医局からのお知らせ

  • 2023.07.04
  • お知らせ
  • 【研究成果】森山直紀・斉藤 雅史らの原著論文がJournal of Clinical Medicineに掲載されました

  • Moriyama N, Saito M*, Ono Y, Yamashita K, Aoi T, Kotani J. Increased Interleukin-17-Producing γδT Cells in the Brain Exacerbate the Pathogenesis of Sepsis-Associated Encephalopathy and Sepsis-Induced Anxiety in Mice. Journal of Clinical Medicine. 2023; 12(13):4309. https://doi.org/10.3390/jcm12134309

    *Corresponding author

    この度、当科の森山直紀(大学院3年生)および斉藤 雅史 (特命助教)らの研究チームは、敗血症後症候群における精神疾患の増悪に、T細胞の一種であるγδT細胞が関与することを明らかにしました。

    研究チームは、はじめに敗血症誘導から10日程度において、マウスの不安様行動が増悪していること、および脳内で炎症性サイトカインの一つであるインターロイキン(IL)-17の発現が増加していることを見出しました。既知の研究から脳におけるIL-17はγδT細胞であることが報告されていたことから(de Lima, et al. 2020. Nat Immunol)、この細胞に注目して解析したところ、健常マウスの3倍以上に増加していたことが分かりました。また、γδT細胞は敗血症重症度依存的に、脳に増加することが分かりました。

    そこで、敗血症誘導後のマウスに抗体を投与することでγδT細胞あるいはIL-17を中和したところ、脳内の炎症が抑制され、不安様行動の増悪が抑制されることが明らかになりました。以上の結果は、敗血症性脳症および不安様行動の増悪に脳内のγδT細胞大きく関与することを示します。

    敗血症後症候群の病態形成における研究は、これまでミクログリアが主役でした。γδT細胞は脳でも極めて小さな集団ですが、本研究により、その影響は予想以上に大きいことが示唆されました。γδT細胞をはじめ、脳のT細胞と疾患に関する研究は少ないのが現状です。今後、基礎と臨床、両方の研究において脳のT細胞の生理学的な意義を明らかにする必要があると考えています。
    敗血症脳症の病態生理の理解を、大きく前進させる重要な結果と考え、ここに紹介させていただきます。

    本論文の全文は以下のURLから閲覧できます。
    https://www.mdpi.com/2077-0383/12/13/4309

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