構の解明と早期診断・治療標的の探索に向けた基盤研究
超早期・早期段階における膵がん診断・予防に資するマーカー分子の網羅的探索と実用化検証
膵がんと正常膵組織および他臓器との分子差を明らかにするために、TCGA、GTEx、ENCODE、Human Cell Atlasなどの公的データベースに収録されたゲノム、エピゲノム、bulk RNA-seq、scRNA-seq、プロテオームなどの多層的オミクスデータを統合解析し、膵がんに特異的なマーカー候補を網羅的に抽出します。
抽出された候補分子については、オルガノイドモデルを用いた発現および機能の検証を通じてスクリーニングを行います。さらに、エクソソーム上に提示されるマーカーについては、エクソソームをチップ上で高感度に捕捉・可視化できるExoView技術を活用し、血中での検出可能性を評価します。
最終的には、膵がん患者由来の血液・膵液・十二指腸液などの臨床検体を用いた検証を通じて、超早期段階における診断・モニタリング・予防的介入に資する実用的なバイオマーカー技術の確立を目指します。

