小児科研究部門
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岩谷先生のスタンフォード大学留学便り


岩谷先生のスタンフォード大学留学便り  2019.03.25 
 これまで留学便りということで、こちらでの生活や研究の状況を私なりに報告してきました。特に若手の先生には留学を目指すモチベーションにつながればという気持ちで、また留学間近の先生には私自身の経験が少しでも役立てばという思いで書いてきました。実際、何人かの後輩の先生からはいつも読んでいますとの声をもらったり、こちらで知り合った先生からはセットアップの参考にしていただいたと聞くこともありました。また、思いがけず目上の先生から声をかけていただくことも多く、私の拙い文章に目を通していただきありがたく感じました。正直なところ毎月話題を探して文章にする作業はかなりの労力(依頼原稿や和文論文を何本か書けるくらい)を要しましたが、多少なりとも皆様の目に留まり読んでいただける内容になったのであれば幸いに思います。

 最終回は真面目な話題として、臨床医の研究留学について書いてみます。
まず、こうして毎月文章にする中でいつも違和感を持っていたことではあるのですが、「留学」というのは言葉の持つイメージが強いと思います。また、留学といっても色々ありますが、特に我々のような研究留学の場合には、留学がゴールのように錯覚しがちにも思います。実際、家族で海外に移り住むこと、言語や文化の異なる環境で過ごすこと、そうした環境で研究を行うこと、これらは留学の醍醐味であると思いますが、逆にいうと留学した時点で叶うことです。また、留学中は臨床業務から解放されることから、家族で休暇を楽しむことも可能になり、忙しい臨床医にとってはこれだけでも留学する価値があるかもしれませんが、これもまた留学すれば自動的に叶うことです。つまり、これまで書いてきて言うのも気がひけますが、ここで取り上げてきた話題というのは、留学のあくまで表面的な部分ということになります。

帰国前に再訪したヨセミテ国立公園

写真:帰国前に再訪したヨセミテ国立公園

 では、自身のキャリアを考えた場合に、どうすれば留学を深く意味のあるものにできるか、やはりそれは本人がどれだけ留学前後を意識して物事に取り組んでいるかに委ねられていると思います。なかなか文章化するのは難しいですが、研究でいうと、留学前の経験、留学中に取り組む研究、留学後に目指すテーマという流れがわかりやすいかもしれません。必ずしも同じ内容を続ける必要はないですし、むしろ多方面からの視点が必要であると思いますが、いずれにせよ何かしら自分なりの目的をもって取り組み続けることが大切だと考えます。そうでなければ、「留学してみただけ」になってしまうのではないかと危惧するのです(実際に医師の留学は遊学とも言われますし)。

 私自身を振り返ると、大学院時代には黄疸を臨床検査の観点から研究し(主にIn Vitro)、この留学では主に動物モデルを用いて黄疸を病態の観点から研究しました(主にIn Vivo)。同じテーマを異なる観点から研究できたことは幸いでしたが、では留学後にいかに続けていくかというところでまだ明確な答えが見つかっていません。自身を省みて簡単にいうと、思いつくままに実験や解析をして上手くいけば論文執筆、というところまでは自分でできるようになったかもしれませんが、あくまで単発の話に終わってしまうのです。こちらで習得した実験手法を自分なりにアレンジして活用してみるというのは良い方法の一つだと考えますが、当然ながらオリジナルには勝てないわけで、自分だけの売りとするには不十分に思っています。しばらく試行錯誤を続けながら、自分自身のアイデンティティと言えるテーマを確立するのが現在の私の課題です。

 若干偉そうに書いてきましたが、留学中に自身のキャリアを考えることは至極当然のことだと思います(臨床医として働いている頃には考えたこともなかったですが)。実際、同様に帰国を控えた先生達とはいつも上記のような話題になりますし、決して特別な話ではありません。ただ、最初に述べたように「留学」というと言葉のイメージが先行しすぎる感じがあり、これから留学を目指す先生には留学することだけでなく、その前後のプロセスも含めて思考を巡らせていただきたく、少し真面目に書いてみました。もちろん進路は人それぞれですし、キャリアアップが全てではありませんが、臨床であれ、研究であれ、医師として何かを続ける立場ならば、長期的にぶれない自分だけの強みがないと行き詰まると思うのです。

帰国前に再訪したヨセミテ国立公園

写真:ヨセミテ国立公園には3回にわたり訪れましたが(順に10月、5月、3月)、
個人的には3月が最高でした。

 ラストまでとりとめのない感じになってしまいましたが、ここまで読んでくださり本当にありがとうございました。
今回の留学に関して全面的に支援してくださった森岡先生、飯島先生、快く送り出してくれた神戸大学小児科のメンバーに深謝いたします。また、在米中にお世話になった皆様、心より感謝申し上げます。
最後に、いつも私の荒い文章を校閲してくれた妻にありがとう。

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岩谷先生のスタンフォード大学留学便り  2019.02.25 
 先月末に行われたCarmelでの口演発表も無事に終わり、これまでの研究データの整理や引き継ぎを進めるとともに、いよいよ帰国後の生活に向けた準備にとりかかっています。
 今回は留学において重要な書類であるDS2019・VISA・パスポートについて我々の経験を整理してみます。
以前にも紹介したように、DS2019は雇用主が申請者を一定期間受け入れることを証明したもので、アメリカでの滞在許可証を兼ねています。このDS2019はVISA・Social Security Number・運転免許の申請時に必要なだけでなく、アメリカ入国時に必ずその提示が求められます。忘れがちな点として、最初に大学の担当事務所でDS2019へのサインをもらう必要があり(サインは1年間有効で、2年目以降は再度サインをもらう必要がある)、一時帰国や学会などの理由でアメリカから出国する場合、アメリカ再入国時にサインのあるDS2019を提示する必要があります。実際、私自身は何度か日本や韓国での学会のために出国しましたし、昨年のアメリカ小児科学会(カナダ開催)の際には家族で出国しましたが、その都度DS2019をきちんと確認されました。

 また、よく話題になるのがDS2019に記載される期間(必然的に発給されるVISAに記載される期間)です。というのは、2年間の留学予定にも関わらずDS2019が1年間であった場合、留学途中でDS2019を更新する必要が出てくるのです。我々の場合、当初から2年間のDS2019が発行してもらえましたが(発給されるVISAも2年間)、最初は1年間という研究室も多いと聞きます。DS2019の更新は比較的容易みたいですが(雇用主との関係にもよるでしょうが)、VISAの更新はアメリカ国外でないとできないためにそれなりに大変そうです。日本に一時帰国するか、隣国の米国大使館(カナダなど)に行くというのが主流ですが、家族全員での手続きが必要なので時間と旅費がかかるのと、何より現地滞在中に無事に発給されるかという不安が伴います。一方でVISAはアメリカへの入国に必要な書類であるので、アメリカから出国する予定がなければ、滞在許可証であるDS2019のみを更新してVISAは更新しないという方法もあり、実際そうされている方もおられます(身内の不幸などで帰国する必要が生じた場合は、その際に日本で更新することになります)。この点、我々はVISAのことで悩む必要がなかったので幸いでした。

 その他、年末に息子のパスポートの有効期限が満了したので切替発給を行いました。基本的な手続きは日本と同様ですが、いくつか経験談を書いてみます。まず、こちらには日本にあるような証明写真機がありません。なので、自分の携帯で写真を撮り(証明写真用のアプリが便利です)、それを薬局(CVSやWalgreen)でプリントアウトして準備しました。あとでボスに聞くと、コストコや郵便局では撮像からプリントアウトまでやってくれるサービスもあるようです(ちなみにアメリカではパスポートの申請を郵便局で行うらしいです)。サンフランシスコにある総領事館にて申請したのですが、年末で混雑していたこともあり、手続き自体は容易なものの、かなりの時間を要しました。意外と大変だったのは、自筆での署名でした。最初は私が署名欄を代筆していたのですが、年齢的に本人の署名が望ましいとのことで、息子自身に書いてもらうよう指示されました。平仮名ならともかく漢字は書いたことすらなかったので、この署名だけでかなりの時間を要しました(この署名が5年間使用されることになります)。ちなみに、1週間後に無事に発給されたのですが、受け取りに際してパスポートの署名欄と同じサインが必要とのことで、これまた息子に時間をかけて漢字で書いてもらいました。

ポイントロボス州立公園

写真:Carmelでの学会中に立ち寄ったポイントロボス州立公園。
パークレンジャーによると遠くにクジラの潮吹きが見えるらしいです。

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岩谷先生のスタンフォード大学留学便り  2019.01.22 
 明けましておめでとうございます。
昨年同様、今週末に開催される西海岸の研究発表会(Western Society of Pediatric Research)で口演発表を予定しており、現在はその準備を進めているところです。
今月は子供の誕生日について取り上げたいと思います。

 アメリカでは子供の誕生日を盛大に祝うのが一般的で、アメリカで子育てをするうえで誕生日会の話題は避けては通れません。息子がプレスクールに通っている頃はそうでもなかったのですが、キンダーに進学したのちは友人が増えたこともあり頻度が急増し、今では月に1-2回は誕生日会の招待状が届き、その都度一緒に参加しています。
 この誕生日会に関連して、思いつくままに書いてみると、まず学校で誕生日を祝ってもらえます(強制ではありません)。あらかじめ親がケーキやアイスクリームを準備しておき、放課後に担任の先生とともにクラス全員で誕生日のお祝いをするという感じです。日本では学校にお菓子を持っていくこと自体がNGな気もしますが、こちらでは普通なのです。また誕生日前後の週末にどこかスペースを貸し切って、親が誕生日会を開催することが多いです。公園の一部スペースを確保したり、子供向けの室内遊び場を利用したり、準備する側は他の誕生日会と内容や場所が被らないようにと色々と気をつかいますが、参加する子供達は学校以外の様々な場所でみんなと遊べるのでいつも楽しそうです。これまで参加した誕生日会でいうと、やはり公園が大半ですが、レストランとゲームセンターが一体化したChuck E. Cheese’s、室内に子供用遊具がたくさん設置されたMy GymやPump It Up、風変わりな場所としてはヨーロッパ式の茶道教室で作法を勉強するというのもありました。  

Chuck E. Cheese’s

子供達が大好きなChuck E. Cheese’s

 ちなみに誕生日会では大抵ピザやサラダなどの軽食が準備され、最後にケーキを食べるという流れが多いです。息子はそれまでピザを食べることがなかったのですが、誕生日会でみんながピザを食べている様子に感化されて、今では大好物の一つになってしまいました。一方、いかにもアメリカらしいカラフルで甘そうなケーキにはいまだに手を出さず、申し訳ないですがいつも手付かずでお返ししております。

 というわけで、とにかく子供達は誕生日会があるとテンションが上がるわけですが、先駆けてメッセージカードとプレゼントを用意するのが親の務めになります。アルファベットを覚えたばかりの子供に間違えずにメッセージを書かせるのは一苦労ですし、毎度プレゼントを選ぶのも色々気をつかいます。ここで驚くのは、プレゼントとともにレシートを入れるという文化です。日本であれば値段が見えるのが失礼という発想からレシートを添えるということは決してしませんが、アメリカではもし好みでなかった場合に返品できるようにギフトレシートと呼ばれる値段の入っていないレシートを入れるのが風習なのです。実際のところ、我々の近辺では相場が20ドル程度とされていて、その金額で5-6歳の男の子へのプレゼントとなるとどうしてもLEGOが有力候補になってしまいます。プレゼントが重複してしまい返品するということも結構あるのかもしれません。
 いよいよ留学便りも残りわずかになりました。
すでに話題が底をついていますが、なんとか最後まで続けたいと思います。
それでは、みなさま今年もよろしくお願いいたします。
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岩谷先生のスタンフォード大学留学便り  2018.12.23 
 今年も残すところわずかになりました。長期休暇に入るまでに一連の実験を終えたいと思い、日程の許す限り実験を詰め込んでいたので、現在はそれらのデータ整理に追われているところです。
 今回は、生活に関連したトラブルについて紹介します。
 1つ目はトイレのロックです。渡米当初、研究室で実験をしていると妻から困ったことになったと連絡がきました。息子がトイレの鍵をかけてしまったと慌てて謝ってきたというのです。本人は外に出てきているわけで、外からどうやって鍵をかけたのかと不思議に思って詳細を聞いてみると、どうやら中から鍵をかけた状態でドアを閉めるとオートロックされる仕組みのようなのです。トイレはロックされ、誰もいない密室から換気扇の音だけが聞こえてくるという不思議な状況のようです。どうしてこんな仕組みが必要なのかはわかりませんが、とにかくトイレが使えなくなってしまいました。息子はプレスクール、妻は英会話スクールの時間が迫っており、換気扇の音は気になるものの、帰宅後に対処することになりました。帰宅してから、早速オフィスに相談に行くと、担当者がすぐにやってきてくれました。どうやら外のドアノブに小さな穴が空いていて、外から専用の鍵で解錠できるとのことでした。ただ、結局その鍵も見当たらず、ドアノブごと外すことで何とかロックを解除することができました。時間にして数分、さすがプロの仕事だと感心しましたが、結局最後までオートロックされてしまう理由がわかりませんでした。誰か知っていたら教えてください。

