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受託解析・共同研究

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本研究室では、さまざまな質量分析計を用いて、メタボロミクス(代謝物の網羅的解析法)を用いて、
さまざまな代謝物の変化(プロファイリング)による新しい疾患の診断システムを開発しています。
協力:大阪大学福崎研究室;
http://www.bio.eng.osaka-u.ac.jp/br/index.html

メタボロミクス関連の論文は、以下を参照していただけましたら幸いです。

日本語総説、その他

1. 「メタボロミクスをはじめよう」はこちらです。。
2. 「メタボロミクスの疾患診断への試み」(福岡医学会雑誌掲載分)は、こちらです。
3. 「GC/MSを用いた血中代謝物プロファイリングによる膵臓がんの新規診断法」、テクニカルレポートは、こちらです。
4. 雑誌「ブーメラン」に掲載されました。ウェブ版は、こちら、PDFは、こちらです。
5. 日経新聞(平成23年5月4日)全国版で紹介された記事はこちら
6. がんの浸潤・転移ー臨床と基礎ー(南山堂、高井義美編、第11章 質量分析診断)は、こちら。
7. 消化器内科(科学評論社、2012年4月号)「血清脂肪酸プロファイリングによる新規大腸癌早期診断法の確立に向けた取り組み」は、こちら。
8. 分子消化器病(先端医学社、2012年6月号)「ガスクロマトグラフ質量分析計を用いたメタボローム解析による消化管疾患診断に向けて」は、こちら
9. 大腸がんメタボロミクス関連の新聞記事(平成24年7月13日)は、こちら
10. 週刊現代(第54巻29号、8月11日発行、平成24年7月30日発売分 178-179ページ)の記事は、こちら
11. 医療介護情報誌キャリアブレイン(平成24年8月8日)の記事は、こちら。
12. 厚生政策情報センターの記事は、こちら。
13. 朝日新聞(平成24年8月16日朝刊26面)の記事は、こちら。
14. 文教速報(平成24年8月8日、第7760)の記事は、こちら。
15. Kansai Window, KIPPO Newsの記事は、こちら。
16. 読売ファミリー(平成24年9月26日号、3面)の記事は、こちら
17. メタボロミクスによる大腸がん診断、サイエンスニュースで配信されました。
メタボロミクスによる大腸がんマーカーの探索が、JSTサイエンスニュースで配信されました。
JSTサイエンスニュースサイトは、こちらです。
Youtubeは、こちら。  ニコニコ動画は、こちら。
18. 小林先生の膵癌血清メタボロミクスの論文が、さまざまなメディアで紹介されました。
AACR ホームページは、こちら。Science Dailyは、こちら、MetaboNewsは、こちら
11. 日本経済新聞(2013年8月20日版、14面)に、「メタボロミクスを用いた膵臓がん診断法の開発」の記事はこちら。

英語論文
総説

1. Yoshida M*, Hatano N, Nishiumi S, Irino Y, Izumi Y, Takenawa T, Azuma T. Diagnosis of gastroenterological diseases by metabolome analysis using gas chromatography-mass spectrometry. J Gastroenterol. 2012 Jan;47(1):9-20. (*correspondence)
本論文は、メタボローム解析による消化器疾患の診断やバイオマーカー探索の現状と将来の展望をまとめた総説です。
ぜひ、ご一読を頂けましたら幸いです。


原書論文 (Peer Review)

1. Nishiumi S, Shinohara M, Ikeda A, Yoshie T, Hatano N, Kakuyama S, Mizuno S, Sanuki T, Kutsumi H, Fukusaki E, Azuma T, Takenawa T, and Yoshida M*. Serum metabolomics as a novel diagnostic approach for pancreatic cancer. Metabolomics. 2010 Nov;6(4):518-28. (*correspondence)
膵臓がんは早期発見が困難かつ進行も早い予後不良のがんです。本論文では、膵臓がんの早期診断につながるバイオマーカーを探索するため、糖・有機酸・アミノ酸・脂肪酸を測定対象としたGC/MSメタボロミクスを実施しました。その結果、膵臓がんの発症により血清中の数種の低分子代謝物が健常者と比較して変動すること、また、膵臓がんのステージの違いによっても代謝物が変動することを明らかにしました。さらに、膵臓がんの発症初期においても数種の代謝物が変動することを明らかにしました。

