- 教授:小幡 典彦
私は、2025年(令和7年)6月1日より神戸大学大学院医学研究科外科系講座麻酔科学分野の教授を拝命いたしました。
神戸大学医学部麻酔科学講座(現・神戸大学大学院医学研究科外科系講座麻酔科学分野)は、1968年(昭和43年)1月に初代教授として岩井誠三先生が着任し開講しました。岩井先生は、1971年(昭和46年)に小児麻酔研究会(現・日本小児麻酔学会)を立ち上げられ、日本の小児麻酔の発展にも大きく貢献されました。1990年(平成2年)1月には、尾原秀史先生が第二代教授に着任され、翌年の1991年(平成3年)には附属病院に集中治療部が開設されました。その後、2007年(平成19年)7月に前川信博先生、2013年(平成25年)10月に溝渕知司先生へと引き継がれ、これまでに多くの優秀な医療人を輩出し、幾多の場面で麻酔科学の発展に寄与してきた歴史と伝統のある教室です。
神戸大学の麻酔科では開講以来、 “生理学を基礎とした全身管理学“を追求し続けています。麻酔科医には、術中管理はもちろんのこと、術前の最適化から術後管理までをしっかりと全うできる能力が求められます。さらには、麻酔科医として、集中治療や救急医療、疼痛治療、無痛分娩などの領域においても高い専門性を持つべきです。また、手術室や集中治療室、医療安全部門など、病院の中枢機能の一角を担うべき立場にもあります。このように、麻酔科学は医学の中で非常に幅広い領域をカバーしており、診療においては単なる手技や知識の習得だけでなく、逼迫した場面においても柔軟な思考力と総合的な判断力が必要とされます。正しい知識と技術に加えて、問題解決能力やチーム医療でのリーダーシップ、さらには人間性と社会性を持ち合わせた、未来の医療を担う麻酔科医を育成していくことが、我々の大きな使命の一つであります。学ぶ立場にあるべきものには、しっかりと成長するための「学びの環境」を与え、大学病院の中はもちろん、地域医療に携わるすべての方々と共に学び、成長できる体制を構築していきます。
医師の働き方にも多様化が進んでいます。それぞれの環境に合わせて働きやすく、その中でもそれぞれがやりがいや目標をもって仕事ができるような、お互いに思いやりのある職場であり続けたいです。多様な考えや発想を歓迎することで、様々な状況に適応できる集団となることができます。そして、根底には共通の志を持ち、いざというときには同じ方向にむかって団結できる集団でありたいと考えています。特に、“Patient First”、ひとりひとりの患者さんに最適な医療を提供するために、常に何よりも患者さんの利益を最優先に考える姿勢は徹底しています。また、“Research Mind”を持ち続けることも大切にしています。日々の臨床で抱いた疑問をとことん突き詰め、それを科学的に解明することで、臨床力のさらなる向上に繋げていきます。
病院を取り巻く環境は刻々と変化する中で、これまでに神戸大学麻酔科が築いてきた伝統と実績を尊重しつつも、新しい時代、新しい需要に適応し、更なる高みへと挑戦し続ける組織として、すべての患者さんのために、そして麻酔科学のさらなる発展に貢献していく所存です。どうぞよろしくお願い申し上げます。
- 医局長:巻野 将平
神戸大学医学部附属病院麻酔科は、神戸市の中心地に立地しており、教員・医員・専攻医を合わせると総勢約50人が所属する大所帯の診療科となっています。出身大学・出身地はさまざまですが、みんな仲良くアットホームな雰囲気の中で、教室のモットーであるPatient First(患者第一)の心構えで日々の診療に取り組んでいます。
年間の手術件数は約11000件で、そのうち約8000件を麻酔科で管理しています。手術内容は一般外科から心臓血管外科、小児外科、脳神経外科、帝王切開、臓器移植と多岐にわたっていますが、麻酔指導医・麻酔専門医が多数所属していますので、手厚い指導体制が可能となっています。
また当科は麻酔科専門研修プログラムの基幹病院となっていますので、近隣の専門研修連携施設と協力しながら麻酔科専門医取得が可能な施設となっています。他にもICU20床/HCU12床を有する救急・集中治療センターや年間外来患者数が約9000人のペインクリニックにおいても希望に応じて研修することが可能となっており、サブスペシャリティ取得に向けての教育体制も整えております。そして当科には多くの大学院生が所属しており、一人一人興味のあるテーマを決めて、日々の基礎研究や臨床研究に取り組んでいます。臨床における症例報告はもちろんですが、基礎研究や臨床研究の研究結果についても積極的に学会発表や論文執筆をおこなっています。神戸大学麻酔科では、医局員一人一人がそれぞれの目標に向かってステップアップしていけるような環境づくりを目指しております。
見学をご希望される方はいつでも当科までご連絡ください。お会いできる日を楽しみにしています。
令和5年9月
神戸大学大学院医学研究科 外科系講座 麻酔科学分野 医局長
巻野 将平