図1:本邦および兵庫県における喘息死の推移
図1は本邦および兵庫県における喘息死の推移を示しています。本邦における成人気管支喘息の有病率は欧米と比べて低いことが報告されていますが、一方で人口10万人当たりの喘息死亡者数は欧米に比較し高いことが問題とされています。厚生労働省人口動態調査によると、全年齢における喘息の死亡数は、1995年に7,253人とピークを示した後1996年 5,926人と減少し、2000年 4,427人、2004 年 3,283人と順調に減少し、2009年は2,139人とさらに減少してきています。しかし欧米諸国と比較すると人口10万人当たりの喘息死亡者数は約2.0人と欧米のそれ(ポルトガル1.5人、フランス1.2人1)、米国1.3人2))に比較し高いことが問題となっています。成人喘息の有病率が欧米では20%を超えるのに対し、本邦では8.1%であることを加味して考慮すると、日本における喘息死亡率は極めて高いといえます。
兵庫県は図1に見られるように、1990年以降、喘息死は全国平均を下回ったことがなく、2008年の喘息死亡者数は128名でした。喘息治療においては、後進地域といえるかもしれません。本邦、特に兵庫県でみられる喘息死の特徴は、高齢者喘息患者の死亡者に占める割合が高いこと(90%以上)と、その死亡率に大きな地域格差が認められる点です。図2には神戸市と丹波地域での喘息死の推移を示めしましたが、神戸市が全国平均に近い数値であるのに対し、丹波地域の死亡率ははるかにそれより高い値を示しています。
このような状況の下、喘息死は予防できるものであるという観点から、兵庫県全体として質の高い喘息治療を目指し、「兵庫県喘息死ゼロ作戦」を設立しました。
図2:神戸市と丹波地域での喘息死の推移