2. Kawano Y, Nishiumi S, Tanaka S, Nobutani K, Miki A, Yano Y, Seo, Y, Ashida H, Kutsumi H, Azuma T, and Yoshida M*. Activation of Aryl Hydrocarbon Receptor Induces Hepatic Steatosis via Upregulation of Fatty Acid Transport. Arch Biochem Biophys. 2010 Dec 15;504(2):221-7. (*correspondence)
Aryl hydrocarbon receptor (AHR) はhelix-loop-helix/Per-ARNT-Sim ドメインを持つ転写因子であり、様々な生体異物によって活性化されることが知られています。本研究では肝臓で起こるAHRの活性化が脂肪肝の促進にどのように関与しているかを調べました。マウスに3-methylcholanthreneを投与することでAHRを活性化させたところ、肝細胞内に中性脂質と長鎖不飽和脂肪酸が増加することを発見し、肝細胞内での脂質や脂肪酸の増加は、fatty acid translocase (FAT) が関与していることを明らかにしました。これらの結果は、AHRの活性化によりFATの発現が促進され、肝細胞内に多くの長鎖脂肪酸が取り込まれることで、脂肪肝の発症につながる可能性を示しています。

3. Shiomi Y, Nishiumi S, Ooi M, Hatano N, Shinohara M, Yoshie T, Kondo Y, Furumatsu K, Shiomi H, Kutsumi H, Azuma T, Yoshida M*. A GCMS-based metabolomic study in mice with colitis induced by dextran sulfate sodium. Inflamm Bowel Dis.2011 Nov;17(11):2261-74. (*correspondence)

デキストラン硫酸ナトリウムを用いた潰瘍性大腸炎マウスモデルを用いて、炎症期や炎症収束期において、血清、ならびに、大腸組織で変動する代謝物をGC/MSにより分析しました。その結果、グルタミンの変動は顕著であること、腸炎の進展によってその存在量が劇的に減少していました。潰瘍性大腸炎患者の血清や炎症部位の組織においても同様の結果が得られました。さらに、グルタミンを潰瘍性大腸炎マウスに摂取させることで腸炎治療効果を発揮できることを明らかにしました。

4. Hori S, Nishiumi S, Kobayashi K, Shinohara M, Hatakeyama Y, Kotani Y, Hatano N, Maniwa Y, Nishio W, Bamba T, Fukusaki E, Azuma T, Takenawa T, Nishimura Y, Yoshida M*. A metabolomic approach to detect early stages of lung cancers. Lung Cancer. 2011 Nov;74(2):284-92.) (*correspondence)
肺がんの早期発見に有用なバイオマーカーを探索するために、肺がん患者の血清と肺がん組織を用いたGC/MSメタボローム解析を実施しました。肺がん患者の血清において、健常者と比較して23種の代謝物が有意に変動し、肺がん組織においても48種の代謝物の有意な変動を確認しました。さらに、肺がんの進行の程度を血清内の代謝物パターンによって表現できることを明らかにしました。これらの結果は、肺がんの進行を血清メタボローム解析により診断できる可能性を示しています。

5. Ooi M, Nishiumi S, Yoshie T, Shiomi Y, Kohashi M, Fukunaga K, Nakamura S, Matsumoto T, Hatano N, Shinohara M, Irino Y, Takenawa T, Azuma T, and Yoshida M*. The GC/MS-based profiling of amino acids and TCA cycle-related molecules in ulcerative colitis. Inflamation Res. 2011 Sep;60(9):831-40. (*correspondence)
潰瘍性大腸炎患者の大腸組織の炎症部位と非炎症部位において、アミノ酸とTCA回路関連代謝物をGC/MSにより分析しました。潰瘍性大腸炎の病変部位では、非病変部位と比較して多くのアミノ酸やTCA回路構成成分の量が低下することを見出しました。さらに、潰瘍性大腸炎患者やクローン病患者血清においても、数種のアミノ酸が低下していることを明らかにしました。これらの代謝物は炎症性腸疾患の新規バイオマーカー候補ならびに治療薬となる可能性を有しています。