 2つ目はディスポーザーです。こちらでは台所の流しにディスポーザーという生ゴミ処理機能がついています。入居からしばらくしてから、排水に時間がかかるようになったので、日本の感覚でパイプユニッシュなどを使ったりしていたのですが、そもそもディスポーザーがあることに気づきました。ただ、なぜかスイッチを押しても全く動く気配がなく、仕方がないので修理を依頼しました。すぐに担当者が直してくれたのですが、なんと内部にネジが詰まっているのが原因で、おそらく前の住人が誤ってネジを落としたのではと言われました。なぜ流しにネジが落ちるのか不可解であるし、そもそもなぜ入居前にチェックしてくれないのかと思いましたが、ここはアメリカなので諦めました。

 3つ目は食洗機の排水詰まりです。ディスポーザーが使えるようになり、次は食洗機を使ってみることにしました。ところが、順調に食器は洗ってくれるものの、同時に流し台の蛇口横の取手から大量の汚水が逆流してきました。いろいろ調べてみると、食洗機からの汚水はホースでディスポーザー部分とつながっており、それが詰まると蛇口横の空気孔から逆流してくるようです。これもどうして入居前に直してくれないのかと思いましたが、ここはDo It Yourself(DIY)の国、自分でホースを外してワイヤーブラシで掃除しました。大量のヘドロが排出されるとともに、逆流もなくなり、以降は快適に食洗機を使用できています。

 4つ目はプロパンガスです。日本ではバーベキューというと屋外で行う焼肉といった感覚ですが、こちらでは厚めの肉をふたつきのグリルでしっかり火を通す、いわゆる調理方法の一つという認識のように思います。アメリカの家庭では自宅にグリルを持っていて普段の調理用に使用されることが多いようで、我が家もベランダにバーベキューグリルを設置することにしました。といっても、初心者にチャコール(炭)は難易度が高いので、プロパンガスのグリルを購入することにしました。ホームセンターに出かけ、グリルと横にあったガスタンクを購入しました。食材も購入して、グリルとガスタンクをつないで、いよいよ点火というところで火がつかないことに気づきました。不良品なのか、ガスタンクの問題なのか、そういえば購入した際にガスタンクがどうのこうのと言われた気がしましたが、とりあえず接続すれば使えるのものだと思っていました。その日は諦めて、翌日に再訪して聞いてみると、何とタンクにガスを補充しないといけないことがわかりました。こちらでは常識なのだと思いますが、恥ずかしながら新品のタンクなのですでに補充されているものと思い込んでいたのが失敗でした。ガスを補充してもらい、その場でちゃんと点火できることを確認してから帰宅し、ようやく自宅でバーベキューをすることができました。ちなみに、日本で厚切り肉を調理することはほとんどなかったのですが、蓋つきグリルで調理すると意外と簡単に、かなり美味しく出来上がります。
 

肉

写真左:スタンフォード界隈で有名な黒肉、スタンフォードショッピングセンターで購入できます。
写真右:我が家で一番人気のリブアイステーキ、コストコで購入できます。

というわけで、今年のクリスマスは自宅でグリルです。
では、ハッピークリスマス、よいお年を!

追伸ですが、来年3月末で帰国予定です。
それに伴い、車・家具・生活備品などを引き取ってくださる方を探しています。もし興味があるようでしたら、下記メールアドレスまで連絡いただければ幸いです。場合によっては、セットアップの相談やお手伝いもできるかもしれません。
sotaiwa(アットマーク)stanford.edu
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岩谷先生のスタンフォード大学留学便り  2018.11.26 
 今月はスタンフォード内で開催されたMCHRI Symposiumに参加しました。MCHRIというのはMaternal and Child Health Research Instituteの略で、母子の健康に関わる研究に関して意見交換を目的とした会でした。当初は参加のみの予定でしたが、初開催ということで再三にわたり演題募集のアナウンスがあり、急遽演題を出すことになり、ポスター発表を行いました。抄録提出時点ではデータがまだ不十分だったのですが、足りなかった解析実験がうまく進み、なんとか発表までにデータを揃えることができて良かったです。

 今回はこちらの研究室の事情について、特に戸惑ったことを中心に紹介します。 まず、基本的な実験環境として、いわゆる雑用の類はほとんど別のスタッフが行なってくれます。神戸大学では実験器具のオートクレーブや廃棄物の処理は自分でやっていましたが、こちらでは指定の場所においておけば自動的にオートクレーブしてもらえますし、廃棄物についても処理してくれます。また、実験動物の準備や管理はテクニシャンがやってくれますし、簡単な実験手技であれば代わりにやってくれることもあります。ただ、今まで自分でやっていた身としては、自分で物事を管理していない分、本当に信用していいのか懐疑的になることもあります。

 次に、Western BlottingやRT-PCRなど解析系の実験に際して感じることとして、実験機器はかなり古いです。もちろん最先端のフローサイトメトリーなどもあるのですが、基本的な解析機器は昔ながらのものを使い続けていることが多いです(もちろん使えるのに変える必要はないのですが)。それより実際に困るのは、キットや試薬の管理が曖昧になっている場合が多いことです。これは日本でも同様かもしれませんが、以前のスタッフが使用していたキットや試薬がまだ残った状態で異動した場合、どこに残っているどの試薬が信頼できるのか、何度かテストしてみない実際に使えるかどうかわからないということが度々あります。最近ではWestern Blottingで結果が安定せずに困っていたところ、あらかじめ分注されていた抗体を使っているのが問題かと疑念を抱き、抗体を新調したところ上手くいったということがありました。

 また、こちらでは実験機器を他の研究室と共有していることが一般的です。アメリカでは機器をなるべく共有して、人を雇う方にお金をかけると聞いたことがあります。これも日本でも起こりがちな問題かと思いますが、共有機器が故障したまま放置されていることがあります(予約ノートがないので誰が使ったのかわからない)。よくフィルムの現像のために暗室を使うのですが、いざ現像という段階になってフィルムが詰まっていて機器が使えず、現像できずに涙を飲んだということがありました。ボスに話すと、故障は仕方ないとしてもなぜメモを貼っておかないのかと怒っていましたが、犯人探しをしても仕方ないので、結局修理してもらったのちに実験をやり直しました。また、暗室に関連して、ドア越しの会話がかなり苦手です。暗闇での作業中にノックされ、「あとどれくらいかかる?」「5分ほど待ってほしい」といったような会話になるのですが、顔を見ずに会話するのはまだまだ不安です。また、急いでいたのか、こちらが返事する前にドアノブを回そうとする人もいて、そのトラウマから今でも暗室での作業は緊張します。

 番外編として、学会参加における経費の請求について紹介します。学会費・宿泊費・交通費だけでなく、食費も請求することができます。細かいルールまではわかりませんが、出張地域毎に朝食・昼食・夕食にそれぞれかかる目安の金額(Per Diem Rate)が決まっており、その金額までは支払ってくれるようです。日本と同じように、学会後に領収書とともに書類(Reimbursement Form)を提出するのですが、当然アメリカドルで計算する必要があります。私が苦労したのは、旅費の一部を日本円で支払ってしまっており、アメリカドルに換算する必要があったことです。秘書さんに概ねの方法を聞いて、支払い当日の為替レートを添付の上、自分なりに計算して書類を作成したのですが、どうやら指定のサイトの為替レートでないと受け付けてもらえないらしく、再計算を余儀なくされ、結局この書類の作成にかなり時間をとられることになりました。

 先月末のハロウィーンに続き、先週はサンクスギビングデイ、来月にはクリスマスを控えており、年末に向けて休暇モードに入りつつあります。気持ちよく年を越せるよう、これまで取り組んできた仕事を早めに整理したいと思っています。  

雪のブライスキャニオン
サンクスギビングの連休を利用して訪れた雪のブライスキャニオン国立公園


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岩谷先生のスタンフォード大学留学便り  2018.10.29 
 早いもので渡米から1年半が過ぎ、これまで取り組んできた研究内容をまとめて、NICUの臨床カンファレンス(Research Meeting)で発表しました。30分程度の発表ということで、どうなることかと不安でしたが、ボスの指導のもと細かく準備を整えていたこともあり、無事にディスカッションまで終えることができました。いつものことながら、最後はStevenson教授がうまく議論をまとめてくださり、また今後の方向性に関して助言までいただき、実りの多い発表になりました。

 今月は思いついたことを何となく書いてみます。
 以前にも紹介しましたが、こちらでは日本よりも多くの物事がオンラインで管理されています。最近行った手続きを例にとっても、車両登録の更新、医療保険や自動車保険の更新、すべてペーパーレスです。それ以外にも、アイスクリームソーシャルやBBQなど各種イベントがある際には、あらかじめオンラインでRSVP(出欠の返事)をしておくのが通例です。一番の目的は参加人数の把握だと思われますが、よく使われるEviteというサイトの場合には、返事をする前に他のメンバーの動向(誰々が参加・非参加というだけでなく返答済みかどうかまで)を知ることができたりします。便利な機能なのか、余計な機能なのかわかりませんが、紙媒体の出欠表よりも返事が早く集まるとは思います。医局の忘年会や送別会で、なかなか出欠確認が集まらず、担当の先生方が「○か×を記入するだけですので」と連呼されていたのを思い出します。

 7月の留学便りにおいて、運転支援システムについてコメントしましたが、先月の連休に借りたレンタカー(Volvo XC90)には速度調整機能のみならず自動で車線を維持してくれるレーンキーピングエイド、自動で駐車してくれるパークアシストなどの新機能も標準装備されており、かなり長時間の運転だったので本当に助かりました。このことをボスに話すと、そのあたりまでの技術はかなり普及してきており、今後は自動運転が主流になるだろうという話になりました。ここシリコンバレーは自動運転の開発拠点になっており、実際にセミ自動運転モードを搭載したTeslaがかなり普及しています(少し前に隣町のマウンテンビューで発生した事故が大きく報道されていましたが)。また、Waymo(Google傘下の自動運転車開発企業)がテスト運転している様子を毎日のように見かけます。自動運転のレベルにも色々あるようですが、少なくともシリコンバレーにおいては数年以内に実用化される気がしています。

Labor Dayの連休を利用して訪れたクレーターレイク国立公園
Labor Dayの連休を利用して訪れたクレーターレイク国立公園


 また、先月紹介したように息子がキンダーに進学しました。偶然にも同じアパートにクラスメイトが2人もいて、放課後に一緒に公園で遊んだり、互いの部屋に遊びに行ったり(プレイデート)、楽しそうに過ごしてくれています。先日、Parent Conference(日本でいう保護者会)に参加したのですが、SeesawやShutterflyといったアプリを使うことをすすめられました。学校やイベントでの様子を写真で共有したりするだけでなく、子ども達の作った作品、また宿題やその内容を共有したりすることで、先生・親・子ども達が相互的に学習しやすいようです。実際、Seesawに関してはアメリカの学校の半数で使用されているとのことでした。また、こちらではPTA活動が積極的なのですが(主に授業サポートのボランティア)、学校行事の連絡や日程の調整にKonstellaというアプリが用いられています。従来の紙媒体の連絡もあるのですが、最新でなかったり不完全であったり、メールやアプリなど電子媒体のほうが信頼できることが多いです。各種デバイスを持っていない人(持っていてもあまり使用しない人)はどうなるのか疑問ですが、こちらでは持っていて当然という雰囲気で物事が進んでいます。

