シグナル伝達医学研究展開センター

統合的シグナル伝達医学研究の推進によるメディカルイノベーション創出拠点形成

令和3年度組織

組織図

シグナル伝達医学研究センター (CSMI: Center for Cell Signaling and Medical Innovation)は神戸大学機能強化事業 「統合的シグナル伝達医学研究の推進によるメディカルイノベーション創出拠点形成」 (平成28年度~令和3年度)において中核を担う研究拠点であり、 これまでの6つの研究分野に加え、令和3年度に新たに構築された2つの研究プラットホームから 構成されています。
「がんシグナル分野」、「代謝シグナル分野」、「脳こころシグナル分野」および 「免疫・炎症シグナル分野」では、それぞれ分野名に含まれる疾患を対象として、 基礎・臨床が融合した緊密な連携のもとで、「シグナル伝達」という観点から 様々な疾患の病因・病態の解明を目指し、診断・創薬などに向けたシーズを探索していきます。
「創薬・医療機器シグナル分野」に新たにAI・デジタルヘルス科学研究者を配置(併任)した 「AI・デジタルヘルス/医療機器シグナル分野」および「再生医学シグナル分野」では、 各研究室独自の研究課題に加え、先に述べた4つの分野から得られたシーズを創薬、 医療機器開発または再生医療へ応用することを目指します。
 新たに構築された「イメージング研究プラットホーム」では CSMI内にとどまらず学内におけるイメージング技術をコアとした異分野融合の共同研究の推進を、 「感覚器研究プラットホーム」では、超高齢社会における感覚障害やウィズコロナにおけ る嗅覚障害についての医学研究の推進を目指します。

CSMIは平成28年度の設置以来、医学研究科に加えて、 保健学研究科、科学技術イノベーション研究科およびバイオシグナル総合研究センターなどの 学内組織や理化学研究所生命機能科学研究センター(BDR)などの 学外研究機関や民間企業との交流・連携、共同研究を推進するとともに、 ワシントン大学(米国、シアトル)の「分子標的治療研究所 (IT2 : Institute for Targeted Therapies)」やオスロ大学(ノルウェー) 「分子医学センター(NCMM : Nordic Center for Molecular Medicine)」などとの 国際連携・共同研究を強力に推進してまいりました。
今後は、CSMIの目的である超高齢社会における諸疾患の 病因や超早期・早期に始まる各過程における病態解明から予防法・新規創薬・ 診断薬や医療機器開発などのメディカルイノベーションによる安心・安全な医療・ 社会の実現を目指し、本取組をさらに深化させてまいります。

事業概念図

シグナル伝達医学研究展開センターの設置

本研究科は西塚泰美先生のプロテインキナーゼCの発見にはじまる「シグナル伝達の基礎研究」や井村裕夫先生の内分泌ホルモンについての「シグナル伝達の臨床研究」にはじまり、その後も脈々と受け継がれる「シグナル伝達医学研究」において強みをもっています。その伝統は、日本学術振興会による国際支援事業である2つの21世紀COEプログラム「蛋白質のシグナル伝達機構(吉川潮リーダー)」、「糖尿病をモデルとしたシグナル伝達拠点(春日雅人リーダー)」(COE (center of excellence:卓越した研究拠点)の採択と実施、さらにはその継承事業である2つのグローバルCOEプログラム「統合的膜生物学の国際教育研究拠点(片岡徹リーダー)」、「次世代シグナル伝達医学の教育研究国際拠点(東健リーダー)」の採択と実施へと繋がり、いずれも高い事後評価を得ています。これらの事業において、ワシントン大学などとの国際連携を開始、推進するとともに、基礎・臨床融合を推進し、国際的・複眼的視野を備えた若手人材を育成してきました。その後、2つのグローバルCOEプログラムを統合し「膜生物学・医学教育研究センター」を設置し、シグナル伝達医学研究を深化させるとともに、産学連携をとおして創薬などを目指すために「メディカルイノベーションセンター」が設置されました。

一方、我が国では超高齢社会を迎え、医学・医療における社会的要請にも変化が見られ、また平成27年4月には日本医療研究開発機構(AMED)が設立され、日本の医学・医療分野における研究、研究開発の体制にも大きな変革がもたらされました。このような状況に鑑み、基礎研究の重要性を見失うことなく、基礎研究における成果(シーズ)を実用化に繋げることを視野に入れて、医学研究科のみならず学内他部局、学外研究機関(理化学研究所など)や企業との連携を推進・強化するために、平成28年4月1日に「シグナル伝達医学研究展開センター」の設置に至りました。

シグナル伝達医学研究展開センターの目標

「シグナル伝達医学研究展開センター」は、諸疾患の病因・病態を解明することにより、シグナル伝達についての基礎医学研究をさらに深化させることを目的としています。また、先に述べたように、学内他部局、学外研究機関(理化学研究所など)や民間企業との連携・共同研究を強力に推進するとともに、本センターとワシントン大学IT2やオスロ大学NCMMとの新たな国際連携による「国際シグナル伝達医学共同研究機構」の創設を通して、創薬研究、臨床診断薬や医療機器開発等のメディカルイノベーションの創出を統合的・組織的に推進することを目的としています。

上記の目的を達成することにより、新たなシグナル伝達機構や諸疾患の病因となるシグナル分子を発見し、病態の解明と創薬シーズ(新規診断・治療へ向けた標的分子)の同定を加速させるとともに、これらの成果を予防法・超早期診断法・革新的治療法の開発へ展開させ、医学・医療における安心・安全な社会の実現(社会実装)に貢献すること目指しています。さらに、この過程に若手研究者が積極的に参加することにより、国際性に富み世界的競争力を持つ卓越した若手人材を継続的に育成・輩出することも重要な目標として掲げています。そして、最も重要なことは、これらの一連の活動により、創薬などをとおして社会に貢献することであり、一人でも多くの病に苦しむ方々の一助になることを祈念いたしております。

今後も当センターから継続的かつ積極的に研究状況・成果などの情報を発信していきたいと思います。