神戸大学 医学部付属病院

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生体構造解剖学6年生(取材当時) 西川 大生「研究者と臨床医、遠いようで近いもの」

※専攻・学年は取材時のものです。

写真:西川 大生

Q.いつ頃から医学研究コースを履修しようと考え始めたのですか?
またそのきっかけは何ですか?
2回生の解剖学の授業の時に先生方に声をかけていただいたのが最初のきっかけでした。それまでは漠然と医学の勉強をする中で医学の面白さは感じていましたが、正直なところ自ら研究に携わることは全く考えておりませんでした。実際に研究室に足を運んで研究内容について教えていただき、自分にできることが少しでもあるなら挑戦してみようと思い、研究を始めることになりました。結果的に6回生までの約5年間、研究を続けることができ、あの時チャレンジして本当に良かったと感じています。
Q.この分野を選んだ理由は?
きっかけが選んだ理由そのものなので本筋とは少し離れますが、初めて研究室に行った時の印象について書いてみたいと思います。最初に研究内容について聞いたときは、多様な研究内容・研究手法に取り組んでいる研究室だと感じました。タンパク質の構造解析がメインの研究室ですが、それとはまったく異なる分野である造血幹細胞の研究も行われています。この2つはジャンルが大きく異なりますが、お互いに知見が活かせる部分もあり、研究の世界の奥深さを感じたことを今でも覚えています。研究室に配属された後は造血幹細胞の研究に携わることになったのですが、同じ研究室に所属してタンパクの構造解析をしている同級生の話を聞いていると自分とは全く違う発想があることに気づかされ、研究を進める上で良い刺激になっていました。

写真:西川 大生

Q.このプログラムの魅力は何ですか?
低学年の頃に医学研究に触れられることは大きな魅力だと思います。大学の座学で学んでいる知識がどのような営みの中で生み出されてきたのか、それを体感することが学ぶ意欲にもつながるのではないでしょうか。私自身も将来どれくらい研究を行う機会があるかはまだ分かりませんが、研究を続けることで培った探求心や思考力、ディスカッションする力といったものは研究以外の分野でも発揮できる場面がたくさんあると思います。
また、学会への参加や発表のチャンスにも恵まれています。自分の研究を初めて会う人に伝えるのは簡単ではありませんが、上手く伝わって質疑応答や会話が弾むと、すごく嬉しい気持ちになります。学内・学外を問わず発表の機会があるため、大学の先輩後輩や他大学の学生とも交流することができ、研究に取り組む学生の輪に入ることができます。
Q.現在の取り組み、今後の取り組みを教えて下さい。
造血幹細胞の研究からスタートし、現在は樹状細胞の機能の研究を行っています。樹状細胞は細菌などの外来抗原をリンパ球に提示して免疫応答を誘導する機能を持つ細胞ですが、その活性化には数多くの遺伝子が関与します。それぞれの遺伝子は互いに複雑なネットワークを形成しており、その機構の全体像を解き明かすことを目指しています。具体的な実験手法としましては、マウスに細菌の構成成分を投与して疑似的な感染状態を作り、免疫系に起こる変化を解析しています。特に私が力を入れているのは、コンピューターを使った遺伝子発現の解析です。研究室には同じような解析を行っている人がいないため、解析の手法について独学で試行錯誤を重ねながら研究を進めて来ました。先行研究の論文を読み込んで、解析手法を1つずつ勉強して自分の研究に活用できるかを試すのは時間のかかる作業ではありましたが、5年間で得られた知見を論文として形に残せるように準備を進めています。

写真:西川 大生

Q.このプログラムに参加し、得たことがあなたの将来にどのように活かされると思いますか?
仮説を立てて検証し、また新たな仮説を立てるというプロセスは研究者だけでなく臨床医としても必須の能力だと思います。このことは特に、高学年になって臨床実習に参加するようになってから強く実感するようになりました。臨床医学の座学では疾患の症状や検査所見、治療といった知識を学びますが、実際に臨床実習に参加して患者さんと対面すると、単なる知識を並べただけでは患者さんの症状や困っていることなどを上手く説明できない場面が多々あります。そんな時に仮説を立てて検証するというプロセスを丁寧に追っていくと、最初は分からなかったことが徐々に分かるようになってくるという経験が何度もありました。
個人的には臨床医を目指す人にこそ学生時代に研究に触れてほしいと思います。そのまま研究の面白さに気づいて研究を続けるのも良いと思いますし、仮に続けないとしても研究者としての目線は臨床医にとっても大きな武器になると感じています。
Q.これから履修を考えている学生へ一言
もし研究に少しでも興味があるなら積極的に挑戦してほしいです。結果的に研究が合うかはやってみないと分かりませんが、仮に合わなかったと感じたとしても、こういう世界があると知っていることには大きな意味があると思います。
授業などで研究の話を聞いているとスケールの大きな話が多く、身近には感じにくいかもしれませんが、日々の研究は小さなことの繰り返しです。「ちょっとやってみようかな」というくらいの心づもりでできることもそれなりにあるので、気軽に始めてみると良いと思います。良い成果を出そうと思うと苦しい時もあるかもしれませんが、あくまでも医学生としての研究なので肩の力を抜いて楽しむくらいの感覚で取り組めば大丈夫です。それを続けていく中で見たいものが見つかったら、それを目指して一直線に進んでください。そうして得たものは何物にも代えがたいものにきっとなると思います。末筆ながら、皆さんの挑戦を応援しています!