10月初旬にサンフランシスコで開催された航空ショー(Fleet Week)。ジャンボジェットまで飛ばしてしまうところがアメリカらしいです。
10月初旬にサンフランシスコで開催された航空ショー(Fleet Week)。
ジャンボジェットまで飛ばしてしまうところがアメリカらしいです。



 以上、とりとめのない感じになりましたが、何事においてもIT化・AI化の勢いを感じる毎日です。
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岩谷先生のスタンフォード大学留学便り  2018.09.26 
 今月の話題はこどもの教育についてです。
 家族で留学する場合、こどもの教育が大きな懸念事項になることが多いと思います。この話題になると、多くの方は口を揃えて「大人に比べてこどもは順応性が高いので問題ないよ」と言います。確かにその通りではあるとは思うのですが、実際に始まってみるまで不安ですし、そもそもアメリカでの教育システムの理解、入学申請や健康診断などの諸手続きにも若干苦労しました。長文になり申し訳ないですが、参考までに我々の経験を紹介します。

 昨年5月末に家族が渡米してきた時点で、息子はちょうど4歳半になったところでした。日本では連日夕方まで保育園および幼稚園に通っていたので、アメリカではプレスクールやキンダーに通わせたいと漠然と考えていました。しかし、プレスクールとキンダーでは大きく異なることを知りました。こちらではエレメンタリースクール(日本でいう小学校)の前学年であるキンダー(日本でいう幼稚園年長組)から義務教育が始まり、これに対する費用負担はありません。一方、この義務教育に該当するまでのチャイルドケアやプレスクールは日本に比べると非常に高額で、フルタイムで預かってもらうとなると目が飛び出るような金額になります。なので、経済的観点から子供の人数および年齢がとても重要になるわけです。

 我々の場合は、家族が渡米してきてから1週間が過ぎた6月から、徒歩圏内のプレスクールへ通わせることにしました。知り合いの日本人がすでに何人か通われていたこと、費用が比較的リーズナブルであったこと、何より徒歩数分の距離であったことが大きな理由です。いきなり英語のみの環境で戸惑わないか心配しましたが、新たな環境にもすぐに溶け込んでくれました。
 しばらく通わせることも考えたのですが、8月中旬からはトランジショナルキンダー(TK)へ移ることにしました。住居地によってキンダーのさらに前学年からのプログラムがあり、我々の住むPalo Alto市では9月2日から12月2日に5歳になる児童であればこのTKプログラムに入ることができます(義務教育の扱いなので費用負担なし)。TKに移ってからは、日本人1人だけという状況でしたが、全く気にする素ぶりもなく、すぐに友達もできて、毎日楽しそうに通ってくれました。

 日本と大きく異なるのは夏休みです。こちらでは6月初旬に学期が終了し、8月中旬まで約2ヶ月間の夏季休暇があり、この期間をどう過ごすか考えなければなりません。こちらでは、夏季休暇中に子供達をサマーキャンプへ通わせることが多く、長男も複数のキャンプに参加しました。キャンプといっても泊まりがけではなく、午前・午後・終日といったようなプログラムがあり、1週間単位で計画することになります。長男の場合は、異なるテーマのキャンプ(スポーツ、サイエンス、アートといった様々なプログラムがあります)にいくつか通わせました。ただ、度々環境が変わるのもどうかと思い、残った1ヶ月強の期間は当初通っていたプレスクールに行くことにしました。費用はいずれも似たようなものでしたが、エネルギーを持て余している息子はもっと色々なキャンプに行きたかったようで、親が慣れない環境を気にするのは余計なお世話だったようです。

 先月から新学期が始まり、TKからキンダーに進学しています。キンダーは基本的にエレメンタリースクールに併設されており、キンダー修了後はそのスクールに進学することになります。公立とはいえスクール毎に特殊性があるようで(スペイン語や中国語のクラスがあったり、アフタースクールのプログラムが充実していたり)、特定のスクールを希望する場合は抽選に参加する必要がありますが、我々の場合は特に希望しなかったので、自動的に住居地に近いスクールに振り分けられました(途中入学などで最寄りのスクールに空きがない場合には、空いているスクールに振り分けられるようです)。

 TKやキンダーの入学に関して、Palo Alto Unified School District(PAUSD)において入学手続きをする必要があります。家族の渡米からすぐに、Webページの案内に沿って必要となる書類を準備して手続きに向かいました。予防接種については、あらかじめ日本で英訳しておいた予防接種記録が役立ちました。一方、健康診断については新たにこちらで受診する必要があるとのことでした。そこで、近くのプライマリケアクリニックに予約を入れて受診したのですが、健康状態に問題はないとされたものの、視力検査で再検査を言い渡されてしまいました。ある程度想定はしていたのですが、アルファベットや図形(サークルやトライアングル)を認識はしているものの英語で答えることができなかったのです。1ヶ月後の再検査でなんとかクリアすることができたのですが、渡米直後の長男には少し難しい課題でした。

キンダーの友人家族とオークランドまで大谷選手の応援に行ってきました。
キンダーの友人家族とオークランドまで大谷選手の応援に行ってきました。


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岩谷先生のスタンフォード大学留学便り  2018.08.27 
 今回はシリコンバレーでの生活において感じたことを書いてみます。
一つめは電気自動車の急速な普及です。恥ずかしながら渡米するまで電気自動車といえば日産のLeafくらいしか知りませんでした。しかし、こちらで街中を車で走っていると、TeslaやChevroletの電気自動車を頻繁に見かけます。広めの駐車場には必ずと言っていいほど充電場所が設置されていますし、自宅に充電装置が整備されていることも多いです。特にTeslaの本社は我々の住むPalo Alto市にあり、ここカリフォルニア州を中心に急速に普及しつつあります。決して価格が安くないにも関わらず、このあたりの富裕層を中心に非常に人気があり、実際かなりの頻度で遭遇します(新モデルの生産遅延が度々報道されていますが、こちらでは新モデルもかなり普及しています)。近未来的なデザインも人気の理由かもしれません。そう簡単に世の中の車が電気自動車に切り替わるとは思いませんし、ニュースを見ているとTeslaも財政難で大変そうです。ただ、自動車業界の情勢を変えているのは事実だと思いますし、常識に囚われずに物事を進める姿勢には感銘を受けます。

大学内のショッピングセンターにもTeslaの販売店があります。
大学内のショッピングセンターにもTeslaの販売店があります


 二つ目は新たな手法への取り組みの早さです。先日参加したカンファレンスである疾患の発症予測因子をMachine Learningを用いて解析するという研究を目にしました。Machine Learningとは人間が行なっている学習過程をコンピューターで実現しようとするも のですが、これまで人工知能研究の関連ワードとしか認識していませんでした。ところが、臨床分野の疫学研究にまで使用されていることをカンファレンスで初めて知りました。方法論の詳細には理解が追いつきませんが、通常の研究では人の手で情報を整理した上で重要そうな因子に絞って統計解析を行うところ、Machine Leaningでは全データ(関係なさそうな因子も含めて)の潜在的特徴を捉えるところからコンピューターが行うようです。感覚的には、臨床医が経験的・感覚的に判断してしまうことがないよう、より客観的な解析をしようということだと思います。結果は概ね予想通りの予測因子が抽出されていたのですが、新しい手法が我々の分野にも積極的に応用されてきている現状を目の当たりにしました。今後いかに活用していくのかが課題だとは思いますが、とにかく新しいことにも臆することなく対峙しないといけないと感じた次第です。

 留学の意義の一つは、自国を離れて物事を客観視できるようになることかと思っています。そういう意味でシリコンバレーの新しいことにどんどん挑戦する雰囲気はとても刺激的です。既存の価値観はなかなか簡単には捨てることができませんが、臨床を完全に離れている今だからこそ、ニュートラルな気持ちで物事をみるように心がけています。
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岩谷先生のスタンフォード大学留学便り  2018.07.30 
 こちらは長い夏休みシーズンの真っ只中です。幸いにして、昨年から取り組んでいた動物実験のデータがまとまり、論文投稿まで辿り着くことができました。それもあって、ボスから長期休暇をいただき、グランドサークルからイエローストーンまでドライブ旅行を楽しんできました。
 グランドサークルとはアリゾナ州とユタ州を中心としたエリアの呼称で、大自然が生み出した数々の絶景を巡ることができます。多くの国立公園を含んでいることで知られ、中でもグランドキャニオン国立公園へは日本からのツアーも多く、知らない人はいないのではと思います。また、イエローストーンは世界初の国立公園であり、多くの間欠泉・温泉・大滝・大峡谷があり、アメリカで最も人気のある国立公園となっています。留学が決まった頃から、アメリカ滞在中にこれらの国立公園を巡る旅行できればと漠然と考えていたのですが(アメリカに留学される方の多くは考えるはず)、今まで経験したことのない長距離ドライブが必要であり、家族同行で無理なく旅行できるか不安に思っていました。そんな中、半年ほど前から計画を立て、ボスからもアドバイスをもらい(是非アメリカらしい部分を体験してくるようにと多数の助言をもらいました)、なんとか無事にドライブ旅行を完遂することができました。いずれの国立公園もガイドブックやWebサイトに情報が溢れていますので、観光に関することは割愛させていただき、今回はアメリカでのドライブ旅行をするなかで実感したことを報告します。

グランドキャニオン国立公園
左上:グランドキャニオン国立公園、右上:アーチーズ国立公園
左下:グランドティートン国立公園、右下:イエローストーン国立公園


 今回のドライブ旅行では、何より運転支援システムの素晴らしさを実感しました。荷物が多くなるのでSUVを予約していたのですが、ありがたいことに最新モデル(Toyota RAV4)が用意されており、いくつかの運転支援システムが標準装備されていました。恥ずかしながら、こうした機能についてこれまで詳しく知らなかったのですが、せっかくなので実際に使ってみました。
 特に便利だったのはレーダークルーズコントロール(設定速度を適切に保つだけでなく、前方車両との車間距離を調整してくれる追従機能)で、混雑のない高速道路ではアクセルやブレーキを踏む作業がほとんど不要でした。くわえて、アメリカは速度違反に厳しいとされていますが(今回の旅行中だけでもパトカーに捕まえられている様子を何度も目撃しました)、この機能があれば速度を設定できるのでついつい速度を出しすぎるということがなくなり、スピードメーターをチェックする頻度も格段に減りました。また、車線を逸脱した場合に警報が鳴る機能(レーンディパーチャーアラート)は、同じような道路が飽きるほど続くアメリカの高速道路にはうってつけの機能でした。これらの運転支援システムのおかげで、高速運転中はハンドル操作のみという感覚で(もちろん過信は禁物ですが)、予想していたよりも疲弊することなく旅行できました。実際、今回の旅行では約2000マイル(3200キロメートル)とかつてない長距離を運転したのですが、妻と交代しながら運転したことと、何よりこれらの運転支援システムのおかげで快適なドライブ旅行になりました。レンタカーでの長距離ドライブを考えておられる方は是非これらの機能もチェックされると良いと思います(私が疎いだけで最近の車は標準装備なのかもしれませんが・・)。

 また、今回の旅行では携帯電話がほとんど役に立ちませんでした。国立公園内では使えないことが多いと話を聞いていたので、あらかじめオプションでカーナビをレンタルしていたのですが(といっても同じような携帯デバイス)、結果として我々の携帯電話(AT&T)は国立公園だけでなく周辺の小都市でも全く繋がりませんでした。加えて、滞在ホテルのWifiもかろうじて繋がるかどうかというレベルで使いものにならず、数日間にわたりメールの送受信ができないという状況もありました。道順に関しては、複雑でわかりにくいということはありませんが、とにかく一つ一つの距離が半端ないので、一度標識を見落とすと大きく時間をロスすることになりかねません。ガイドブックの地図だけでは心許なかったので、カーナビを借りておいて本当に正解でした。あとで調べると、この辺りで繋がるのはVerizon社のみで、他社の場合にはほぼ圏外のようです。また、地図機能についてはオフラインでも使えるようあらかじめ地図情報をダウンロードしておけば利用できるようです。

