AQUABEAMロボットシステムによる前立腺肥大症手術「アクアブレーション」とは

前立腺肥大症に対する世界初の手術用ロボット「AQUABEAMロボットシステム」が本邦でも2023年に保険適応となりました。神戸大学泌尿器科では同年9月、全国に先駆けて本システムを導入し、神戸大学医学部附属病院国際がん医療・研究センター (ICCRC)にてAQUABEAMロボットシステムによる前立腺肥大症手術:アクアブレーションを開始しています。 アクアブレーションは、ロボットが自動で術者の切除プランに従い経尿道的に前立腺を切除します。大きな前立腺でも短時間で切除が可能で、熱を用いない高圧水噴射による切除のため周囲組織へのダメージが少なく、尿失禁や性機能障害などの合併症の低い手術です。
神戸大学での前立腺肥大症に対するアクアブレーション

AQUABEAMロボットシステムは、ICCRCに導入されています。令和6年7月の時点で、約80人の患者さんに対して手術を行い、いずれの患者さんも手術後の経過は良好です。また、この手術は従来の手術にくらべて手術時間が短く、入院期間も1週間程度となっています。
アクアブレーションの特徴
1)リアルタイム画像ガイダンス: 内視鏡だけではなく経直腸エコー画像も用いて前立腺を観察することで、前立腺の形態がより多角的にかつ正確に把握できます。 2)個別化が可能な治療計画: エコー、内視鏡で確認しながら患者さんそれぞれにあわせた切除範囲を計画します。 肥大した前立腺を切除するだけではなく、尿失禁や射精に関連する周辺組織を確実に温存するような計画が可能となり、安全性と機能温存性が格段に高まりました。 3)ロボットによる自動切除: 治療計画に従って内視鏡先端からの高圧水噴射により自動的に前立腺を切除します。自動切除のため、短時間かつ術者の経験や前立腺の大きさ及び形状に依存しない切除が可能となりました。 4)熱を用いない高圧水噴射による切除: 熱を用いない高圧水噴射で前立腺組織を切除することで周囲組織への熱ダメージを抑えることができ、尿失禁や射精障害のリスク低減することが可能となりました。
アクアブレーションの手技手順
1)患者個別の治療計画
全身麻酔の後に、経直腸エコー・膀胱内視鏡を挿入し前立腺を観察します。射精機能や尿失禁に関係する解剖学的構造物を確認しながら、ロボットで切除する組織、温存する組織を設定し、個人に合わせた治療計画を作成します。


2)前立腺の自動切除
治療計画に従って、高圧水噴射により自動的に前立腺組織が切除されます。切除時間は5分-10分程度です。

※術前と術後の膀胱鏡画像とエコー画像

3)止血
アクアブレーション後、切除部位を確認し、電気凝固による最低限の止血術を行います。輸血率は1%未満とされています。