6. Tsugawa H, Bamba T, Shinohara M, Nishiumi S, Yoshida M, Fukusaki E. Practical Non-targeted Gas Chromatography/Mass Spectrometry-based Metabolomics Platform for Metabolic Phenotype Analysis. J Biosci Bioeng. 2011 Sep;112(3):292-8.
本論文では、GC/MS分析法とそれにより得られたデータ解析手法の改良を行っています。島津製作所の四重極型GC/MS (GCMS-QP2010 Ultra) はメタボロミクス研究に欠かすことのできない高い感度と広いダイナミックレンジ、高速スキャンスピード (10,000 u/s) の特徴を有していることを証明し、従来法と比較して検出できる代謝物数を増加させることに成功しました。さらに、インハウスGC/MSデータベース(500代謝物)の作成とピークの自動同定システムを開発することで、代謝物同定の精度とデータ処理の高速化を実現しました。

7. Kondo Y, Nishiumi S, Shinohara M, Hatano N, Ikeda A, Yoshie T, Kobayashi T, Shiomi Y, Irino Y, Takenawa T, Azuma T, Yoshida M*. Serum fatty acid profiling of colorectal cancer by gas chromatography/mass spectrometry. Biomark Med. 2011 Aug;5(4):451-60. (*correspondence)
大腸がん患者と健常者の血清中脂肪酸プロファイリングを実施した結果、大腸がん患者血清において、4種の脂肪酸が健常者と比較して有意に増加し、その一方、5種の脂肪酸はその存在量が減少することを明らかにしました。これらの変動は、大腸がんの早期ステージに限定した場合においても確認できました。これらの結果は、数種の脂肪酸の分析により、大腸がんの早期診断につながる可能性を示しています。

8. Ikeda A, Nishiumi S, Shinohara M, Yoshie T, Hatano N, Okuno T, Kutsumi H, Banba T, Fukusaki E, Takenawa T, Azuma T, Yoshida M*. Serum metabolomics as a novel diagnostic approach for gastrointestinal cancer. Biomedical Chromatography. 2012 May;26(5):548-58. (*correspondence)
消化器がんである大腸がん、胃がん、食道がんの患者血清を用いてGC/MSメタボローム解析を実施しました。その結果、各々のグループに特徴的な代謝物変動パターンを確認でき、これは、血清メタボロミクスによって大腸がん、胃がん、食道がんの識別できる可能性を示しています。さらに、各々のがんの特徴を示す代謝物は、各がんの初期ステージにおいても変動していることから、血清メタボロミクスは、がんの早期診断に適応可能である可能性を示しています。

9. Matsubara A, Uchikata T, Shinohara M, Nishiumi S, Yoshida M, Fukusaki E, Bamba T. Highly sensitive and rapid profiling 1 method for carotenoids and their epoxidized products using supercritical fluid chromatography coupled with electrospray ionization- triple quadrupole mass spectrometry. J Biosci Bioeng. 2012 Jun;113(6):782-7
カロテノイドが酸化されることで生じるエポキシ体は、生体内の酸化ストレスマーカーの候補と考えられています。従来手法では、カロテノイドとそれらのエポキシ体を同時にかつ短時間に分離・分析することは困難でした。本論文では、疎水性代謝物の分離に良好な超臨界クロマトグラフィー/タンデム質量分析 (SFC/MS/MS) により上記の問題を解決しており、将来的な臨床応用につながる分析系を構築できました。

10. Yoshie T, Nishiumi S, Izumi Y, Sakai A, Inoue J, Azuma T, Yoshida M*. Regulation of the metabolite profile by an APC gene mutation in colorectal cancer. Cancer Sci.2012 Jun;103(6):1010-21. (*correspondence)
APC遺伝子の変異は、Wnt経路の恒常的な活性化を誘発し、その結果、大腸がんの発症につながると考えられています。そこで、APC遺伝子の変異とそれに伴う代謝物変動を、APC遺伝子を欠損させたSW480細胞、大腸発がんモデルAPCmin/+マウス、ヒト大腸がん由来細胞株移植ヌードマウスを用いて、GC/MSメタボローム解析により検討しました。その結果、一連のメタボローム解析によって、APC遺伝子はアミノ酸代謝やエネルギー代謝を調節している可能性が示され、さらに、がん細胞の増殖に寄与する代謝物を見出しました。