夕日で赤く染まりつつあるデリケートアーチ
夕日で赤く染まりつつあるデリケートアーチ



 最後に、とにかくアメリカは広大であることを実感しました。カーナビで目的地まで20分と表示があっても、時速75マイル(120キロメートル)で移動しての20分なので、実際にはまだ40キロメートルも先という感じです。また、国立公園はどこも広く、園内に入ってからの移動にも時間がかかりました。特にイエローストーン国立公園は総面積9000km2という四国に相当する広さで、かつ野生動物のために渋滞ができたりするので(これはこれで楽しいわけですが)、園内の移動に1時間以上かかるということもありました。そういうわけで、移動時間を少しでも節約するために半年前から計画的に園内の宿泊施設を予約していたのですが(ガイドブックでも宿泊施設の予約が最優先と記載されています)、それでもごく一部を体験できたかどうかという印象で、数日で要領よく観光スポットをまわるという感覚は通用しませんでした。そんな感じで、とにかく広大な大地を肌で感じる毎日でした。

イエローストーン国立公園で遭遇したバッファロー渋滞
イエローストーン国立公園で遭遇したバッファロー渋滞


 前にも書きましたが、旅行は留学の醍醐味の一つだと思います。旅行の話題が多くなりがちで恐縮ですが、少しでも留学を考えられている先生方のモチベーションにつながれば幸いです。
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岩谷先生のスタンフォード大学留学便り  2018.06.25 
 今回はこちらでのカンファレンス事情について報告します。
 毎週月曜はNICUでの臨床カンファレンスに参加しています。昼食が無料で提供されるというのもあって毎回参加しているのですが、いわゆる臨床系の論文抄読会や研究発表会が中心で、これまで日本で経験してきたカンファレンスと概ね似た雰囲気で進行します。論文や研究の内容をもとに実地臨床にどう生かすか議論されていたりして、まさに臨床向けのカンファレンスなのですが、驚いたのは臨床分野の教授や以前紹介したSunshine名誉教授も頻繁に参加していて、食事をとりながら一緒になって議論するのです。もちろん教授なので教育的・学術的なコメントもされるわけですが、それ以前にまず臨床医であることをベースにリサーチマインドを持ち続けている姿には感銘を覚えます。そして、そういう姿はカンファレンスに参加している若い臨床医や研究医にも自然と伝わっているのだろうと思います。

 また、毎週水曜は研究中心のカンファレンスに参加しています。こちらは、周産期医療に関して多方面から研究している関連研究室が順に進捗状況を報告しているものです。どちらかというと基礎研究が中心で、ネット回線も駆使して外部の研究室を含めた関連グループ全体で行なっています。日本では医療分野の研究は医師(M.D.もしくはM.D., Ph.D.)が中心ですが、こちらではM.D.ではない研究者(主にPh.D.)も多く、そういう意味で新鮮な気持ちで発表を聞いています。とはいうものの、カリフォルニア州のデータベースを用いた大規模な解析報告では方法論の説明で圧倒されて理解が追いつかなかったり、メタゲノム解析の報告では膨大すぎるデータのために臨床との繋がりが見えにくかったりします。もちろん非医師の立場から客観的な見方ができるという側面もあるとは思うのですが、同僚のポスドク(M.D.)と話が複雑すぎたなどと愚痴ってしまうこともよくあります。ただ、私のスポンサーでもあるStevenson教授は、どんなに難解な発表であっても的確に論点をまとめ、最終的に次につながるようなコメントをします。批判的吟味だけでなく、いかに発展させることができるか、建設的な意見を出せるように私も精進したいと思います。

 他にも、大学内では毎週のように各種講義(神戸大学でいう大学院講義)やセミナー(論文作成、グラント申請、統計解析など)が開催されています。正直なところ、あまり参加できていないのですが、若手研究者のキャリア形成にとって申し分ない環境が整備されていると日々実感しています。

ヨセミテ国立公園
5月に訪れたヨセミテ国立公園



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岩谷先生のスタンフォード大学留学便り  2018.05.28 
 今月は各種学会のために少し慌ただしく過ごしていました。
 まず、5?8日にトロントで開催されたアメリカ小児科学会(PAS)に参加してきました。この学会は新生児分野で最も大きな学会の一つですが、私自身としてはPAS2011、PAS2013、PAS2014、PAS2015、PAS2016、PAS2017、そして今年のPAS2018で7回目の参加となりました。

 思い返すと、こども病院時代に溝渕先生のご指導のもと参加させて頂いた2011年が最初でしたが、ビリルビンクラブでスタンフォード大学のメンバーを紹介してくださったことを今でもよく覚えています。恥ずかしながら当時はよく理解していませんでしたが、このビリルビンクラブは例年学会初日の早朝に開催され、世界中の黄疸研究者が集まる貴重な場所となっています。スタンフォード大学が中心となって企画されるのですが、今回は日頃お世話になっているラボのボスや臨床の教授が講演されるとのことで、僭越ながら準備の段階から参加させて頂きました。黄疸分野のパイオニア達は相変わらず健在で(例年参加しているうちに顔と名前がかなり一致してきました)、会場では久々の再会を喜ぶ声が多く聞かれました。神戸大からスタンフォードに留学中ということで私に声をかけてくださる先生も多く、中村肇先生の時代から築かれたネームバリューのありがたさをいつも実感します。また、今回は日本の企業(アトムメディカル)が初めてスポンサーをされていたこともあり、日本からの参加者も多く、早朝にも関わらず会場から人が溢れるほどの賑わいでした。このビリルビンクラブは黄疸分野において世界の中心であり、そこで全体像を知り、自分の立ち位置を確認できることは黄疸研究者として非常に有意義なことです。大学院時代から黄疸研究に携わらせて頂き、現在はそのメッカであるスタンフォード大学で研究ができていること、世界のパイオニアと交流しながら研究を進めることができる環境にいること、本当に幸運かつ光栄に思っております。

 私自身は昨年から取り組んでいる動物実験についてのポスター発表でしたが、同じ黄疸セッション内に山名先生(加古川中央市民病院)や長坂先生(高槻病院)など神戸大関連の演題が多く、とても心強く感じました。学会中は、藤岡先生をはじめとする神戸大メンバー、森岡先生と日本大学の先生方、さらに滋賀医大の先生方とも交流させていただき、美味しく楽しいランチやディナーをいただきました。ボスの助言もあって、家族も同行させて頂き、学会の合間を縫ってトロントの代名詞であるCNタワーや水族館も楽しみました。また、学会終了後は1日延泊し、かの有名なナイアガラの滝の観光に行きました。温暖かつ快晴という好条件のなか、船で滝壺に向かうナイアガラクルーズ、滝の裏側を覗くことができるジャーニー・ビハインド・ザ・フォールズなど、家族でエンジョイすることができました。

トロント
写真左上:CNタワー / 写真右上:シーフードディナー /
写真左下:カナダ滝 / 写真右下:ジャーニー・ビハインド・ザ・フォールズ


 次に、9?12日にサンフランシスコで神経芽腫の国際学会が開催され(私は参加していませんが)、その際に西村先生、山本先生(こども病院)、キン先生がスタンフォード大学を訪ねてくださりました。カリフォルニア日和のなか、フーバータワーやメモリアルチャーチを案内させて頂きながら、いろいろ神戸大の近況を教えて頂きました。また、大学院時代に西村先生と取り組んでいた臍帯由来間葉系幹細胞の研究、神経芽腫の微小残存病変に関する研究の進捗(キン先生がポスター発表)をお聞きするなかで、自身の研究への新たなモチベーションが湧いてきました。わざわざスタンフォードまで来ていただいたにも関わらず、西村先生にはお土産をいただき、さらに美味しいディナーまでご馳走になり、本当にありがとうございました。

メモリアルチャーチにて
メモリアルチャーチにて


 最後に、24日にソウルで開催された台湾・韓国・日本新生児学会合同学術集会に参加しました。幸いなことに、日本新生児成育医学会からTravel Awardを頂き、蛍光タンパク質(UnaG)を用いたビリルビン測定について口演発表させて頂きました。神戸大関連からは、藤岡先生、福嶋先生、小寺先生(加古川中央市民病院)も同じくTravel Awardを受賞されており、PASに続いて神戸大グループの勢いを強く感じました。

 以上、学会報告というより観光や食事の話ばかりになってしまいましたが、多くの先生方に支えられながら、こうした学会発表や国際交流ができることを日々ありがたく感じております。こうした貴重な経験の数々をモチベーションにして、これまで以上に研究に励みたいと思っています。
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岩谷先生のスタンフォード大学留学便り  2018.04.30 
 渡米から1年が経過しました。
今回はこちらで苦労した諸手続きに関して報告します。
少し長くなりますが、今後留学される方に少しでも役立てば幸いです。

 まず、運転免許取得までの手続きです。
カリフォルニア州での運転免許取得に関しては、すでに多くのサイトで紹介されていますので、個人の経験談として記載します。
まず、生活のセットアップに関して、以前にも報告したように住居と車が決まった段階で、日々の生活は問題なく送れるようになりました。その後の手続きとして、大学の担当事務所(スタンフォード大学の場合はBechtel International Center)にて入国完了の手続きをして、2週間程度でSocial Security Number(SSN)を申請、約1週間後にSSNカードが郵送されてきました。この渡米から3-4週間の時点で運転免許の取得を進めることにしました(SSNがなくても後述する筆記試験までは受験できるようですが、書類不備と言われるとややこしいので、念の為に書類が揃った段階で受験しました)。

 我々のような研究留学の場合、すでに日本で運転免許を取得しており、1年間有効の国際免許を持って渡米してくることがほとんどだと思います。しかし、カリフォルニア州の場合、国際免許の有無に関わらず、州内に住居を定めた日から10日以内に州政府の発給した運転免許証を取得しなければならないとされています。実際に10日以内に取得するのは不可能ですし、ある程度は国際免許でも問題ないようですが(かなり曖昧)、早めに取得するに越したことはないかと思います(10日以降かつカリフォルニア州の免許取得までの間に問題が発生したという話は聞いたことがありませんが、もし事故などに巻き込まれたら極めてややこしいことになる気がします)。

 というわけで、早々にDepartment of Motor Vehicles(DMV)で試験を受けたいと考えていたのですが、とにかくこのDMVでの各種手続きに時間がかかり、一筋縄ではいきませんでした(Webサイトで検索するとDMVの悪評がたくさん出てきます)。いつも混雑しているので、Webサイトでの予約システムを利用してみるわけですが、その時点で空いている直近の枠しか予約できないという微妙な作りで(例えば、1ヶ月後の何曜15時とか、キャンセルがあったと思われる場合には明日の9時とか)、とにかく自分の都合に合わせた予約はできないのです。そんな中、筆記試験と実技試験に合格すると、運転免許を取得できる仕組みになっています(日本のような教習を受ける必要はありません)。頻繁に予約サイトをチェックして、2日後の午後の枠を見つけたので予約して、まず筆記試験を受けて合格しました(問題集はWebサイトで入手できるもので十分でした)。すぐに仮免許証が発行され、それに記載された番号をもとに翌日以降Webサイトで実技試験の予約をすることになるのですが、担当者から仮免許証では一人で運転できないことになっているので実技試験はカリフォルニア州の運転免許を持っている人に同行してもらうよう念を押されました(すでに国際免許のもと一人で運転しているわけで矛盾は感じるわけですが、実際に実技試験に一人で行くと受験できないようです)。そういうわけで、免許を持っている隣の研究室のA先生に日程調整をお願いして、1ヶ月ちょっと先の予約を取り、何とか合格することができました(運転コースや実技のポイントもWebサイトで情報収集できます)。当日のうちにTemporary License(紙の運転免許証)が発行され、ここで一安心ではあったのですが、数週間後に住居地の証明書が不足しているとの通知が郵送で届きました。DMVで提出したはずだと思いながら、同じ書類を郵送したところ、合格から2ヶ月程度でようやく正式な運転免許証を入手できました(渡米から約4-5ヶ月かかりました)。ちなみに、遅れて渡米してきた妻は、予約なしで筆記試験を受験したのですが、受付まで長蛇の列が続き、試験までにおよそ2時間もかかりました。また、実技試験まで無事に合格したのですが、いつまで経っても運転免許証が郵送されて来ず、紙の免許証の更新のためだけに再度長い列に並びました(Temporary Licenseは3ヶ月毎に更新する必要があります)。そして、なぜか妻にも住居地の証明書が不足しているとの通知が届き、全く同じ書類を郵送したところ、その約2週間後に運転免許証が郵送されてきました。

 上記の通り、取得は大変でしたが、運転免許証はIDとして使用できるので、とても便利です。何よりパスポートを携帯する必要がなくなりました。また、我々のアパートの場合、光熱費の支払いを当初は毎月小切手の郵送で行っていたのですが、運転免許証の番号があることでWebサイトでの自動決済に変更できました。

