2023年度
第7期「メディカル・デバイス・プロデューサー」
育成プログラムエントリーコースⅠ
2023年5月12日~2023年5月27日、医療機器開発プロセスのうち、ニーズ探索からコンセプト創造のプロセスの基礎を、計9回のニーズ探索アプローチワークショップ(WS)およびハンズオンセミナー、チームビルディングWSで習得するコースを開催し、24名の研修生(16社/機関)に受講いただきました。
※今期のニーズ探索アプローチWSには大学院医学研究科 医療創成工学専攻の選択科目生11名も加わりました。
各カリキュラムの様子・研修生からの感想(受講後のアンケートからの抜粋)
ニーズ探索アプローチワークショップ
(ニーズ探索・コンセプト創造、ラピッドプロトタイピング)
- ・最初は聞きなれないワードが多く、中々内容を理解するのに時間がかかりましたが、グループワークを通して実際に体感してみることで、実感しながら学ぶことができた点が良かったと感じました。また、設計業務をされている方だけでなく、看護師・学生・営業 等色々な分野の方々と交流できたことで、自身の考え方の幅が広げることができた点も良かったと感じました。
- ・研修を通して、グループワークであったのが良かったです。普段あまり接点の無い企業の方、医師や看護師の方々、学生さん方など様々なバックグラウンドの皆さんとの意見交換は視点や捉え方が違っていて新鮮で、その個性ある皆さんが短期間に同じテーマや目標に向かって率直に意見を出し合い、少しずつチームとしてまとまっていく過程を学習することができ、聞くばかりの講習でなく「体験する」ことで自分の経験として残ると思います。
- ・本研修を通じて学んだニーズ探索アプローチ、特にイノベーションに関する考え方は初めて学ぶ概念であり、日頃オペレーション思考で仕事に取り組んでおり、2つの考え方のアプローチがあることを理解し、違いを整理することは大きな学びとなった。答えのない中でグループワークすることには苦労したが、普段から答え、正解を求めがちな思考の癖を改めて感じることが多く、また違う世代、違う業界の方々と取組むグループワークは新鮮であり発見が多かった。
- ・デザイン思考は過去に何度か講座を受けたことがありますが、今回、いつもよりは時間的に長い予定で、全体的な流れが一通り学ぶことができてよかった。特に観察の部分では、顕在的ニーズ調査に関わる市場調査やマーケティングの前提の定義や、着眼点としては平均で考えるのではなく、個人の主観から考えること、行動観察の種類や方法、観察をする際の観察の種類やその方法のポイント、事実と解釈の違いなど理解ができてよかった。
- ・医療機器開発を行う上で重要なデザイン思考やチームビルディングについて、基礎を一通り学ぶことができ、大変勉強になった。医療機器開発の場面以外でも活用できるスキルなので、今回学んだことを積極的に活用していきたい。
ハンズオンセミナー
@神戸大学/
神戸国際医療交流財団【統合型医療機器研究開発・創出拠点】(MeDIP)
医学部附属病院 国際がん医療・研究センター(ICCRC)
オペ室・エネルギーデバイス
- ・鉗子の先端オフセット形状、スコープの斜視鏡が存在することは知っていましたが、形状の意味まで深く理解ができておりませんでした。今回の体験を通して、実際の視界の悪さ、ブラインドスペースがあることの問題を体感することで、より使用される先生方の立場に立ってデバイスの設計をすることの重要さを身にしみて感じることができました。
- ・想像していた以上にチームでのオペレーションが重要で、医療現場においても普段からのチームビルディングの必要性を感じました。また、切開や止血、縫合など様々な操作が出来るように鉗子の先が改良されてきたことにこれまでの開発努力を感じました。一方、鉗子自体の扱い(取り回しなど)やカメラの扱い(視野が限られている)については実際に体験させていただき、個人的には改良の余地があると思いました。特にカメラに映っていない場所でのエラーの発生の話を伺い、人の手技や経験によって支えられているのだと感じました。初めての見学の機会で、全体を通じて現場での観察の重要性を身をもって実感しました。
