CMX

R6年度CMX国際共同研究短期派遣・招へい事業報告


派遣1 University Hospital of Zurich

井上 純子 放射線医学分野 医員

2024年6月、国際共同研究短期派遣・招へい事業の助成を受け、スイスのチューリッヒ大学を訪問しました。私は核医学という医療画像診断の分野を専門としており、特にPET/MRという最先端の装置で撮影された画像の研究に取り組んでいます。チューリッヒ大学は、2011年に世界で初めてPET/MR装置を導入した先進的な施設で、同じ装置を有する神戸大学と共同研究を進める上で、非常に適した環境と言えます。

今回の訪問では、共同研究の実施に向けて、両大学の設備や研究体制・制度を確認する目的で視察しました。チューリッヒ大学のPET/MR装置はより新しいバージョンであり、 当院でのアップデートの必要性を再認識しました。また、スイスでは個人情報保護が非常に厳しく、データ共有には高いハードルがあることも明らかになりました。こうした課題を把握できたことは大きな収穫であり、 現地の研究者と率直な意見交換ができたことで、共同研究への意欲が一層高まりました。

その結果、2025年3月にチューリッヒ大学への短期留学が実現し、複数の研究に取り組むこととなりました。

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チューリッヒの街並み
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チューリッヒ大学のPET/MR装置
招へい1 University of Pittsburgh、Colleen A McClung先生

内匠 透 生理学分野 教授

メディカルトランスフォーメーション研究センター「国際共同研究短期派遣・招へい事業」により、米国ピッツバーグ大学医学部よりColleen A. McClung教授を招へいした(招へい期間:2024年11月7日〜1日)。 McClung教授は、生物時計と精神疾患との関連に関する研究で国際的に高く評価されている、精神医学分野の世界的権威である。

滞在期間中は、生理学分野のみならず、精神医学、薬理学、神経分化・再生等、複数の研究室を訪問し、研究者および大学院生との間で活発な学術交流が行われた。11月12日には神緑会館記念ホールにおいて、 「Circadian Genes, Rhythms and the Biology of Psychiatric Disorders」と題する講演会を実施し、多くの学内関係者が参加した。

講演後の質疑応答・意見交換も活発に行われ、教育・研究の双方において有意義な機会となった。

また、姫路へのエクスカーションや学内の懇談会を通じて、分野横断的な人的ネットワークが形成され、国際共同研究体制の拡充につながる成果が得られた。

本招へいは、国際的な学術交流の推進に大きく貢献したものであり、今後の継続的な協力関係の礎となるものと評価される。

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McClung教授と内匠教授
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エクスカーションの様子
招へい2 University of Washington、Behzad Najafian先生

藤井 秀樹 腎臓内科学分野 准教授

Ⅹ染色体連鎖性の遺伝性疾患であるファブリー病では、αガラクトシダーゼ酵素の活性低下によりglobotriaosylceramide(Gb3)が生体内臓器に蓄積し、進行してくると臓器不全に陥る。我々は、 解析ソフトを用いた病理組織学的な詳細な解析を行い、それらと血液、尿のバイオマーカー、生理検査のデータとの関連を調べ、ファブリー病における臓器障害を反映する適切な手法は何かを見出すこと、 および臓器障害進展のメカニズムを考えることを考えている。研究を円滑に進めるために、この度、ワシントン大学よりこの分野での世界的権威であるNajafian教授をお招きした。

Najafian先生らは、腎臓などの病理組織を用いて臓器障害をコンピューターソフトを用いて3次元的に定量的に評価している。今回の研究では、電子顕微鏡標本を用いて、ポドサイトの容積及びGb3 の蓄積量を画像イメージングより解析ソフトを用いて測定し、Gb3 の糸球体のポドサイトの容積密度を計算する。

また、各臓器の血管内皮細胞、血管平滑筋細胞においてもこの評価を行い、光顕標本を用いた障害の定量および半定量評価を画像イメージングによる解析、尿中ポドサイト数のフォローサイトメトリーによる測定、尿中lyso-Gb3 の測定も行うことを計画している。

我々はファブリー病および腎疾患患者に関しての病理学的な専門的意見をもらうために、症例カンファレンスを開催した。若手~中堅の医師による英語でのプレゼンテーションおよびディスカッションは貴重な経験となり、Najafian先生からは意義のあるコメントを頂いた。