 次に、確定申告です。
個々のケースによって異なりますので、あくまで参考程度にしていただき、最終判断は自己責任でお願いします。
 J1ビザで留学する場合、暦2年間、米国での納税義務が免除されます。我々の場合は、まだ1年ですので、連邦税と州税の還付のために手続きをすることになりました。実は、昨年の着任時にW-4とForm 8233という書類を提出したのですが、後者のForm 8233が給料からの連邦税の天引きを免れるための書類だったようで(当時はよく理解していませんでした)、州税のみ天引きされている状況でした。詳細は、1月に届いたW-2(日本でいう源泉徴収票)と3月に届いた1042-Sという書類で確認できました。次に、家族構成と収入の状況から、連邦税のために1040NR-EZとForm 8843(家族分)、州税のためにForm 540を作成しました。内容が細かくてよくわからない部分もあったのですが、結局ボスにも教えてもらいながら何とか入力しました(自分でも作成できますが、専用のソフトを用いるとより簡単に作成できます)。そして、W-2と1042-Sとともに、1040NR-EZとForm 8843を連邦に、Form 540をカリフォルニア州に郵送しました。結果、1ヶ月程度できっちり州税が戻ってきました。

 同時に日本の確定申告も行う必要があります。私の場合は、日本在住の両親の住所に昨年度分の源泉徴収票や生命保険控除の証明書などが届くようにしていました。それを写真で送ってもらいながら、こちらで確定申告書をPDFファイルで作成し、それを日本の両親に印刷してもらい、上記書類とともに税務署に郵送してもらいました。昨年1月から3月までしか所得がないので収入は大幅に減少したことになり、とはいえ予定納税は例年と同じように銀行から引き落とされていたので、結果としてかなりの金額が還付されました。
 スタンフォード大学の晴天率は90%以上と言われています。冬場は少し雨が降りましたが、4月初旬から晴天の日々が続いています。去年の感覚ではこれから年末までまとまった雨は降らないのかもしれません。


プール
自宅のプールにて


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岩谷先生のスタンフォード大学留学便り  2018.03.26 
 今回は私の趣味であるテニス観戦の話です。
 留学とはあまり関係のない話題で申し訳ないですが、スポーツ観戦が好きな方には参考になるかもしれません。もちろん、興味のない方は読み飛ばしていただけると幸いです。
 ご存知の方もおられるかと思いますが、私の一番の趣味は男子テニスの試合を観戦することです。ここ数年、錦織選手の活躍もあってテニスの話題が取り上げられることが多くなりましたし、テニスに詳しくない人でもBig 4と呼ばれる人気選手(フェデラー、ナダル、ジョコビッチ、マレー)の名前くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか。実は今回、先月36歳にして世界ランキング1位に返り咲いたばかりのロジャー・フェデラー選手が我々の住むベイエリアにチャリティマッチのためにやってくることになりました。もちろん、張り切って観戦に行ってきました!

 今回のイベントは、アフリカの子供達の教育をサポートすることを目的にしたもので、フェデラー選手とマイクロソフトの共同創始者であるビル・ゲイツ氏を中心に開催されました。この2人がペアを組み、アメリカのプロテニス選手であるジャック・ソック選手と人気キャスターであるサバンサ・ガスリーのペアとダブルスで対戦しました。日本でいうところの「とんねるずのスポーツ王は俺だ」的なイベントですね。ゲイツ氏の腕前はかなりのもので、62歳とは思えない活躍ぶりで驚きました。その後には、フェデラー選手とソック選手がシングルスで対戦し、プロのサーブやラリーの速さを間近で体験することができ、息子もそのスピード感に驚愕していました。


SAP
写真:まさに夢の共演でした


 アメリカでのスポーツ観戦について、チケットの種類にもよると思いますが、特別な座席でなければ意外と簡単に入手することができます。多くの場合、Ticket MasterなどのWebサイトから購入が可能で、座席と価格をみながら選ぶことができます。スタンフォード周辺では、サンフランシスコで行われるメジャーリーグの試合、スタンフォード大学内で行われるフットボールの対抗戦のチケットが人気です。今回のチャリティマッチに関しては、同じくテニスファンである隣の研究室の友人がイベント公開当日(チケット発売前日)に情報をくれたこともあって、発売当日にWebサイトからベストシートを購入することができました(A先生、有益な情報をありがとうございました!)。また、こちらではESPNという専門チャンネルで多くのスポーツをテレビ観戦することができます。ケーブルテレビやストリーミングサービスでESPNが視聴できる環境にあれば、テニスの4大大会も観戦できます。日本では4大大会を観戦するためにWOWOWと契約していましたが、こちらではESPNが主流のようです。

 また、身近なところでいうと、スタンフォード大学内にもスタジアムがあり、夏には女子テニスの大会が開かれます。昨年もシャラポア選手をはじめトップ選手が参戦し(結局シャラポア選手は棄権でしたが)、大会開催中のスタジアム周辺は多くの観戦者で賑わっていました。スタジアム以外のコートはチケット不要なので、外コートでの試合や練習風景は無料で観覧できます(K先生、教えていただき有難うございました!)。

 実はこれまで全米オープン、ウィンブルドン、ツアーファイナルなどテニス観戦にかなり熱を入れてきた私ですが、長男が生まれてからは停滞気味でした。そんな中、長男も大きくなってきて、留学中に少なくとも一度はテニス観戦に行きたいと思い、最寄りの大会であるインディアンウェルズへの家族旅行を考えていました。ただ、ロサンゼルスから南に車で2時間の場所(ベイエリアからだと車で8時間)ということで、家族で行くには時間的にも金額的にも悩ましく思っていました。さらに言うと、トーナメントの場合、1日券としてチケットを購入するわけで、応援している選手の試合を観ることができるという保証がありません(これまでにも目当ての選手が早期敗退してしまい、残念な思いをしたことがあります)。そういう意味で、チャリティマッチとはいえ、近場で憧れのフェデラー選手の試合を確実に観戦できるというのは願ってもないチャンスでした(インディアンウェルズに参戦する前に立ち寄ったようです)。なので、インディアンウェルズで浮いた資金を回して、少々高額なベストシートを購入させていただいた次第です。

 趣味の話を長々と書いてしまいましたが、肝心の研究も少しずつまとまりつつあります。5月にトロントで開催されるアメリカ小児科学会で発表する予定にしていますので、参加される先生方はぜひ声をかけてください。
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岩谷先生のスタンフォード大学留学便り  2018.02.26 
 今回は学会発表の報告を兼ねて、CarmelとMontereyの街を紹介したいと思います。
 Carmelは我々の住むPalo Altoから南へ車で2時間弱の場所にあります。人口4000人程度の小さな街で、古くから芸術家や詩人の集まる街として知られています。これまでの歴代の市長には俳優・詩人・作家が度々選出されており、映画俳優で有名なクリント・イーストウッドもその一人です。日本にも小説家や詩人が過ごしたことで有名な温泉地があったりしますが、同じような感覚でしょうか。緑が多く、古風で美しい建物が並ぶ街であり、自然との調和を優先して、信号が設置されていません。また、愛犬家とペットに優しい街としても有名で、多くのホテル・レストランがペットOKです。中には、ペットOKにも関わらず、子供NGのホテルもあるようです。

 このCarmelにおいて、西海岸を中心とした研究発表会(Western Society for Pediatric Research)が毎年開催されるのですが、我々の研究室からも例年ポスドクが発表するのが恒例となっています。小さな街であり、大きな会議場があるわけではないので、いくつかの建物に会場が分散して開催されたのですが、私の発表は会場近くの教会の講堂で行われました。まず、Speaker Ready Roomにデータを持参してスライドの確認をしたのですが、ここで問題が発生しました。ほとんどのスライドでフォントサイズが変化してしまい、会場で急遽大幅な修正を余儀なくされたのです。WindowsとMacで多少変化してしまうことは想定内であったので、ボスの助言もあってWindows版とMac版のファイルを用意していたのですが、いずれも大幅に変化してしまいました。同僚のポスドクも同じ状況で、Officeのバージョンの影響だと思われたのですが、これほど大きく変化してしまったのは初めてでした。ただでさえ英語の口演発表で緊張しているのに、発表前からスライド修正に1時間近くを要し、時間的にもかなり焦らされました。

 実際の発表について、プレゼンテーションは練習通りにうまく話せたのですが、やはりディスカッションに苦労しました。あらかじめ回答を考えていて答えることができたもの、想定していた質問にも関わらず上手く聞き取れずに答えることができなかったもの、想定外の質問で微妙な回答をしてしまったもの、あとでボスと反省会をしたのですが、引き続きトレーニングが必要と痛感しました。とはいえ、多くの研究者から興味を持ってくれたことは本当に幸いなことで、論文発表できるよう研究を進めたいと思っています。また、発表には研究室のメンバーだけでなく、実験を手伝ってくれた高校生や祖父であるSunshine名誉教授も来てくれて、とても感慨深い経験となりました。

 学会終了後には、隣の街であるMontereyに遊びに行きました。かつてはイワシの缶詰工場で栄えた街ですが、現在はその建物群を改築した水族館・レストラン・ショップが並ぶ観光名所となっています。特に水族館は有名で、映画「ファインディング・ドリー」においてドリーが生まれ育った海洋生物研究所のモデルにもなっています。もちろん水族館としても素晴らしいのですが、特筆すべきは子供達向けのアトラクションが数多く用意されていることです。タッチプールでヤドカリ・ヒトデ・ナマコなどを触ったり、プレイゾーンで水遊びを通して潮の流れを勉強したり、体験型ゾーンで餌の食べ方や鳴き声の違いなどをゲーム感覚で覚えたり、アメリカの施設全般に言えることかもしれませんが、教育的な配慮が行き届いていると感じました。

 また、CarmelからMontereyまでは美しい海岸線が続き、17マイルドライブと呼ばれています。途中、超高級住宅地や全米オープンゴルフで有名なペブル・ビーチがあるのですが、特に住宅は一つ一つがお城のようで一見の価値ありです。

湾岸線
写真:17マイルドライブから見た海岸線、波が高いです。



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岩谷先生のスタンフォード大学留学便り  2018.01.22 
 明けましておめでとうございます。
年始早々から予定していた実験をこなしながら、今週末に開催される学会の準備に励んでいます。まだデータが十分とはいえないのですが、こちらで始めた研究で、かつ日本で取り組んでいた黄疸研究ともリンクする内容なので、何とか論文発表できるデータにしたいと取り組んでいるところです。

 今回は先月に参加したBPDシンポジウムについて紹介します。
我々の研究室のある建物の隣にLi Ka Shing Centerというカンファレンスセンターがあり、シンポジウムや研究会がよく開催されています。特に今回は早産児の代表的疾患であるBPDのシンポジウムということで参加してきました。BPDとはBronchopulmonary dysplasiaの略で、日本語では気管支肺異形成と訳されます。最近ではChronic lung disease(慢性肺疾患)と呼ばれることも多いです。新生児医療の進歩とともに疾患概念が変化していますが、基本的には未熟な肺が人工呼吸器管理・酸素・炎症によって損傷を受けて生じる肺の疾患です。本疾患は新生児医療に人工呼吸器が導入されつつあった時代に、スタンフォード大学の放射線科医であったNorthwayによって初めて報告されましたが(NEJM, 1967)、実は今回のシンポジウムは最初の報告から50年経過したことを記念して企画されたものでした。スタンフォード大学の関係者だけでなく、各地からBPDを研究している研究者が集まって開催されたもので、新生児科医としてこのシンポジウムに参加できたことは本当に幸運でした。