- ・(指導医師の)木戸先生の、シンプルであること・直感的に操作が可能であることが最も重要であり、製品として残り続ける重要な要素、とのコメントが製造開発する側としては非常に印象的であり、考えさせられる内容でした。使用される一連の流れを見せていただいた中で、今まで手術に使われている状況のみを最優先に考えておりましたが、製品を用意する過程や一人で使用するのか、複数人が協力して使用するのか、一時的に製品を抜いた場合の取り回し等、どのように扱うのか、意識していない視点の発見が多くより徹底的に観察する必要性を痛感しました。
- ・複数のデバイスを比較検討出来、非常に良い経験となった。デバイスのデザインや使いやすさ、切開能力には好みがあり、男女や国による好みの違いも大きい分野と感じた。切開・凝固・止血能をバランスよく実現することは難しく、改良の余地は大きいが、開発に対する費用対効果がどこまで望めるか市場性から考えてみたいと感じた。
- ・想像以上に臓器(鶏肉)を切ることに時間を要するものだと感じた。蛋白質を熱で凝固させるのである程度時間はかかることは理解できるが、もう少し短時間にできないのかと思った。本体の形状がメーカーによって、微妙に異なり、握るところなどで大きく操作性も変わることを実感した。本体全部がディスポということにもかなり衝撃を受けた。使用済みのものを回収して、再利用する企業もあるとは聞いたが、もう少し何か工夫できるところはないのかと感じた。安全性と費用、環境とのバランスかと思うが、考える余地はあるかと思った。
- ・人工呼吸器はエビデンスに基づいた酸素流量やタイミング等が自動で制御されており、医師が特別意識することなく有効性が担保された処置がされるようになっているという話を受け、エビデンスに基づいた有効性をユーザーが使いやすい形で提供するという目線は他の医療機器にも同様に展開できるものだと感じた。また、医師や病院の目線から見た医療機器の購買プロセスに関するお話も非常に参考になった。
- ・気管へのチューブ導入は経路の選択が難しいと感じた。経路を見えるようにすることによるメリットを体感することができた一方で、経路が見えていてもチューブやスタイレットの剛性が高くなかなか挿入しづらいと感じたため、このあたりの難しさを感じる部分にニーズがあるのではないかと感じた。
- ・今回は模型で体験したため、挿管時に多少抵抗があってもぐいぐいと押し込むことができたが、あれが実際の人間だと、確実に喉を傷めているだろうなと思った。医療現場ではかなり頻繁に行われている処置だと思われるが、医師の技能に左右されるのだろうと身を以て知ることができた。また、ビデオ付き喉頭鏡について、構造自体はかなりシンプルだが、普通の喉頭鏡と段違いに見やすく、まさにニーズ由来の医療機器だと感じた(先端をディスポにしたり、バッテリー交換が必要であったりと、ビジネスとしてのサステナビリティも優れていると感じた)。
- ・展示会で見たことはありましたが、実際に最先端の技術に触れられ、貴重な経験を得られました。操作性について、個人的には少し慣れが必要かと感じましたが、それでも指の動きにほとんど遅延なく動いていること、微小なものを操作できることに感動しました。
- ・操作は直感的であり、すぐに馴染むことは出来たが、個人の能力により上達度合いも含めて個人差が大きいだろうと感じた。また手術用ロボットが複数社登場し、選択肢が増えること、競争環境によりさらにイノベーションが進むことは望ましいが、ロボット毎に使用方法も大きく異なるため、習熟、トレーニングを有することに課題を感じた。例えば自動車のように、メーカーが違ったとしても、ハンドル、アクセル、ブレーキの基本構造は一緒で比較的容易に乗り換えられる共通化も業界として検討すべきではないだろうか。また消耗品の共通化も行い、ランニングコストの軽減も必要と感じた。
- ・胃カメラを体験したことはありますが、その時に先生が何気なくされていた操作がとても難しく、思った通りに動かせなかったので、先生の技術のすごさを体感することができました。ただ操作の時にハンドルが大きく、手がつりそうだったので、手が小さい方のために、ハンドルの持ちやすさは改善できそうでは、と感じました。
