第2回シグナル伝達医学研究展開センターリトリート『若手道場』

R2.2.5~2.6 淡路夢舞台国際会議場

令和2年2月5日から6日にかけて淡路夢舞台国際会議場(兵庫県淡路市夢舞台2番地)にて第二回シグナル伝達医学研究展開センター・リトリート「若手道場」を執り行った。このリトリートは、平成30年度に当センターに所属する若手研究者に交流・相互理解を深める場を提供するとともに、若手研究者同士の連携強化、新たな共同研究の創出ならびに組織の活性化を図ることを目的に立案され、本年が二回目の開催となる。今回はセンター長 南康博教授をはじめ、教授(客員教授含む)4名、准教授4名、講師2名、助教6名を含む計40名の参加となり、前回を越える参加人数となった。また、外部講師として当研究科客員教授 竹縄忠臣先生と慶應義塾大学医学部教授 岡野栄之先生のお二人をお招きしてご講演を賜った。

本会の冒頭、オーガナイザーの榎本秀樹教授より「研究者間の交流が新たな研究潮流を生み、研究推進力の強化につながる場となる。このリトリートが若い研究者間の交流の場となり、本学医学部のサイエンスを盛り上げる契機としてほしい。」との旨、開会のご挨拶を頂戴した。

本会の目的は若手研究者間の交流・相互理解を深めることであり、研究者の相互理解には研究内容の把握が不可欠である。そこで時間の許す限り多くの参加者に口頭発表を行っていただき、発表数は合計28題となった。また、優秀プレゼンテーション賞を設け、セッションごとに参加者が投票を行い4名の受賞者を選出した。昨今、研究者としてのキャリアパスに不安を覚えている若手研究者が多いという現状を踏まえ、教員のうち3名には研究者としての自身のキャリアパスとアドバイスを発表していただいた。また、本年度独自の取り組みとしてスモールグループディスカッションの時間を設け、研究室も立場も異なる数名のグループを形成し、サイエンスに関する昨今の諸問題について議論・意見交換を行った。今回の発表や議論を通じて、当センターで進んでいる研究の多様性に触れることができただけでなく、活発な議論を通じて若手研究者間の交流や相互理解を深めることができた。

当研究科客員教授 竹縄忠臣先生からは「細胞内シグナル伝達研究-研究と反省の歴史」という演題でご講演をいただいた。竹縄先生はご自身の経歴と研究を振り返り、「Originality」「Stay foolish」「New concept」という若手研究者への力強いメッセージでご講演を締めくくられた。慶応義塾大学医学部教授 岡野栄之先生からは「中神経系の発生・分化と再生の研究」という演題でご講演をいただいた。本講演では、岡野先生が基礎医学研究者としての道を歩き始めてから現在に至るまで、神経分化研究から幹細胞を用いた神経再生研究への研究半生をご紹介いただいた。お二方とも世界的に著名な研究者であり、成功の鑑として広く世に認識されておられるが、その研究活動が決して常に順風満帆ではなく、種々の失敗や反省を経て成功を掴んでおられることを拝聴できた貴重な講演であり、普段の学会講演では伺えない内容に参加者は職位に関わらず感銘を受け、質疑応答も非常に活発なものとなった。

本会の最後に、センター長 南康博教授より、「様々な分野に属する若手研究者間の交流が研究発展の原動力である。本リトリートはそのような交流の場として重要なイベントであり、若手研究者による主導で来年度以降もぜひ継続して開催してほしい」との総評を頂戴し、盛況のうちに閉幕した。

第2回若手道場実行委員会

オーガナイザー 神経分化・再生分野 教授 榎本秀樹
実行委員 神経分化・再生分野 講師 佐藤祐哉
実行委員 細胞生理学分野 講師 遠藤光晴
実行委員 システム生理学分野 准教授 橘吉寿
実行委員 神経分化・再生分野 助教 伊藤圭祐
実行委員 臨床ウイルス学分野 特命准教授 有井潤
実行委員 薬理学分野 特命助教 谷口将之