 もっとも興味深かったのはBPDの歴史です。Northwayと同時期に働いていた小児科医であるSunshine、2人へのインタビュー形式の動画という形で当時の状況が紹介されました。新生児用の人工呼吸器はまだ開発されておらず、自発呼吸の微弱な早産児の多くが亡くなっていた時代の話です。1963年、ケネディ大統領の次男が在胎34週で出生し、呼吸不全のために生後39時間で亡くなったのですが、その際に助言を求められたという逸話も聞きました。人工サーファクタントのない時代であり、新生児呼吸窮迫症候群の管理だけでも壮絶を極めたに違いありません。前述の通り、Northwayは新生児呼吸窮迫症候群のために人工呼吸器管理を要し、かつ死亡した19例のX線写真と病理所見を呈示し、BPDとして初めて報告しました。今とは論文の価値や考え方が多少異なるとは思いますが、この論文は放射線科医1名と病理医2 、合計3名の著者で構成され、いずれもAssistant ProfessorやChief Residentの立場で報告されたものです。また、論文中に出てくるBronchopulmonary dysplasiaという呼称について、病理学的に気管支や肺胞が主な病変であることから、当初はBronchoalveolar dysplasiaという考えがあったとのことでした。ただ、略した際にBADよりもBPDの方が発音しやすいという理由でalveolarではなくpulmonaryが採用され、最終的にBPDという呼称が広まったということでした。すでに人工肺サーファクタントが開発され、新生児用の人工呼吸器が整備された時代に医者になった身としては、当事者から語られるエピソードの数々はとても感慨深いものでした。

 短時間ではありましたが、Northway自身もシンポジウムに来られ、私も初めて本人を見ることができました。後半はBPDに関するこれまでの研究、今後の展望に至るまで、各地の研究者によって紹介されました。この分野の第一人者であるAlan Jobe、サーファクタントの二次的欠乏の研究で有名なBallard夫妻、BPD関連の論文でよく目にする著名な先生方の講演も聞くことができました。

記念品のマグカップ
写真:記念品のマグカップ、NEJMの論文タイトルがプリントされています。


 冒頭でも述べましたが、昨年から進めていた研究成果について学会発表を予定しています。研究に際して、一緒に実験していた大学生はもちろん、夏季休暇を利用して実習に来ていた2人の高校生にもとても助けられたことから、発表に際して共同演者になってもらっています。実はその高校生の1人から祖父がスタンフォード大学で働いていると聞いていたのですが、実はその祖父というのが小児科のSunshine名誉教授なのです。よくよく探してみると、研究室にある古い薬品にはSunshineの名前が残されていたりします。私としては、名誉教授のお孫さんと名前を並べて発表させていただくことになるわけで、直接的な関係はないものの、勝手にプレッシャーを感じていたりします。

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岩谷先生のスタンフォード大学留学便り  2017.12.24 
 いよいよ年末が近づいてきました。今月は日々の実験と来月の学会準備を淡々と進めながら、研究室のランチパーティや小児科全体の同窓パーティなど、日本で言うところの忘年会に参加したりしていました。多くの研究室はクリスマス前から年始まで閉鎖するようで、我々の研究室も実験の整理を済ませ、今週から長期休暇に入ったところです。今回はこちらで経験したアクティビティをいくつか紹介したいと思います。

 まずは、ハロウィーンです。
仮装したり、ジャック・オー・ランタンを作成したり、日本でも大きなイベントになりつつありますが、こちらはかなり本格的です。息子の通うキンダーではCostume Parade(仮装行列)という行事がありました。みんな仮装して登園し、クラスごとに園内を歩いて回るのですが、写真撮影会もあり親も仕事を休んで参加したりします。当初は妻に任せて参加しないつもりだったのですが、ボスからも「You should go」と念を押され、結局Costume Paradeを見に行きました。息子はCostcoで購入したSWATのコスチューム、他にはハリーポッター、ダース・ベイダー、スーパーマン、スパイダーマン、シンデレラ、ピカチュウもいました。みんなそれぞれのキャラクターを楽しんでいて、とても盛り上がっていました。

 また、今年は初めてジャック・オー・ランタンを自作しました。先月に少し紹介したパンプキンパッチでカボチャを購入して、ナイフで加工しました。飾り用のカボチャは意外と柔らかくて、素人でも割と簡単にくり抜くことができました。出来上がったランタンは玄関に置き、悪霊を追い払ってもらいました。
 何より面白かったのはトリック・オア・トリートのイベントです。子供たちが「いたずらされたくなければ、ご馳走をくれ」との言葉を唱えながら家々を訪ね、お菓子を集めて回る習慣です。ボスからはハロウィーンの日は子供たちが訪ねてくるかもしれないからお菓子を用意しておくか電気を消しておくように教えてもらっていました。ただ、実際に訪ねて来られても困惑するので(アパートなので多分来ないとは思いますが)、こちらからお菓子をもらいに行くことにしました。というのも、大学周囲にはハロウィーンイベントで有名な通りがいくつかあり、特にスティーブ・ジョブズ邸のある通りはとても賑わって楽しいと聞いていたからです。携帯の地図を頼りに進んで行くと大きな邸宅が立ち並ぶ通りに入りました。最初は本当に訪ねていいのかと不安だったのですが、次々に子供たちが入って行くのが見えました。一緒について行くと、玄関口でキャンディやチョコレートをくれるのです。さらに通りを進んで行くと、ゾンビに仮装した人がお菓子を配っていたり、家自体がお化け屋敷に改造されていたりと、どんどん本格的になっていきました。プロジェクターや煙を使った演出も結構ありました。さすが、シリコンバレーのハロウィーン、クオリティの高さに大人も驚きの連続です。どこもたくさんお菓子をくれるのですが、特にジョブズ邸は丸ごと一袋、中にはGODIVAやGHIRARDELLI、しかも何故かリアルなネズミのオモチャ入りでした。

ハロウィーン
写真左上・右上:仮装した子供たちが順番にお菓子をもらいに行きます。
写真左下・右下:UFO墜落現場が再現され、防護服を着た人がお菓子を配っていました。



 次はタイムリーな話題でクリスマスです。
といっても、クリスマスツリーの話です。日本ではプラスチックのツリーを飾ることが多いと思いますが、こちらでは生木を使うのが主流です。スーパーやホームセンターでも購入できるのですが、せっかくなのでファームに自分で切りに行くことにしました。車で30分ほどかけて、モミの木のファームを訪れると、敷地の地図と価格表、それとノコギリを渡されます。敷地いっぱいに様々な種類の木があるのですが、よく見るとサイズや形状が異なり、その中から好みの一本を探します。木が決まるとノコギリで水平にカットし、スタンドと一緒に購入です。我々は車に何とか入る2メートル弱のものにしましたが、車に入りきらない大きなツリーを購入する人も多く、車の屋根にくくりつけて運んでいるのをよく見かけました。ツリーを運んで帰ったらスタンドに立てて、たっぷり水を入れて、そこから飾りつけ作業です。自分で飾りつけをするのは幼少時以来でしたが、自分でツリーを切るところから飾りつけまでの経験は格別に楽しいものでした。来年も是非ツリーを切りに行きたいと思っています。

クリスマスツリー
写真左:スタンドに立てやすいようになるべく水平に切ります。
写真右:飾りつけ完了!


では、ハッピークリスマス、よいお年を!
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岩谷先生のスタンフォード大学留学便り  2017.11.27 
 サンクスギビングデイに続く休暇が終わり、クリスマスシーズンに入っています。先月の予告どおり、今月は観光の話題です。
渡米から数ヶ月で生活は落ち着き、子供は幼稚園、妻は英会話スクールやジム通い、それぞれ生活スタイルが確立していきました。おそらく一番時間がかかったのは私自身で、研究が進み始めるまでの半年間、心に余裕がなかったように思います。ただ最近になって何とか研究の道筋がついてきて、週末や連休を利用した小旅行が楽しみの一つになってきました。というわけで、今回はこれまでに行った近場の観光スポットについていくつか紹介したいと思います。

 一つ目はSausalitoです。我々の住むPalo Alto市からSan Franciscoまでは高速を運転して約1時間、そこから有名なゴールデンゲートブリッジを渡った先にあるのがSausalitoの街です。5月に家族と再渡米してきた際、ボスから週末はしっかり家族でエンジョイするようにとアドバイスされ、まずSan Franciscoの観光スポットをいくつか教えてもらいました。ただ、ユニオンスクエア、ケーブルカー、フィッシャーマンズ・ワーフなど、いわゆる街の中心部は、交通量が多くて駐車場も少ないため、車の運転に慣れない当初は敬遠しました。Caltrainという列車で向かう方法もありますが、週末は本数が少なくて便利とは言えません。そこで、ボスの助言のもと、最初の週末はSausalitoの街を訪れました。Bridgewayと呼ばれるメインストリート沿いにオシャレなお店が並び、何といっても対岸からSan Franciscoの街を眺めることができます(写真左上)。
また、子供向けの体験型博物館(Bay Area Discovery Museum)もあり、週末はたくさんの家族で賑わっています。

 二つ目はHalf Moon Bay、車で30-40分の海辺の街です。もともとビーチが有名なのですが、ハロウィーン前になるとパンプキンパッチで盛り上がります。特大パンプキンのコンテストは日本のニュースでも取り上げられることが多いのでご存知の方も多いのではないでしょうか。カボチャを販売しているだけでなく、ハロウィーン向けの飾り付けがされていて、ジャンプハウスやポニーライド、ミニトレイン、お化け屋敷など子供にとってはとても楽しい場所です(写真右上)。

 三つ目はSanta Cruz、同じく車で1時間程度で行くことができます。ここもビーチで有名な街なのですが、何といってもビーチと遊園地が一体化したBoardwalkが有名です。夏休みに私の姉家族が遊びに来ていたので、一緒に出かけて久々に乗り物アトラクションを楽しみました。屋外のアトラクション以外にもゲームセンターやパターゴルフなど屋内施設も充実しており、子供達も大満足でした(写真左下)。

 四つ目はSan Mateo、ベイエリアの住宅都市の一つで、同じく車で30-40分です。メジャーリーグのバリーボンズの育った街としても有名です。このあたりの住宅都市は日系人が多く、日本食のレストランやスーパーが点在していますが、特にSan Mateoは大阪の豊中市と姉妹都市ということで関西人として妙な親近感があります。街の中心にあるセントラルパークには日本庭園があるということで行ってみたところ、かなり本格的な庭園が整備されていました。池には大きな鯉がたくさん泳いでおり、子供も大はしゃぎでした(写真右下)。

観光
左上:SausalitoからはSan Franciscoの街並みを眺めることができます。
右上:パンプキンパッチで有名なLEMOS FARMに遊びに行きました。
左下:急流すべりの落ちる瞬間の写真、遊園地とビーチが一体化しています。
右下:餌やりの様子、鯉のサイズは特大です。



 というわけで、自宅から1時間程度で行ける観光スポットをいくつか紹介しました。留学便りに観光の話題ばかり出すと怒られそうですが、これもまた留学の醍醐味だと思います。これから留学を目指す先生方のモチベーションにつながることを期待して、今後も紹介していきたいと思います。
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岩谷先生のスタンフォード大学留学便り  2017.10.30 
 今月は新生児成育医学会に参加するために一時帰国していました。というのは、ここ数年取り組んでいた蛍光タンパク質(UnaG)を用いたビリルビン測定についての論文が光栄にも学術奨励賞に選ばれ、その受賞講演をさせて頂いた次第なのです。この仕事を担当させて頂いたことは本当に幸運でしたし、同時に森岡先生と中村先生の手厚いご指導を受けることができたこと、心から感謝しております。この受賞を励みに、引き続き臨床応用に向けて取り組むとともに、神戸大学が中心となって進めている黄疸管理の改革に少しでも貢献したいと思っています。また、今回の学会では神戸大学の新生児グループから非常に多くの演題発表がありました。例年4-5演題くらいのところ、今年は何と一般演題だけで9演題(全て口演発表!!)、森岡先生・藤岡先生のもと新生児グループの新たなエネルギーに大きな刺激を受けました。

記念写真
自分の写真で大変恐縮ですが、理事長の楠田先生、学会論文賞の昭和大学 渡邊先生との記念写真です
(黒川先生・山名先生、写真撮影ありがとうございました)。



 留学中の話題としては、前月に続いて研究に関する話題を紹介します。
最近はWestern blottingに取り組んでいます。時間がかかるうえに最終的に撮影してみるまで上手くいっているかどうかわからない、大学院生時代に最も苦労した実験手技の一つです。あらゆる実験手技について言えることかと思いますが、日本でできたことがアメリカでうまくできるとは限りません(逆もまた然りかと)。個々のスキルや理解度にもよると思いますが、機器や試薬も異なりますし、特に過程の長いWestern blottingはとても不安でした。方法に関して言うと、メンブレンへの転写を日本ではタンク式で行っていましたが、こちらではセミドライ式です。また、神戸大学では共同実験室に設置してある新しい化学発光撮影装置が利用できたので暗室不要でしたが、こちらでは従来からの暗室でのX線撮影です。暗室で黙々と一人で作業するのは心細いですが、最終的にバンドが確認できたときの達成感は言葉にできないものがあります。もちろん、方法が正しければできるはずの手技ではあるのですが、異なる環境でも完遂できたことは個人的に大きな自信になりました。

