先天性サイトメガロウイルス感染の出生児画像検査

 先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染は、難聴だけでなく中枢神経系にも浸潤し影響をおよぼすことがあります。先天性CMV感染の中枢神経系への影響を評価する目的で、頭部画像検査が行われます。

1)頭部超音波検査
 頭部超音波検査は児への負担も少なく、新生児医療に慣れた専門医であれば容易に施行が可能なために、先天性CMV感染が疑われた場合には、新生児期に積極的に行うべき検査とされます。
 観察のポイント:上衣下偽性のう胞(先天性感染などの際にしばしば見られる所見)、脳室拡大など。
 欠点:大脳皮質などの脳表に近い部分の観察はほとんどできないため、得られる情報は限られます。上衣下偽性のう胞の所見だけでは、症状出現とは関連性は低いのですが、CMV感染が中枢神経系に何らかの影響をおよぼす可能性はあります。

2)頭部CT検査
 簡単な鎮静で実施が可能であり、脳萎縮や水頭症などの様に脳の形態的な異常があれば観察可能です。
 観察のポイント:脳内石灰化、脳室拡大、水頭症、脳萎縮など。
 特に脳内石灰化は先天性感染でしばしば見られる所見で、CT検査で同定が可能です。
 欠点:大脳白質などの微妙な変化については、CT検査だけでの評価は困難です。神経学的な予後に最も関係する大脳皮質の形成異常については、CT検査だけで正確に診断することは困難な場合が多いため、頭部MRI検査が必要になることもあります。

3)頭部MRI検査
 脳構造の細かい部分の観察が可能なため、先天性CMV感染による大脳皮質形成の異常の有無を観察することができます。また、質的な変化も描出することが可能で、大脳白質などの信号異常も観察が可能です。皮質の形成異常は、脳性麻痺などの神経後遺症が起こる可能性を示唆する重要な所見とされます。白質の信号異常は、年齢とともに縮小し改善するなどの変化を来すこともあるため、経過を見ていく必要があります。したがって、白質の信号異常の所見のみで、後遺症について予測することは現状では困難です。大脳白質の信号異常については、成熟し髄鞘化が完成していく1歳過ぎに再評価することが望ましいとされます。
 観察のポイント:大脳皮質形成異常、大脳白質信号異常、小脳低形成など。
 欠点:約30分程度、鎮静下で静かにしていることが必要であり、何らかの麻酔・鎮静が必要となります。検査中も、呼吸などを観察する必要があります。

図 頭部画像所見の頻度と神経症状との関連

担当:杏林大学医学部 小児科 岡 明
 
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