PROGRAM

開会のあいさつ
榎本 秀樹 神経分化・再生分野 教授
セッション1
・臓器知覚神経における舌咽迷走下神経節の解剖と機能解析 吉岡 佑太 (神経分化・再生)
・The function of HHV-6A Ribonucleotide reductase large subunit homologue 黄 経霖 (臨床ウイルス)
・マウス唾液腺におけるHippo経路の機能解析 宮地 洋佑 (分子細胞生物学)
・肺腺がん細胞の浸潤におけるWnt5a-Ror1-Rifシグナルの機能解析 史 一蘭 (細胞生理学)
・HCV NS5A Promotes Lysosomal Degradation of DGAT1 Protein via Chaperone-mediated Autophagy (CMA) Putu Yuliandari (感染制御学)
セッション2
基調講演
細胞内シグナル伝達研究—研究と反省の歴史
Research on intracellular signaltransduction--history of my research and its reflection
竹縄 忠臣 神戸大学大学院医学研究科 客員教授
セッション3
スモールグループディスカッション
セッション4
・Lowe症候群とDent disease-2の2疾患における分子生物学的発症機序の解明 榊原 菜々 (小児科学)
・RetM919T 突然変異体における神経発生の異常 山道 惇弘 (神経分化・再生)
・反復社会挫折ストレスによる情動変容における自然免疫受容体TLR2/4の役割 聶 翔 (薬理学)
・グリオブラストーマ細胞株における受容体型チロシンキナーゼRor1の発現制御機構 小倉 安加 (細胞生理学)
・中分子環状ペプチドを利用した新たながん免疫療法の開発 羽間 大祐 (シグナル統合学)
・ISGylation of HBx protein confers the pro-viral effects on HBV replication and resistance to interferon (IFN)-response Rheza Gandi Bawono (感染制御学)
・Development of in situ stem cell therapies for intractable Hirschsprung disease  Bayu Pratama Putra (神経分化・再生)
セッション5
・自然免疫細胞を標的とした膀胱癌に対する新たな治療戦略 坂本 茉莉子 (シグナル統合学)
・がん細胞浸潤突起の伸長・成熟におけるKIF1Cの機能 佐事 武 (細胞生理学)
・HNF1Bの転写因子活性と臨床像の相関に関する検討 石河 慎也 (小児科学)
・ランゲルハンス組織球症に対する治療標的候補分子 SIRPα 岡本 武士 (シグナル統合学)
・腸内分泌細胞-神経間ネットワークの分子的細胞学的解析 木下 雅登 (シグナル統合学)
・反応性アストロサイトにおけるThrombospondin-2の発現制御機構 田中 祐紀 (細胞生理学)
・社会挫折ストレスにより誘導される内側前頭前皮質ミクログリアのエピゲノム変化の解析 谷口 将之 (薬理学)
セッション6
・モザイク様の細胞パターンは接着分子の非対称な分布が作りだす 久野 舟平 (分子細胞生物学)
・感染に重要なウイルス糖タンパク質複合体の立体構造解析 任 振霄 (臨床ウイルス学)
・A point mutation in the Ret gene, RET(S811F), causes Hirschsprung’s disease and kidney agenesis in a dominant-negative fashion Mukhamad Sunardi (神経分化・再生)
・骨格筋におけるRor1およびRor2の機能 紙崎 孝基 (細胞生理学)
・前頭前皮質ミクログリアの層構造特異的なトランスクリプトームプロファイルの解析 松下 和敏 (薬理学)
・iPS細胞由来胃オルガノイドを用いた粘膜筋板形成及び破綻のメカニズム 上原 慶一郎 (iPS細胞応用医学)
セッション7
基調講演
中枢神経系の発生・分化と再生の研究
Investigation of Development and Regeneration of Central Nervous System
岡野 栄之 慶応大学医学部・生理学教室 教授
閉会の挨拶
南 康博 シグナル伝達医学研究展開センター センター長