 ちなみに、ボスと撮影方法の違いについて話すことがあったので少し紹介すると、確かに暗室が不要な新しい撮影装置は便利だが、①我々の研究室ではWestern blottingの頻度がそれほど高くない(タンパク発現がメインの研究ではない)、②個々の研究室で購入するには高額(メンテナンスも含めて)、③既存の方法で十分解析可能、が理由で新規購入しない方針とのことでした。確かにその通りで、研究室運営の視点に立った的確なコメントに納得しました。

Western Blottingの様子
Western Blottingの様子



 これから年末シーズンに入ります。11月末のサンクスギビングデイに続く連休、クリスマスから年始にかけての長期休暇、まとまった時間を取りづらくなるので実験計画を調整しているところです(数日で完結できる小分けの実験はできますが、数週間単位で行う動物実験は日程調整が難しくなります)。くわえて、休暇を利用した家族旅行を計画しています。ここ2回、研究の話題が続いたので、次回は観光の話題も提供できればと思っています。
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岩谷先生のスタンフォード大学留学便り  2017.09.25 
 6月中旬から始まった夏休みシーズンがついに終わり、8月中旬より新学期が始まっています。今年の夏はたくさんアイスクリームを食べる機会がありました。というのも、Ice Cream Socialと呼ばれるイベントが頻繁に開催され、新生児グループ、小児科グループ、Postdoctoral Scholar、International Scholar、毎週のように各グループの開催する集まりに参加してはアイスクリームを食べていたのです。PicnicやBBQといったイベントもあるのですが、中でもIce Cream Socialは特に人が集まります。とにかくみんなアイスクリームが大好きなようです。

 今回はこちらでの研究に関する話題です。
 研究を進めるためには、研究室の中で行えること(実際の実験や検体処理)、研究室の外でしかできないこと(動物管理施設や共同実験施設の利用)、これらをうまく調節して計画を立てる必要があると思います。日本とはルールが多少異なることから当初は戸惑うことも多かったのですが、仕組みや段取りが少しずつわかってきましたので、こちらでの状況をいくつか紹介したいと思います。

 まず、本研究室はマウスを用いた動物実験を中心に研究を進めています。検体を処理してPCRやウエスタンブロットなど、この辺りはどこの研究室も同様かと思いますが、ガスクロマトグラフィを用いた実験系を研究室内に有しているのが特徴です。これを用いてある酵素の活性を評価していているのですが、血液検体だけでなく、組織検体も使用可能であることから、動物モデルを用いて各臓器における酵素活性を調べることで病態解析に応用することができます。詳細は割愛しますが、検体採取から解析まで一人でも何とかできる処置です。なので、多少時間がかかっても自分一人で完結するのが良いと思っていたのですが、こちらでは複数人でスムーズに行えるのであれば気兼ねなく積極的に協力し合うというのがポリシーのようです。正直なところ自分一人の方がやりやすいところもあるのですが、郷に入れば郷に従えで、結局のところ毎回手伝ってもらいながらやっています。ガスクロマトグラフィはこれまでに留学された先生方が歴代使用されてきた機器であり、研究室の中でもかなり古い部類に入りますが、まだまだ現役で毎週使わせてもらっています。

研究室の様子
研究室の様子


 動物実験施設は隣接した建物の地下にあり、研究室の建物と地下で連結しているため容易に運搬することができるようになっています。利用には神戸大学と同様に動物実験講習が必要となっており、Webでの講習と現地での実習の両方を受講しました。施設に入るにはカードキー、さらに各ルームキーの入手には指紋認証が必要になっています。入退室の全ての記録が残るわけで、管理が徹底されている印象を受けました。マウスの繁殖については、我々の研究室ではテクニシャンが長年にわたりサポートしてくれていたのですが、先月に退職されたことから、さしあたり自分達で行わなければならず、基本から勉強しているところです。なかなか上手くいかないことも多いですが、動物を用いた実験は目に見えて変化することも多く、臨床的感覚に通ずるところがあって面白いです。日本では動物実験の経験が乏しかったことから新鮮な気持ちで取り組んでいます。

 また、スタンフォード大学といえば、ルシフェラーゼを用いた発光イメージング(In Vivo imaging system)が有名です。併設の共同実験施設であるSmall Animal Imaging Facilityに複数台の機器が設置されており、私もときどき使用させていただいています。共同実験施設の利用についても神戸大学と同様で、講習を受けて使用許可をもらう必要があります。いつも混雑していますが、先月にも記載したように共同実験施設の予約システムは全てオンラインで管理されているため、容易に予約や変更ができます(神戸大学では共有機器の横にある手書きの予約ノートを使っていたので、予約のために直接現地まで行かなくてはならず大変でした)。ちなみに、この予約システムを元に使用料金が請求される仕組みになっており、何とも合理的なシステムで運用されています。

Small Animal Imaging Facilityの入口
Small Animal Imaging Facilityの入口


 肝心の研究成果ですが、大学生と一緒に進めていたプロジェクトが軌道にのり、学会発表の準備を進めています。一方、自身の研究はなかなか上手く進めることができずに悪戦苦闘しているところです。  
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岩谷先生のスタンフォード大学留学便り  2017.08.28 
 先週こちらでは皆既日食がありました。今回は99年ぶりに北米大陸を横断する皆既日食ということで、日本からも多くの皆既日食ツアーが催行されていたようです。我々は皆既日食があるとは知らなかったのですが、息子の幼稚園からお知らせが届き、その存在を知ることになりました。どうやら登園中に日食が起こるみたいなのですが、園児が肉眼で観察してしまうと危険なので、先生が主導して専用グラスを用いて順番に鑑賞しますという案内でした。私はちょうど職場にいる時間だったので研究室のメンバーと、息子はもちろん幼稚園のみんなと、妻はアパートのプールサイドで隣人と、それぞれ数分間の貴重な時間を体験できました。

皆既日食
ちょっと曇っていたので携帯でも撮影できました(お月様ではありません)


 今回は渡米後の携帯電話やインターネットの手続きついて紹介します。 携帯電話については、これまで10年以上にわたり某大手を利用させて頂いていましたが、今回の留学に際して解約して、渡米前にKDDI mobileの提供する定額プランを契約していきました。渡米数日前にSIMカードが届くので、現地到着後にSIMフリー携帯にカードを差し込み、簡単なセットアップをするだけで利用できます。現地においても携帯電話の契約は容易にできるようですが、住宅や銀行の手続きなどの際に電話番号が必要になるので、渡米前に米国の電話番号を手に入れておいたほうが安心かと思います。

 インターネットについて、ホテルでは無料Wi-Fiが利用できましたが、アパートでは契約が必要になってきます。単一のデバイスであればWi-Fiの電波を拾ってクレジットカードなどで契約すれば事足りるわけですが、家族を含めて複数デバイスで使用するとなると自宅にルーターを設置する必要が出てきます。私はアパートから紹介された大手会社で契約することにしたのですが、Webでの申請ののち電話での諸手続きが必要とのことで若干苦労することになりました。何度も復唱しながら住所や電話番号などを確認し、何とか翌週に設置工事の予約を入れたのですが、翌日になってなぜか部屋の広さやドアの枚数について追加の問い合わせ電話がありました。1ベッドルームという情報で十分ではないかと思いながらあまり気に留めていなかったのですが、設置工事前日の確認メールにてインターネットだけではなくホームセキュリティの契約が追加になっていることに気づきました。ホームセキュリティというのは外出時にスマートフォンなどのデバイスを用いて自宅の状況をチェックできるサービスのことで、そのためにドアの枚数などの情報が必要だったわけです。窓口はすでに閉鎖している時刻になっており、我ながらかなり困惑しましたが、さすが大手会社、Webでのチャット窓口で交渉することができました。私の聞き取りミスもあったと思うので申し訳なかったのですが、翌日の設置予約の取消、契約内容の変更など丁寧に対応してくださり、さらにはプロモーションの案内をしてくれて、当初予定していたものより安価なプランでインターネット契約をすることができました。ルーターの設置方法についても詳しく案内があり、最寄りの支店でキットを受け取り、自分で設置することで、郵送費や工賃のコストも抑えられることができました。無事に繋がるまでは不安でしたが、数十分でWi-Fiに接続可能となり、以降インターネットについては快適に利用できています。

デバイス
我々家族の使っているデバイス(Apple信者というわけではありません)


 ご存知のように、ここシリコンバレーには、Apple、Hewlett-Packard、Google、Facebook、Yahoo、Adobeなど超有名企業が集積しており、IT企業の一大拠点となっています(ちなみに、スタンフォード大学併設のLucile Packard Children’s HospitalはHewlett-Packardの共同創設者であるDavidとその妻Lucileによって設立されたそうです)。これはアメリカ全般に言えることかもしれませんが、日本よりも多くの物事がオンラインで管理されていると感じます。大学関連では各種講習(神戸大学で例えると職員の必修講習や研究者のための動物実験・遺伝子組換え実験講習)、共同実験施設の予約システムが一括してオンラインで管理されています。また、生活においても各種手続きの多くがペーパーレスになっており、賃貸契約書もPDFで用意されたものに電子署名するという感じで驚きました。
 次回はそろそろ研究の話題も提供できればと思っています。
 
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岩谷先生のスタンフォード大学留学便り  2017.07.31 
 日本は夏休みシーズンですね。アメリカの学校ではすでに6月中旬から夏休みに入っており、およそ2ヶ月から2ヶ月半あるようです。日本と比較すると夏休みの長さに驚きますが、実際には親も同期間の休暇をとるというわけにはいかないので、こどもをサマースクールやサマーキャンプといったプログラムに参加させたりするようです。

 我々の研究室においても、高校生が夏休み期間を利用して実習に来ています。まだ慣れないこちらでの実験内容を、私の英語力で説明するのは本当に申し訳ないのですが、どの学生もこちらの予想を大きく上回る理解力でカバーしてくれています。お世辞もあるかと思いますが、楽しく過ごせたとありがたいコメントを残してくれると励みになります。何事においてもそうですが、言葉での説明よりも、実際に一緒に手を動かしてお互いの目で確認していくという作業の大切さを今さらながら感じています。

 今回はこちらでの日常生活に関する話題を紹介します。
一つ目はゴミ収集の一コマです。我々家族はおよそ250世帯が居住する集合アパートメントの一部屋を借りて生活しています。アメリカにおけるゴミの分別は日本ほど厳密ではなく、リサイクルできるものと、生ゴミなどリサイクルできないないものに分けて、設置されているコンテナに入れるだけです。生活ゴミだけでなく、ソファーや本棚などの家具も同じ扱いなので、あっという間にゴミが一杯になります。コンテナから溢れるほどのゴミが溜まっているのを見かけるたびに、漠然と収集が大変そうだなと安易に考えていたのですが、ある日その収集現場に居合わせました。何とゴミ収集車がロボットアームでコンテナごと持ち上げて、そのまま荷台に放り込むという何ともダイナミックな方法で収集するのです。当然細かいゴミが少しこぼれるのですが、そのあと手で拾って投げ入れるといった感じで、何ともアメリカ的な方法だと驚きました。確かにこの方法であれば、1人で収集作業ができるので人手もかかりませんし、きわめて合理的ではあります。
  

ゴミ収集の様子
ゴミ収集の様子


 二つ目はプールでの出来事です。こちらの集合アパートメントにはプールやジムが備えられていることが多く、私もときどき息子とプールで遊んでいます。ちょうど我々の部屋のテラスからプールが正面に見えるのですが、人気がないときにカモが出没することに気づきました。1匹もしくは2匹で出没するので夫婦なのかなと噂をしたりしているうちに、いつの間にかカモを見つけるのが息子の楽しみの一つになっていました。そんなある日のこと、近くに人がいるにも関わらずカモがいると思ったら、なんと子連れで泳いでいるのを発見しました。息子とプールまで見に行ったところ、どうやら母ガモが子連れで泳いでいたところにプール利用者がやってきてしまい、母ガモだけなら飛んで逃げるところが、子ガモがまだ飛べないので母ガモが逃げずに守っているという構図のようでした。そこで、プールサイドにいた別の家族とともに子ガモ(数えると10匹もいました)の救出作戦を始めることにしました。飛べないなりにプールサイドに登ろうとするのですが、水面とプールサイドの微妙な段差を子ガモが越えることができません。ビート板をスロープ代わりにして何とか子ガモが段差を越えられるようにと工夫したのですが、足が滑ってしまうようです。そうこうしているとアパートの管理人さんがタオルを持ってきてくれて、ビート板にタオルをかけることでようやく滑らずにプールサイドに登ることができました。そそくさと母子ともにプールエリアから歩いて脱出していきましたが、飛べない子ガモ10匹を連れてプールに入りこんだわけなので、近くに巣があるのかもしれません。その後、プールで見かけなくなってしまっているのですが、プールを危険視して近づかなくなったのか、子育てで忙しいだけなのか、またカモの家族と会えたらいいねと息子と話している今日この頃です。
 