11. Sakai A, Nishiumi S, Shiomi Y, Kobayashi T, Izumi Y, Kutsumi H, Hayakumo T, Azuma T, Yoshida M*. Metabolomic analysis to discover candidate therapeutic agents against acute pancreatitis. Arch Biochem Biophys. 2012 Jun 15;522(2):107-20. (*correspondence)
セルレイン、あるいは、アルギニンをマウスに投与することによって急性膵炎を誘発させ、その膵炎発症マウスの血清や膵臓組織で変動する代謝物をGC/MSにより分析しました。その結果、2種類の膵炎発症マウスモデルに共通して、膵臓組織中のグルタミン酸とO-ホスホエタノールアミン量が著しく減少することを発見しました。この結果は、グルタミン酸とO-ホスホエタノールアミン量の減少が膵炎の発症に関わっている可能性を示唆しています。さらに、急性膵炎発症マウスにグルタミン酸、あるいは、O-ホスホエタノールアミンを投与することによって、膵炎の発症を緩和できることを明らかにしました。これらの結果は、メタボローム解析が急性膵炎に対する新たな治療薬の開発に有用である可能性を示しています。

12. Hasokawa M, Shinohara M, Tsugawa H, Bamba T, Fukusaki E, Nishiumi S, Nishimura K, Yoshida M, Ishida T, Hirata K. Identification of Biomarkers of Stent Restenosis with Serum Metabolomic Profiling Using Gas Chromatography/Mass Spectrometry. Circ J.2012;76(8):1864-73.
ステント治療は、急性冠動脈疾患に対する主要な治療法の一つですが、再狭窄を起こすケースが多くあることが知られています。そこで、GC/MSによる血清メタボローム解析の結果を、ステント治療6ヶ月後のフォローアップ検査の結果と照らし合わせることで、再狭窄の可能性を示すバイオマーカーを探索しました。大規模な再狭窄を起こした患者(23名)の血清中代謝物と、小規模な再狭窄しか起こさなかった患者(47名)の血清代謝物を比較した結果、8種類の代謝物が有意に変動していることを明らかにしました。これは、代謝物プロファイリングがステント再狭窄の血清バイオマーカー探索に有用であることを初めて証明した研究です。

13. Uchikata T, Matsubara A, Nishiumi S, Yoshida M, Fukusaki E, Takeshi Bamba T. Development of oxidized phosphatidylcholine isomer profiling method using supercritical fluid chromatography/tandem mass spectrometry. J Chromatogra A.2012 Aug 10;1250:205-11.
高度不飽和脂肪酸を含むホスファチジルコリン(PC)は,酸化されることによりさまざまな異性体を含む酸化PCを生じます.この酸化PCはアテローム動脈硬化症を含むさまざまな疾患に関連していることが明らかとなり,その詳細なプロファイリング手法が切望されていました.本論文では,脂質の分析に有用な超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)を用いて酸化PC異性体の分析系を構築することで,マウスの肝臓からヒドロキシ,エポキシ,ヒドロペルオキシ体などの酸化PCを一斉に観測することに成功しました.

14.Nishiumi S, Kobayashi T, Ikeda A, Yoshie T, Kibi M, Izumi Y, Okuno T, Hayashi N, Kawano S, Takenawa T, Azuma T, Yoshida M*. A novel serum metabolomics-based diagnostic approach for colorectal cancer. PLoS One2012;7(7):e40459. (*correspondence)
日本において増加傾向にある大腸がんを完治するには、早期発見が不可欠です。しかし、現在、臨床で使用されている腫瘍マーカーは、特に、早期大腸がん患者に対しての感度が低いことが問題とされています。本論文では、GC/MSを用いた血清メタボローム解析により、新たな大腸がんスクリーニングシステムについて検討しました。バイオマーカー候補となる代謝物を選抜した結果、4種類の代謝物に基づいた、高い感度、特異度を持つ大腸がん診断予測式を構築できました。さらに、この構築できた予測式は、早期大腸がん患者においても、高い感度を保つことも明らかにできました。以上より、メタボローム解析に基づく診断予測式の、がんスクリーニング検査法における可能性を見出すことができました。
(各種、新聞、テレビで取り上げていただきました。新聞記事(平成24年7月13日)は、こちら