また、ファブリー病に関する研究についての詳細な知見を得るため、特別講演を行って頂いた。院外からも多数の医師が参加し、ファブリー病に関する最先端の研究内容を聞かせて頂き、非常に参考になった。

また、共同研究の遂行に関して、リサーチミーティングを開催し、今後、どのように研究を進めていくかをディスカッションした。

医局のメンバーに対して、国際交流の重要性、英語を用いてのカンファレンスなどの経験、国際共同研究の遂行など刺激になることが多い、実りのある数日であったと考える。可能であれば、このような機会を定期的にサポートして頂ければ、姉妹校であるワシントン大学とのつながりがなお一層強まり、定期的な留学、共同研究の継続につながるのではないかと考える。

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Najafian先生と腎臓内科の皆さん
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Sanofi meetingの様子
招へい3 Boston Children's Hospital、Michell McNulty先生

長野 智那 小児科学分野 特定助教

この度、CMX 国際共同研究短期派遣・招へい事業のご支援により、2024年11月14日から28日にかけて、米国ボストン小児病院Sampson LabよりMichelle McNulty博士を神戸大学にお迎えすることができました。

McNulty博士は生物統計学の専門家であり、ネフローゼ症候群に関する国際的なゲノム解析研究において中心的な役割を果たしておられます。

招へい期間中は、ゲノムデータの解析手法の共有や、ネフローゼ症候群の原因解明に向けた新たな研究計画の策定、日本人患者データとの比較解析体制の構築など、今後の共同研究に向けた重要な議論を重ねることができました。

また、若手研究者や大学院生との意見交換の場も設けていただき、統計解析の観点や国際研究の進め方について多くの学びを得る貴重な機会となりました。

今後は、日米両国のコホートを統合したゲノム解析をさらに推進し、抗ネフリン抗体陽性例に特徴的な遺伝的マーカーの同定を目指すことで、診断精度の向上や個別化医療の実現に貢献していきたいと考えております。

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McNulty先生と長野先生、小児科学分野の皆さん
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招へい4 YongSan District Public Healthcare Center Seoul、Jiwon M. Lee先生

堀之内 智子 小児科学分野 講師

小児ネフローゼ症候群に関する国際共同研究の進展

小児ネフローゼ症候群は、腎臓の機能が低下し、尿中に大量のたんぱくが漏れ出す難病です。小児ネフローゼ症候群患者ではその多くがステロイド治療に反応しますが、再発を繰り返す患者も多く、根本的な治療法の開発が求められています。

私たちはこれまでに、日本人小児患者を対象とした大規模な遺伝子解析(GWAS)により、病気の発症に関わる遺伝子「NPHS1」を同定し、この遺伝子に異常があるとネフローゼ症候群のリスクが高まることを発見しました。 近年、このNPHS1が作る「ネフリン」というたんぱくに対する自己抗体(抗ネフリン抗体)が、病気の発症や再発に関与している可能性が示され、世界的に注目されています。私たちはすでに、日本国内の患者さんでの抗体陽性率の検索を行い、また抗体を迅速に検出する新しい染色法の開発にも成功しています。

今回、韓国の研究者と連携し、同様の検査や遺伝子解析、腎組織の解析を行う国際共同研究を開始しました。これにより、日韓のデータを比較することで、病気の原因や治療への応用がさらに進むことが期待されます。

招へい5 UT Southwestern Medical Center、尾畑 祐樹 先生

榎本 秀樹 神経分化・再生分野 教授

この度、CMX国際共同研究短期派遣・招へい事業により、UT Southwestern Medical Centerの尾畑祐樹博士をお招きする機会をいただきました(2025年2月17日〜26日)。 尾畑氏はDepartments of Immunology and Neuroscienceで研究室を主催するAssistant Professorであり、腸を起点とした生体恒常性維持機構の分野で注目されている若き研究リーダーです。

神戸大学滞在時は、医学研究科の関連研究分野の研究室を訪問し、情報交換とともに共同研究の可能性について議論を行いました。

また、2月21日に行われた第11回Neuroscience Network in Kobe Symposiumで招待講演者として最新の成果についてご講演いただきました。シンポジウムでは神経を介した生体恒常性の維持機構の分野で活躍する内外の研究者が先進的な成果を供覧し、活発な議論はシンポジウムおよびその後の懇親会まで続きました。

今回の招へいがこの研究領域での国際交流に大きく寄与したことを実感しました