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Ongoing activation of sphingosine 1-phosphate receptors mediates maturation of exosomal multivesicular endosomes.

Kajimoto, T., Okada, T., Miya, S., Zhang, L., Nakamura, SI.

Nature Communications. 4:2712. doi:10.1038/ncomms3712 (2013)

 

エキソソームの形成機構

梶本 武利、岡田 太郎、中村 俊一

細胞工学 Vol.34 No.2 エンドソームの多彩な機能 2015年2月号

 

 エクソームは各種細胞から放出される50〜100nmの微小膜小胞であり、様々な機能性タンパク質やRNAなどを積荷として含んでいます。細胞から放出されたエクソソームは、液性因子として生体内を循環・拡散し、エクソソームに含まれる積み荷がターゲット細胞に作用することにより、生理的・病理的な様々な応答を引き起こすことが知られています。エクソソームに関する報告は近年爆発的に増加しており、エクソソームの積荷の解析、エクソソームの標的細胞に対する生理作用および病理作用、エクソソームの形成メカニズムなどについて多くの知見が得られつつあり、現在も世界中で盛んに研究が進められています。ただこれまで、エクソソームの積み荷を実際にエクソソームにどのようにして積み込むのか、その仕組みについては全く分かっていませんでした。

 最近私達は、スフィンゴシン1-リン酸(S1P)シグナリングが、積み荷をエクソソームへ積み込む(ソーティングする)過程で重要な役割を担うことを明らかにしました。

 具体的には、まずスフィンゴシンキナーゼ2(SphK2)によるS1Pの産生および生理活性脂質S1PによるS1P受容体の活性化のメカニズム(図1)が、細胞膜上のみならず、細胞内膜系のエクソソーム形成の場であるエクソソーム多胞体上においても細胞膜とは独立して働いていることを見出しました。さらにこの独立したS1Pシグナリングの恒常的な活性化が、積み荷タンパク質のエクソソームへのソーティングを促進することを明らかにしました。実際、エクソソーム多胞体上でのS1P産生を引き起こすSphK2やS1P受容体などのS1Pシグナリング分子の働きを阻害剤やsiRNAによりブロックすることにより、特定の積み荷タンパク質のエクソソームへのソーティングが抑制され、結果特定の積み荷の含有量が減少した”空の”エクソソームが放出されることが示されました(図2)。

 現在私達は、積み荷のエクソソームへのソーティングを、S1Pシグナリングの制御により自在にコントロールすることで、各種生理応答や疾患の制御を行うことを目指し研究を進めています。

                    

  図1 S1Pの自己分泌作用                 

              

 

  図2 S1Pによる積み荷のエクソソームへのソーティング機構

    

 

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