センター長あいさつ

 平成28年4月1日に神戸大学大学院医学研究科に「シグナル伝達医学研究展開センター(CSMI:Center for Cell Signaling and Medical Innovation)」が設置されました。ここでは当センター設置にいたる経緯、およびセンターの概要とこの1年間の活動を振り返り、当センターの紹介としたいと思います。

 本研究科は西塚泰美先生のプロテインキナーゼCの発見にはじまる「シグナル伝達の基礎研究」や井村裕夫先生の内分泌ホルモンについての「シグナル伝達の臨床研究」にはじまり、その後も脈々と受け継がれる「シグナル伝達医学研究」において強みをもっています。その伝統は、日本学術振興会による国際支援事業である2つの21世紀COEプログラム「蛋白質のシグナル伝達機構(吉川潮リーダー)」、「糖尿病をモデルとしたシグナル伝達拠点(春日雅人リーダー)」(COE (center of excellence:卓越した研究拠点)の採択と実施、さらにはその継承事業である2つのグローバルCOEプログラム「統合的膜生物学の国際教育研究拠点(片岡徹リーダー)」、「次世代シグナル伝達医学の教育研究国際拠点(東健リーダー)」の採択と実施へと繋がり、いずれも高い事後評価を得ております。これらの事業において、ワシントン大学(シアトル)などとの国際連携を開始、推進するとともに、基礎・臨床融合を推進し、国際的・複眼的視野を備えた若手人材を育成してきました。その後、2つのグローバルCOEプログラムを統合し「膜生物学・医学教育研究センター」を設置し、シグナル伝達医学研究を深化させるとともに、産学連携をとおして創薬などを目指すために「メディカルイノベーションセンター」が設置されました。

 一方、我が国では超高齢社会を迎え、医学・医療における社会的要請にも変化が見られ、また2年前には日本医療研究開発機構(AMED)が設立され、日本の医学・医療分野における研究、研究開発の体制にも大きな変革がもたらされました。このような状況に鑑み、基礎研究の重要性を見失うことなく、基礎研究における成果(シーズ)を実用化に繋げることを視野に入れて、医学研究科のみならず学内他部局、学外研究機関(理化学研究所など)や企業との連携を推進・強化するために、昨年4月1日に「シグナル伝達医学研究展開センター」の設置にいたりました。なお、「膜生物学・医学教育研究センター」および「シグナル伝達医学研究展開センター」は、グローバルCOEプログラム後継事業として、平成25年度〜29年度まで神戸大学本部からもご支援いただいております。

プロジェクト概念図

 当センターの初年度(第1回)の年報ということもあり、センター設置の経緯を少し詳しく概説させていただきましたが、次に当センターの概要とこの1年間の活動を振り返りたいと思います。現在、当センターは6つの研究分野から構成されております(組織図参照)。「がんシグナル分野」、「脳こころシグナル分野」、「代謝シグナル分野」および「免疫・炎症シグナル分野」では、それぞれ分野名に含まれる疾患を対象として、基礎・臨床 融合のもと、緊密な連携のもとで、「シグナル伝達」という観点から様々な疾患の病因・病態の解明を目指し、診断・創薬などに向けたシーズを探索していきます。また、「再生医学シグナル分野」、「創薬シグナル分野」では、各研究室独自の研究課題に加え、先に述べた4つの分野から得られたシーズを再生医療、創薬へ応用することを目指します。現在、医学研究科に加えて、保健学研究科、科学技術イノベーション研究科およびバイオシグナル総合研究センターからの研究者が参画しておりますが、今後研究進捗状況に応じて、さらに他部局の研究者に参加していただきたいと考えております。

組織図

 平成28年度においては、本学のビジョンを達成するための戦略(研究)として位置づけられる神戸大学先端融合研究環新規プロジェクトに、当センターを中核として応募し、平成28年10月より先端融合研究環研究プロジェクト「革新的予防・診断・治療法開発に向けたシグナル伝達医学研究」として採択されました。また、平成28年12月26日には理化学研究所 多細胞システム形成研究センター(CDB)/ライフサイエンス技術基盤研究センター(CLST)と第1回合同シンポジウムを開催し、相互に研究内容を紹介し活発に議論を行うとともに、今後の共同研究に向けた連携を強化しました。学内他部局、学外研究機関との連携に加えて、平成28年度にはワシントン大学(シアトル)に新設された「分子標的治療研究所(IT2:Institute for Targeted Therapy)」およびオスロ大学の「分子医学研究センター(NCMM:Centre for Molecular Medicine Norway)」と学術交流協定を締結しました。平成29年3月13~14日にはIT2の創設者であるスコット教授ら、ならびにNCMMのセンター長であるタスケン教授らを招き、本研究科において第1回ワシントン大学・オスロ大学・神戸大学国際合同シンポジウムを開催し、活発な国際学術交流を行うとともに、国際合同運営委員会を開催し、「国際創薬機構」設立に向けた綿密な打合せを行いました。また、当センターでは若手人材育成を重視しており、平成28年度よりセンター経費から、将来が嘱望される優秀な若手研究者を特命助教として任用し、当研究科における若手人材のキャリアパスの一翼を担っております。

 当センターでは、今後尚一層学内他部局との連携に加え、理化学研究所(CDB/CLST)などの学外研究機関や企業との交流・連携、共同研究を推進するとともに、ワシントン大学IT2やオスロ大学NCMMなどとの国際連携・共同研究を推進し、この過程に若手研究者が積極的に参加することにより将来を担う人材を育成したいと考えております。そして、最も重要なことは、これらの一連の活動により、創薬などをとおして社会に貢献することであり、一人でも多くの病に苦しむ方々の一助になることを祈念いたしております。今後もこの「年報」をはじめ、当センターから継続的かつ積極的に研究状況・成果などの情報を発信していきたいと思います。暖かいご支援を何卒よろしくお願いいたします。

南 康博 生理学・細胞生物学講座 細胞生理学分野 教授