15. Hashimoto F, Nishiumi S, Miyake O, Takeichi H, Chitose M, Ohtsubo H, Ishimori S, Ninchoji T, Hashimura Y, Kaito H, Morisada N, Morioka I, Fukuoka H, Yoshida M, Iijima K. Metabolomics analysis of umbilical cord blood clarifies changes in saccharides associated with delivery method. Early Human Development. 2012 Nov 21. doi:pii: S0378-3782(12)00268-X. 10.1016/j.earlhumdev.2012.10.010.
本論文では、出生時の胎児ストレスを検討するために、GC/MSを用いて、臍帯血中のメタボローム解析を行いました。自然分娩と帝王切開で、臍帯血中の代謝物の変動を見出すことができました。

16. Lee JW, Nishiumi S, Yoshida M, Fukusaki E, Bamba T. Simultaneous profiling of polar 1 lipids by supercritical fluid chromatography/tandem mass spectrometry with methylation. J Chromatogr A. 2013 Mar 1;1279:98-107.
phospholipids, lysophospholipids, and sphingolipids などの極性脂質は、これまで分析が困難でした。 本論文では、Trimethylsilyl-diazomethaneによるメチレーション法を用いたサンプルの前処理ならびに超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)MS/MSシステムを組み合わせることにより、ピーク形状の改善、感度の上昇を可能とし、ハイスループットな19種類の極性脂質の一斉分析計を構築することができました。

17. Kobayashi T, Nishiumi S, Ikeda A, Yoshie T, Sakai A, Matsubara A, Izumi T, Tsumura H, Tsuda M, Nishisaki H, Hayashi N, Kawano S, Fujiwara F, Minami H, Takenawa T, Azuma T, Yoshida M* A novel serum metabolomics-based diagnostic approach to pancreatic cancer. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. in press. (*correspondence)
予後のきわめて悪い膵臓がんにおいても、早期発見が望まれています。本論文では、GC/MSを用いた血清メタボローム解析により、新たな膵臓がんスクリーニングシステムを構築しました。具体的には、候補となる代謝物から統計学的に4種類の代謝物を選別し、膵臓がん予測式を作成しました。また、作成した予測式を検定したところ、早期から高い診断感度を維持すること、慢性膵炎とも区別できることを明らかにしました。これらは、メタボローム解析による膵臓がん診断システムが、将来のスクリーニング検査に有用である可能性を示唆するものです。
本論文が、AACR (American Association for Cancer Research) のホームページで紹介されました。こちらです。
本論文が、Cancer Epideiology, Biomarkers & Prevention の Hightligts of This Issue に選ばれました。

18. Ohira H, Fujioka Y, Katagiri C, Mamoto R, Aoyama-Ishikawa M, Amako K, Izumi Y, Nishiumi S, Yoshida M, Usami M, Ikeda M. Butyrate attenuates inflammation and lipolysis generated by the interaction of adipocytes and macrophages. J Atheroscler Thromb. in press
肥満者の脂肪組織内にはマクロファージの誘導が認められ、脂肪組織内へ浸潤した活性化マクロファージは、さらに脂肪分解を誘導します。この脂肪細胞とマクロファージの液性因子を介した悪循環は、全身の低レベル慢性炎症を招き、心血管疾患ならびに代謝性疾患の起因の一つとされています。本論文では、短鎖脂肪酸に属する酪酸が、脂肪細胞とマクロファージの共培養下において両細胞間の炎症反応ならびに脂肪分解に及ぼす影響について検討を行いました。本論文では、誘導体化不要な、35種類の遊離脂肪酸の高感度一斉プロファイリングシステム(LC-MS/MS)を確立し、その機序の一端を明らかにすることに貢献しました。

