本研究では、生体内の血管環境を模倣した「灌流型三次元細胞培養システム」の開発を進めた。生活習慣病や慢性炎症性疾患では、血管内皮細胞の機能異常が病態形成に深く関与していることが知られているが、従来の平面培養系では生体内環境を十分に再現できないという課題がある。そこで本事業では、これまでに試作してきた灌流型培養装置をさらに改良し、微細メッシュ培養法を組み合わせた三次元培養環境の構築を行った。加えて、装置構造や培養条件の最適化を通じて、将来的な製品化や応用研究につながる基盤データの取得を目指した。
近年、三次元細胞培養技術は、再生医療や創薬研究における重要な基盤技術として注目されている。しかしながら、既存の三次元培養法には高額な設備や特殊材料を必要とするものも多く、研究現場で広く活用する上でコスト面が大きな課題となっている。本研究で採用した「微細メッシュ培養法」は、従来の細胞培養設備や手技を活用しながら三次元培養を実現できる点に特徴があり、簡便かつ低コストでの運用が期待される。本事業では、この技術に灌流機能を付加することで、生体血管に近い環境を再現可能な新規培養システムの構築を目的とした。
灌流型装置の試作機を用い、細胞培養条件の確立を行った。試作機による培養試験を通じて得られた失敗及び成果および課題を整理し、装置構造および運用条件における改善点を抽出した。これらの検討により、メッシュ培養を導入することでin vivo環境の再現性に優位性を有することを見出した。これらの知見を基に装置の追加改良等を進めるとともに、追加実験を複数回実施しながら製品化に向け必要な情報を得ることができた。
さらに、実験での様々な不具合、課題等を修正した改良型灌流型三次元培養装置(以下、改良型装置)の試作を進め、改良型装置を用いた細胞培養条件の至適化を進めていった。培養条件を抽出するための追加実験および検証を実施し、データ収集を培養状態の確認を行った。培養条件の抽出には使用した血管内皮細胞(HUVEC)の培養結果のばらつき、歩留まりに苦労したが、最終的には灌流(流速など)と培養の各々に関する条件を整理し、今後の量産機開発に向けた追加改良を含む装置開発の方向性をまとめることができた。
本研究により、生体内の血管環境を模倣した灌流型三次元細胞培養システムの基盤構築を進めることができた。今後は、さらなる装置改良および培養条件の高度化を進めることで、生活習慣病や慢性炎症に伴う血管内皮障害の病態解析への応用が期待される。また、本技術は創薬スクリーニングや再生医療分野への展開も視野に入れており、生体模倣性の高い新規評価プラットフォームとしての発展を目指している。
申請者はこれまで、循環器疾患や血管障害に関連する分子機構の解明に取り組んできた。その中で、血管内皮細胞機能を適切に評価できる培養モデルの不足が、病態解析を進める上で大きな障壁であることを認識した。本研究は、その課題解決を目的として、生体環境を模倣した新規三次元培養モデルの構築を目指したものであり、今後の病態解明や新規治療法開発に繋げていきたい。
| 所属機関名 | ダイガクインイガクケイケンキュウカ 国立大学法人神戸大学 大学院医学系研究科 |
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| 住所 | 〒650-0017 兵庫県神戸市中央区楠町7-5-1 |
| 担当者 | ナガサカ アキオミ 講師 長坂 明臣 |
| URL | https://www.med.kobe-u.ac.jp/hsccafe/ |