- ・実際に狭窄や閉塞などによりカメラが通過しなかったり痛みが強いことや検査後も不快感が強く残るなど患者の立場から考えるともっと改良できることがあるなと感じました。マウスピースも嘔吐反射の誘発を抑えるだけでなく気持ち良く使用する(使用したくなる)という観点から考えるともっと改良できることがあると感じました。検査が辛く拒否されたり、しんどい状況で検査されることもあるので術者目線での改良も重要ですが受けて側(患者)の視点でもモノを見ると違ったものが創れると感じました。
チームビルディングワークショップ(LEGO® SERIOUS PLAY®メソッドと教材を活用したワークショップ)
- ・チームビルディングを知らないところからスタートして、終わる頃には、自身が一皮剥けた感覚になった。チームの各人が意見を持って考えを説明し、一つのものを作り上げる過程で、少し苦手だった意見を述べることが出来ました。これはチームビルディングをする中で、各々が相手の話に傾聴し何を言いたいのかを汲み取ろうとする環境があったからだと思う。今後はカンファレンス等で傍観者とならずに意見を聞いて自分の意見を言うようにすることから始めようと思う。
- ・「チームとして私たちが大切にしたいこと」のワーク時に「グランドルール」という言葉を知った。多くの人が頭の中では分かっているがなかなか実践できないことを「ルールにして共有する、可視化する」ということは大きな収穫となった。
- ・同じテーマで話し合っているが、全く発想が違うことに驚かされた。いったんそれぞれの意見を集約してまとめていくときのプロセスについて学びを感じた。
- ・年齢・バックボーンなど様々なメンバーがいることで、ゴールが同じでも大事にしていることや気にしているものなどが全く違い、プロダクトを開発する上で多様性はとても重要だと言うことが意識できた。
- ・参加者全員の考えが反映されたものを創り出すことで、チームビルディングや戦略立案の視覚化に繋がった。医療機器開発で多様なメンバーや様々なアイデア、意見をどのように製品に落とし込めるかという点で参考にできると感じている。
修了証授与
- ・ひとつひとつの設計に対して、医療現場が求めているニーズが何なのか、実際の使用者の立場に立った時にどう感じるかという点をより深く考えるようになりました。また、仕事を進める際も自分一人の考えではなく、他人の意見を聞く機会も増えました。
- ・デザイン思考に関するマインドセットに一番大きな変化を感じた。またイノベーション思考について学ぶことで自身がオペレーション思考に偏った場合、イノベーションの観点から客観的に考えるきっかけを与えてくれた。この4月よりビジネス開発、新規事業開発に取り組むにあたり、5月にこのプログラムに参加出来たことは非常に良いタイミングであり、思考方法、チームビルディング、ブレインストーミング等については、今後も仕事の中で実践し、試行錯誤しながらより向上させていきたい。
- ・プロジェクトの立ち上げを担っているため、自分の所属するマーケティング部だけでなく様々な部門と連携をとりながら進めていく状況にあります。研修期間中にまず感じた事は、打合せの際の雰囲気作り及び意見の引き出し方が従来と異なってきたことを感じております。また、製品の企画立案を行うまでに、従来よりも明らかにバイオデザインを意識する事で、考えがより緻密になってきていると感じております。また他部門(例えば設計部門)へのインプットもより根拠を有していることと、他部門からの自身の思考の枠を超えた指摘にも柔軟に対応でき打合せの際に両者の意見のすり合わせや合意形成が両者の納得行く内容にて進められる傾向が出てきていると感じております。
- ・チームメンバーをはじめ、他者の発言に注意深く耳を傾けようとより意識するようになった点と、早い段階でのプロトタイピングを含めチーム内で可能な限り共通認識を得るための工夫をしようという意識になった点。また、コロナ禍でしばらく中断していた他社の方との交流を再び行ったことで、外部との交流を自分から積極的に図っていくための自信を取り戻せたことも大きな意義があった。
- ・自分は、バイアスが強い傾向であることが再認識できたため、注意していこうと感じました。改めてチームビルディングについて学びなおしたいと感じました。私たち医療者はニーズを発信していく役割があると感じました。そのことで、現場が少しでも良くなればと思います。