19. Nakamizo S, Sasayama T, Shinohara M, Irino Y, Nishiumi S, Nishihara M, Tanaka H, Tanaka K, Mizukawa K, Itoh T, Taniguchi M, Hosoda K, Yoshida M, Eiji Kohmura E. GC/MS-based metabolomic analysis of cerebrospinal fluid (CSF) from glioma patients. J Neurooncol. in press
本論文では、GC/MSを用いて、低悪性度のグリオーマ患者、高悪性度のグリオブラストーマ患者脳脊髄液中のメタボロミクス解析を行いました。低悪性度のグリオーマと比較して、高悪性度のグリオブラストーマ脳脊髄液中に増加している代謝物を同定しました。また、いくつかの代謝物の変動は、isocitrate dehydrogenase (IDH)遺伝子変異に相関していました。さらに、脳脊髄液中の乳酸の高値は、予後不良と相関することを明らかにしました。

20. Okada T, Fukuda S, Hase K, Nishiumi S, Izumi Y, Yoshida M, Hagiwara T, Kawashima R, Yamazaki M, Oshio T, Otsubo T, Inagaki-Ohara K, Kakimoto K, Higuchi K, Kawamura YI, Ohno H, Dohi T. Microbiota-derived lactate accelerates colon epithelial cell turnover in starvation-refed mice. Nat Commun. in press
食事摂取が腸管上皮細胞の形態や機能に影響を与えること、また、腸上皮のターンオーバーに関与していることが知られています。本論文では、絶食後再摂食モデルマウスにおいて、腸内細菌由来の乳酸が腸上皮細胞の増殖や大腸発癌に関与することを明らかにしました。糞便中の代謝物解析を担当し、その機序の一端を明らかにすることに貢献しました。

21. Kimoto A, Nishiumi S, Kobayashi T, Terashima Y, Suzuki H, Takeuchi J, Azuma T, Komori T, Yoshida M. A novel gas chromatography mass spectrometry-based serum screening method for oral squamous cell carcinoma. Head Neck Oncol. 2013 Apr 01;5(4):40.
口腔がん(扁平上皮癌)は、世界で11番目に多い癌です。早期に発見された場合の予後は比較的良好ですが、進行がんで発見された場合は、治療に難渋します。本論文では、GC/MSを用いた血清メタボローム解析により、新たな口腔がんスクリーニングシステムを構築しました。口腔癌(術前・術後の比較含む)患者、健常者、他の口腔疾患患者の血清中の代謝物を比較することにより、早期診断に有用な代謝物を同定しました。これらは、血清メタボローム解析が、早期口腔がん診断に有用な可能性を示唆する結果です。今後、さらに大規模な研究を計画しています。

22. Kakuta S, Bando Y, Nishiumi S, Yoshida M, Fukusaki E, Bamba T. Metabolic Pro¬ling of Oxidized Lipid-Derived Volatiles in Blood by Gas Chromatography/Mass Spectrometry with In-Tube Extraction. Mass Spectrometry. in press
生体膜の主要構成成分である脂質は,酸化ストレス条件下で側鎖の脂肪酸に含まれる二重結合部分が酸化され脂質過酸化物が生成されます.この過程で炭素二重結合部分が開裂し,短鎖アルデヒド類を含む揮発性酸化脂質が生成されることが知られています。そこで、ガスクロマトグラフィー/質量分析を用いて脂質過酸化により生じる短鎖アルデヒド類を含む網羅的な揮発成分の分析を行いました。

23. Yamada T, Uchikata T, Sakamoto S, Yokoi Y, Nishiumi S, Yoshida M, Fukusaki E, Bamba T. Supercritical fluid chromatography/Orbitrap mass spectrometry based lipidomics platform coupled with automated lipid identification software for accurate lipid profiling. J Chromatogr A. 2013 Aug 2;1301:237-42.
超臨界クロマトグラフ質量分析計(Orbitrap FT-MS)を用いて、ハイスループットで網羅的な脂質プロファイリングシステムを構築しました。 超臨界クロマトグラフ質量分析計は、広範な脂質種の分析に非常に重要な武器となりそうです。

その他の研究内容は、Staffのページの発表論文を参照いただけましたら幸いです。
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