センター長あいさつ

内匠 透

生理学・細胞生物学講座
生理学分野 教授

 シグナル伝達医学研究展開センター(CSMI: Center for Cell Signaling and Medical Innovation)は、神戸大学機能強化事業における中核センターとして平成28年4月1日に設置されました。令和2年度は設置後5年目であり、これまでの活動の評価、見直しを行い、第3期中期目標・中期計画の最終年度である次年度に向けた取り組みがもとめられる時期でもありました。

 令和2年度は開始早々から新型コロナウイルスのパンデミック、そして緊急事態宣言が発出され、1年間を通して新型コロナウイルス対策に追われ、教育研究活動においても様々な制限・制約が設けられ、研究活動にも大きな支障をきたしました。その結果、講義、講演、研究打合せなどのリモート化、さらにはデジタル化が促進されるという教育研究面においても変容が見られました。新型コロナウイルスについての研究では、CSMIのメンバーである臨床ウイルス学分野(感染症センター)の森康子先生らが、兵庫県との連携による抗体疫学研究やAMEDの研究プロジェクトに参加し、精力的に活動を行っております。

 令和2年度は新型コロナウイルスの感染拡大による影響を受けた1年間でありましたが、そのような状況の中でのCSMIの活動等を振り返ってみたいと思います。上半期には、例年と同様、若手研究者の研究活動を支援するために令和2年度「若手共同研究プロジェクト(競争的共同研究費助成)」の募集を行いました。応募件数は8件(新規7件、継続1件)であり、例年に比べ応募件数の増加が見られ、この若手研究者支援事業がCSMI内に加え、当研究科内で浸透してきたようです。アドバイザリーボード(外部評価委員)の先生方による厳正な審査の結果、4件(新規3件、継続1件)が採択されております。アドバイザリーボードでは、竹市雅俊先生(理研BDR)の後任として、新たに西田栄介先生(理研BDR センター長)にご着任いただきました。また、令和2年11月4日には、前年度に採択された3件(3組)の共同研究プロジェクトの進捗報告会をオンラインにて開催いたしました。例年同様、アドバイザリーボードの先生方から本質を突いた的確かつ建設的なご質問、ご意見をいただき、報告者および参加者にとって大変貴重な機会となりました。本事業による研究成果として、令和元年度、令和2年度にはJ. Virol.誌、PLoS Pathog.誌などに発表されており、今後さらに若手研究者による共同研究の成果が結実していくことを期待いたしております。なお、令和2年度に採択された4件の若手共同研究プロジェクトについては、令和3年度上半期に進捗報告・評価会が開催される予定となっております。令和2年度下半期には、例年に引き続き、若手研究者の交流や啓蒙を目的とした第3回リトリート「若手道場」を令和3年2月4、5日にオンライン(Zoom & Remo)にて開催いたしました。今回は仁田亮先生にオーガナイザーをお願いし、若手道場実行委員(若手教員)とともに、若手研究者(大学院生)が中心となって運営いたしました。特別講演では、胡桃坂仁志先生(東京大学定量生命科学研究所・教授)ならびに須田年生先生(熊本大学・卓越教授/シンガポール国立大学医学部教授/シンガポールがん科学研究所・シニアPI)をお招きし、それぞれエピジェネティック制御および造血幹細胞についてのこれまでの卓越したご研究を成功体験に加え、失敗談も含めてお話しいただきました。参加した大学院生(博士・修士課程)計35名(6名留学生)の内、21名も研究発表を行い、活発な質疑応答を通して自身の研究を深く考察する機会を得たようです。また、交流会においては研究上の悩み、キャリアパス等について胡桃坂先生、須田先生に相談する機会をいただきました。

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 また、令和3年3月22日には「第3回神戸大学・理研BDR合同シンポジウムDevelopment and Disease」をオンラインにて開催いたしました。今回は神戸大学では内匠透先生にオーガナイザーを担当いただき、神戸大学、理研BDRからそれぞれ3名の演者が講演し、活発な議論が行われました。基調講演では竹市雅俊先生に”がんにおける細胞間接合“というタイトルでお話しいただき、その後、20題のポスター発表が行われました。

 最後になりますが、令和2年度におけるCSMIでのメンバーの交代(着任、離任)などについて言及させていただきます。令和元年度になりますが、令和2年3月末に「創薬・医療機器」分野の齊藤尚亮先生(前、バイオシグナル総合研究センター・教授、現、名誉教授)が早期退職され、CSMIを離任されました。また、令和2年9月からは、「創薬・医療機器」分野に佐々木良平先生(放射線腫瘍学分野・教授)に、「脳こころ」分野に古和久朋先生(保健学研究科・教授)にご参加いただいております。令和2年度には「代謝」分野の高橋裕先生が奈良県立医科大学糖尿病・内分泌内科学講座教授に、また「免疫・炎症」分野の森信暁雄先生が京都大学大学院医学研究科内科学講座臨床免疫学教授にご着任され、現在は客員教授としてセンターのメンバーに加わっていただいております。また、「創薬・医療機器」分野の飯島一誠先生(前、小児科学分野・教授、現、名誉教授)ならびに「免疫・炎症」分野の錦織千佳子先生(前、皮膚科学分野・教授、現、名誉教授)が令和3年3月末をもって定年退職され、CSMIを離任されました。現在、飯島先生は兵庫県立こども病院院長として、錦織先生はiPS細胞応用医学分野・特命教授としてご活躍されており、引き続き、CSMIをご支援いただきたく存じます。第3期中期目標・中期計画の最終年度である令和3年度もウィズコロナの時代が続くものと思われ、教育研究活動でも幾分沈滞したムードが漂っております。一方、令和3年度からは神戸大学は藤澤正人新学長(現、医学研究科長)のもとで新たな舵取りが始まります。CSMIおよび医学研究科が一丸となってこの沈滞ムードを払拭し、神戸大学の新たな船出に貢献できることを祈念いたしております。