母ガモと子ガモたち
母ガモと子ガモたち


今回は以上です。
日本は猛暑が続いているようで、お体にお気をつけてお過ごし下さい。
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岩谷先生のスタンフォード大学留学便り  2017.06.26 
 早いもので3回目の報告になります。先月末に家族が無事に到着し、いよいよ留学生活が始まったという感じがしています。生活面では、家族の合流に伴ってアパートの住居者変更や医療保険プランの変更手続き、息子のプレスクール手配などを進めています。研究面については、まだまだ予備実験にも苦労している段階で、方向性が定まるにはもう少し時間がかかりそうです。

 今回は車の購入や銀行での手続きを中心にコメントしたいと思います。前回記載させていただいたように、渡米後のセットアップに重要なのは車と住居地の確保です。私の場合は、アパートの手続きと並行しながら、日系のGulliver USAで中古車を購入しました。日本人コミュニティサイト(スタンフォード日本人会)やSale-N-Buyといったムービングセールサイトでもいくつか情報はあったのですが、故障の可能性や帰国時の売却を考慮して、2015年製と新しく走行距離の少ない日本車にしました。個人購入より高額になるのは覚悟していましたが、Kelly Blue Bookによると相場相当の価格で、かつ一定期間の保証もついているので比較的リーズナブルだったと思っています。自動車保険の加入について、JALファミリークラブの海外赴任者総合保証制度に加入していれば日本人向けの保険会社を斡旋してくれるとのことでしたが、Gulliverで購入すると同一の保険会社を無料で紹介してもらえるために結果的には不要でした。渡米直後は何かと忙しく、手続きも全て英語のために苦労しましたが、車に関しては日本語でスムーズに購入できたことから精神的にかなり助かりました。

  同時に銀行にも数回通いました。車や住居に関する支払いについて、クレジットカードや現金での支払いには限界があり、こちらでは銀行口座を利用した小切手での支払いが主流です。つまり、銀行口座がないと車や住居の確保が困難ということになります。私の場合は、渡米前に東京三菱UFJ銀行経由で米国ユニオンバンクの口座を作成しました。これは、三菱東京UFJ銀行が現地銀行の預金口座開設を取り次いでくれるサービスで、日本にいながら口座を開設できるので、渡米前から入金(海外送金)が可能となります。初期費用をすでに入金しておけば、渡米時に大金を持ち込む必要がなく、個人的にこのサービスは大変役立ちました。ただし、小切手の発行については容易ではなく、安定した住居地が決まっていない段階では小切手シートを発行してもらえませんでした(厳密には発行できるようですが、危険だからしないほうがよいと言われました)。なので、支払い金額が決まった段階で窓口に出向いてCashier’s Checkを発行してもらい、車の購入費やアパートの賃貸費を支払いました。こうして、渡米後1週間で車と住居を確保できたことで、以降の諸手続きも落ち着いて進めることができました。

日本車
息子の希望で赤色にしました




 研究内容についてはコメントできるようなところまで進んではいないのですが、実験器具の1つであるピペットについて紹介したいと思います。まず、日本ではいわゆるピペットマンしか使ったことがなかったのですが、こちらの研究室で初めてRepeating Dispenser(https://www.hamiltoncompany.com/products/syringes-and-needles/syringe-accessories/)を使用しました。本体は1種類ですが、専用のシリンジを使い分けることで1μL、5μL、20μLなどの容量を区別できます。反復使用の許される実験系ではチップの消費を抑えることができますし、頻用する容量別に複数準備しておけば作業効率も高くなります。当初は使い慣れませんでしたが、今はピペットマンよりもこちらを使用した実験を中心に行っています。

ピペットマン
Repeating Dispenser(左)とピペットマン(右)

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岩谷先生のスタンフォード大学留学便り  2017.05.29 
 渡米して2ヶ月が経過しました。何人かの日本人留学生とも交流させていただき、色々助けてもらいながら何となくこちらでの生活スタイルが確立してきました。一方、研究面については、こちらの研究室が得意とするガスクロマトグラフィやIn vivoイメージングの手法を学びながら、ようやく予備実験を開始したところです。

 今回は渡米後のセットアップを中心に報告したいと思います。
 留学本や留学サイトを参考にしながら渡米後の手順をいろいろ考えてはいましたが、何より重要なのは車と安定した住所地の確保の2点に集約されると思います。スタンフォード大学はとにかく広いです。その敷地面積は約3310ヘクタール(993万坪)と広大であり、東京都杉並区とほぼ同じだそうです。当然住居地や商業地域はその周囲に広がっており、セットアップには車が必要不可欠です。また、各種手続をすすめるには安定した住居地がないと進めてもらえないことがほとんどです。ホテルでの長期滞在でも問題はないようですが、長期であればあるほど安価なホテルにせざるを得ませんし、そうなると重要書類が郵送されてきた際に紛失されないか不安が出てきます。なので、渡米後1週間程度で車と住居地の手配をすることが最初の目標でした。

  同時期に帰国する方からアパートや車を引き継ぐことができれば理想的ですが、私の場合にはタイミングが合わず、ホテルとレンタカーのみ予約して出国しました。海外で運転することに戸惑いはありましたが、初日からレンタカーを借りて、出国前にアポイントを取っておいたアパートに翌日伺いました。職場近くのアパートが理想的ではありましたが、家賃や商業地域への距離などを考えて少し離れたアパートにしました(ベイエリアの家賃高騰はさらに進んでおり、1ヶ月分の家賃が日本の職場での基本給に匹敵します・・・)。出国前からセットアップについて相談させていただいていた同じ小児科の先生が同アパートに居住されていたことも大きな理由でした。ちょうど部屋が1つ空く予定とのことで、あらかじめ用意していた書類(パスポート、Offer Letter、預金証明書、借家人保険証)を提出し、無事に契約することができました。借家人保険(Renter’s insurance)については、渡米前に加入していたJALファミリークラブの海外赴任者総合保証制度で対応できました。清掃に数日かかるとのことでしたが、幸いにして予約していたホテルの最終日から入居することができました。

  また、今月はサンフランシスコで開催されたアメリカ小児科学会に参加させていただき、神戸大学メンバーとも再会することができました。例年どおり神戸大学からは4演題と多くの発表があり、日本国内はもとより米国の研究室と比べても遜色ない研究成果を出していることを誇らしく思いました。さらに、例年参加させていただいているビリルビンクラブでは、中村先生がAwardを受賞され、スタンフォード大学と神戸大学の長年にわたる交流の様子がプレゼンテーションされるという大変貴重な機会に居合せることができました。中村先生には留学中は日本語が恋しくなるだろうからと最近出版された育児コラム「赤ちゃんの四季」をサイン入りで頂きました。大学院生時代からの手厚いご指導に続き、温かいお心遣いに大変感謝しております。

  大学メンバーとは一緒に学会に参加したのみならず、大学近辺やIT企業(FacebookやGoogle)の本社を巡るドライブに出かけたりもしました。日本語で気兼ねなく話せるメンバーとの再会は、英語で苦労している私にとっては有意義な気分転換にもなりました。何より久々に豪華なディナーをいただき、みなさん本当にありがとうございました。


>久々の日本食
久々の日本食(いわゆるカリフォルニアロール)

>Facebook本社にて「いいね!」
Facebook本社にて「いいね!」

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岩谷先生のスタンフォード大学留学便り  2017.04.30 
 3月末に渡米してから1ヶ月が経過しました。最初の1週間は住居・銀行・車など生活準備の手配、2週目には大学での諸手続きと慌ただしく過ごしましたが、3週目に入ってから生活が落ち着いてきました。現在は5週目に入ったところですが、研究に必要な講義を受けるとともに、基本的な実験手技の習得に励みながら自身の研究計画をぼんやりと考え始めたところです。留学便りということで、前任者の藤岡先生の内容と重複する部分もあるかと思いますが、私なりに留学状況を報告させていただければと思います。

 まず、ご存知の方もおられるかと思いますが、神戸大学新生児グループからこの研究室への留学は私で6人目になります。当時からおられるボスはもとより、秘書さんを含めた何人かのスタッフは歴代の留学メンバーをよくご存知で、M、I、T、Y、K(全て名前のイニシャル)、研究室では頻繁に過去の留学メンバーの名前が出てきます。その甲斐もあってか私にも初日から色々温かく声をかけていただき、これまでの先生方が築かれてきた信頼関係のありがたさを感じております。

 今回は初回ですので、渡米前の諸手続きに関して、私の経験をもとに述べたいと思います。まず、研究留学前に必要な書類は、(1) CV、(2) Offer Letter、(3) DS2019、(4) J1-VISAになります。研究室のボスとは例年アメリカ小児科学会でお会いさせて頂いており、昨年9月の段階でメールでの内諾を得ていましたが、実際のペーパーワークは今年1月から始まりました。まず英文履歴書であるCVと家族分を含めたパスポート情報を先方に送付するとともに、スタンフォード大学の場合はSecure Portalというオンラインサイトからこちらの情報を入力します。くわえて、大学卒業証明書、PhD取得(見込み)証明書、英語能力証明書なども求められました。おおむね1ヶ月程度で必要書類が揃い、無事にOffer Letterが発行され、しばらくしてDS2019が送付されてきました。DS2019は雇用主が申請者を一定期間受け入れること、また資金や英語力が十分であることを証明したものです。DS2019→領事館予約→J1-VISA取得→出国の流れになりますので、DS2019が律速段階となるわけですが、私の場合には2月19日に届きましたので、余裕を持って3月上旬に領事館の予約を入れることができました。J1-VISAの申請には、(1) DS160、(2) SEVIS費用の支払い、(3) VISA申請費用の支払い(家族人数分)、(4) 証明写真、(5) パスポート、(6) 面接予約確認書、が必要になります。(1)の申請書にもっとも時間を要するわけですが、所定の条件をクリアしたデジタル写真が必要とのことで、特に背景や影など細かい注意点があります。我々家族の場合には、大人の分は自宅でなるべく条件を揃えて撮影しましたが、子供の分は自信がなかったために写真屋さんでお願いしました。(4)の証明写真とは異なるものというふうに記載されている情報もありましたが、同じものでも問題ありませんでした。

 領事館での面接は思っていたよりもずいぶん楽でした。荷物チェックが厳しいですので、最寄駅のコインロッカーにバッグなどを預け、必要書類のみを持って領事館の手前に並びました。順に中へすすみ、まず1階で書類チェックを受け、次に3階に案内されます。デジタル写真について言及されたので撮り直しかと少し焦りましたが、背景が少し暗いので次回申請される際はもう少し明るいほうがいいですねというくらいでした。最後に2階で領事との面談ですが、これは通常のパスポートチェック程度の内容で、場合によっては日本語でも問題ないようでした。郵送用のレターパックは準備不要で、数日でVISAの貼付されたパスポートが郵送されてきました。

  渡米前の諸手続き全般に関して、どうしても書類が多くなります。留学本や留学サイトにもよく記載されていますが、書類不足や不備にならないよう証明書関係は早めに入手のうえ、PDF保存のうえPCや各種デバイスでも閲覧できるように整理しておきました。これは渡米後の住居・銀行・車などの手配においても重要ですので、これから留学される方はぜひとも気に留めておいたほうがよいかと思います。

 今回は以上です。 次週はサンフランシスコで開催されるアメリカ小児科学会に参加してきます。 アパートメントから会場まで車で1時間の距離ですが、まだ高速の運転に自信がないので、さしあたり電車で行こうかなと思っていたりします。


スタンフォード大学といえばフーバータワー、毎日自転車で通り過ぎています

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